« 日本 対 ウェールズ 18-72(11-29) プール B | トップページ | 訳者あとがき(没)第二案 »

2007年9月22日 (土)

フランス 対 アイルランド 25-3(12-3) プール D

 「北半球で最も強い」二チームの対戦は、さしたる波乱もなくフランスの順当勝ちで終わった。スクラムを支配し、ブレークダウンもほぼすべて制圧と、フランスは FW の強さでゲームの主導権を握る。主将ラファエル・イバニェズがいつものようにスクラムでもフィールドプレーでも文字通り先頭に立ち、他のメンバーも惜しみなく堅実なタックルを繰り返す。まるでアイルランド FW のようだった――というか、アイルランドは FW の頑張り(力比べはともかくとして)という自分たちの本領で上回ることができなかった。
 レ・ブルーにとっては全く危なげのないマッチだったが、それはある意味では退屈ということでもある。つまり確実に勝つための戦略として、折に触れて採用されるキック主体のゲーム運びだった。見所は、モールから取り残されたシャバルがアイルランドの 7 番と 8 番に相次いで踏みつけられるという「珍プレー」を除けば、サインプレーが綺麗に決まったひとつの目のトライか。
 アイルランド陣 22 メートル・ライン付近の右タッチ際のフランス・ボールのスクラムの場面で、右 WTB クレールがオープンサイドのチャンネル 1 に移動し、それに合わせて対面のアイルランド左 WTB トリンブルがショートサイドを空けてオープン側のラインディフェンスに参加する。トリンブルは 6 番に大外をケアするよう合図を送っていたのだが、がら空きになった右隅にミシャラクが蹴り込んだショートパントを、クレールはスクラムの外側を回ってキャッチ、タッチダウン。最初からこれを狙っていたのか、それとも途中でトリンブルの移動を見て変更されたのかわからないが、とにかくミシャラクのキックの前にクレールは動き出していた。アウトサイドにかけたミシャラクのキックは、カーロス・スペンサーのようだった。
 ミシャラクはまだ 24 歳だが、長く代表を務めているためベテランのようにも感じられる。10 代での、しかもこのレベルでは珍しい SH からの抜擢(2001 年)は、2003 年までの「第一期」ラポルト体制における、いわば「ディシプリンとフレアの融合」戦略の象徴だった。一般レベルでの知名度・人気は随一である。基本的にはファースト・チョイスの SO として起用され続けてきたけれども、好不調の波が激しいこともあり、折に触れて先発をジュレーズ、スクレラ、ドゥレーグらに譲ってきたという過去がある。今大会開幕戦の先発はスクレラだった。体格で勝るという面も多少はあったろうが、スクレラの安定感が買われたのだろう。そのスクレラが負傷離脱を余儀なくされている現在は、一本目として今のところ好調を維持しているようである。もっとも、プレースキックの不安定さは変わらず、また過去には失トライに即つながる決定的なタックルミスが少なくなかったが、それが修正されているかどうかわからない。ともかく、オリヴィエ・マーニュもトマ・カステニェードも不在のレ・ブルーにあって、ほとんど唯一「フレア」が期待しうる選手なのだから、注目せざるをえないのは確かである。

 アイルランドは突然かつての退屈なチームに戻ってしまった感がある。「かつての」というのは、例えば、勝敗は度外視すれば、91 年大会・ 95 年大会でジャパン――林、梶原、ラトゥ、堀越、吉田、朽木など――の引き立て役になってしまうほどの、フォワードのごり押ししか取り得がないような(あるいはそのように見える)チームのことだ。
 その後、オドリスコルを得たアイルランドが素晴らしいバックスを擁するようになったのは誰もが知るところだが、現在のチームはその面影をまったく失ってしまっている(メンバーをよく見ると、マーフィーやヒッキーは控えになっているんですね)。今日のゲームでも、勝敗がほぼ決してから展開プレーに切り替えたのだが、浅いラインで動きがなく、ブレークできる感じはほとんどしなかった。フランスのディフェンス・ラインが綺麗に揃って非常に早く上がってスペースを消していたことも一因だろうが、こういう場合に唯一加速力で突破できる肝心のオドリスコルがボール獲得のファイトに巻き込まれざるをえないというのは、戦略としておかしいのではないか。いやもちろん BOD は主将だし、元々何処にでも現れる人だから、ある意味それは当然ともいえるのだが、それではフィニッシャー(やペネトレーター)がいなくなってしまう。今日のような出来だと、アルゼンチンに FW 戦を挑まれればアイルランドは相当苦しくなるのではないだろうか。

|

« 日本 対 ウェールズ 18-72(11-29) プール B | トップページ | 訳者あとがき(没)第二案 »

ラグビー」カテゴリの記事

ラグビー ワールドカップ 2007」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: フランス 対 アイルランド 25-3(12-3) プール D:

« 日本 対 ウェールズ 18-72(11-29) プール B | トップページ | 訳者あとがき(没)第二案 »