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2007年10月19日 (金)

イーストウッド、1995 年のスプリングボクスを映画に?

 オーストラリア『デイリー・テレグラフ』紙サイトの「ラグビー・ユニオン」コーナーのウリのひとつはデイヴィッド・キャンピージーのコラムである――というよりむしろ、そのコラムに対する読者コメントを彩る罵倒の数々が面白い。ああ、キャンポはやっぱり愛されているんだなと得心させられることも度々だが、18 日のコラムでは「イングランド・スタイルは退屈きわまりないがプレーヤーたちのガッツは見事だ」という趣旨の投稿が読者の賛同を勝ち得ていた。個人的には 2003 年ほどに退屈を感じないのだが――つまり四年前とは似ているが違うのだとわたくしは考えているのだが――それはいい。「ギタウを SH に!」などと主張して容赦ない痛罵にさらされるラグビー・レジェンドを見るのはつらいことだから、たまには暖かく迎えられればよいと思う。

 ついでにいうと、同じ『テレグラフ』の別の記事では、エディ・ジョーンズの「ラグビーのためにはスプリングボクスが勝った方が良い」という趣旨の発言が紹介されている。「この大会でわれわれはおそらく最高の攻撃力をもっているのだが、まだ十分にそれを発揮するまでには至っていない。〔…〕だからこの週末にわれわれが良いディフェンスをし、良いアタックをして勝利を収めれば、ラグビーにとってはよい幕切れとなるだろう」。ボクスが負ければラグビーの将来は暗黒だとまで言っているわけではないが(彼はただ a good result「よい結末のひとつ」と言っているだけだから)、ジョーンズは、イングランドが優勝すればそのスタイルこそが「ラグビーの正しいあり方」になってしまわないかと危惧しているわけだ。

 これはかつてワラビーズ=ブランビーズ・スタイルがラグビー界を席捲したことに対する反省も込めた発言なのだろうか。それなら傾聴に値するが、というか、そうでなければまともに取り合う必要のない単なる杞憂だが、いずれのチームが勝つにせよ、そのような事態にはならないだろう。どのチームも結局は自分たちにできることしかできないのだから。もちろん「勝った者が正しい」とかいう考えはラグビーのためにならない。ラグビーにとって大切なのは――そしてE・ジョーンズも深いところではこう言いたいのかもしれないが――多様なスタイルの共存(並存)である。

 ところで、「ユニオン」コーナーの記事のひとつが、ネルソン・マンデラ元南アフリカ大統領の伝記映画プロジェクトを紹介している。95 年大会のスプリングボクスを中心に据えた映画で、クリント・イーストウッドが監督を務める可能性もあるとのことだ(Jon Geddes, "Eastwood will make Boks' day")。

 マンデラ氏の大統領就任とスプリングボクスの表舞台への復帰とに合わせて主催したワールドカップで優勝し、これ以上ないほど象徴的に「ワールド・イン・ユニオン」を印象付けるという、いささか出来過ぎの感さえある物語をイーストウッドがどのような映画に仕立てるのかという点、また国を挙げての歓喜や昂揚とその後に来る現実とのかかわりがどのように理解されるのかという点で興味深い(「ユニオン」の多義性を恃んだ言葉遊びはここでは無視しよう)。

 さらに、プレーの場面があるかどうかわからないけれど、アメフトとは異なるフットボールをイーストウッドがどう捉えるかという点にも興味が引かれるし、彼はアクション映画をきちんと撮れる人なので(戦争物、西部劇、『ファイヤーフォックス』、『ミリオンダラー・ベイビー』)、実現するなら大いに楽しみである。しかし 77 歳の高齢で南アフリカに出かけたりするのだろうか。

 配役では、マンデラ氏役のモーガン・フリーマンがすでに決定しており、優勝チームの 6 番・主将フランソワ・ピナール役としてマット・デイモンが予定されているというが、イーストウッドがキャスティングすればおそらく別の人選になったろう。個人的にマンデラと交流があるというフリーマンは仕方なかろうが、二人とも、顔を見ただけでは何を考えているかわからない(もちろんそれにはさまざまな理由がある)ピナールやマンデラとはだいぶ違うような気がする。顔立ちが、ではない。 たとえばピナールの一種異様な眼の輝き、あるいは端的にチェスター・ウィリアムズのような人を擁すチームの主将の顔は、デイモンのそれとは別種のように思われる。体格その他はまるで違うが、目の輝きだけでいうなら、むしろ若い頃のハリソン・フォードやトム・クルーズの方が近いように思う。あるいは、それだけにイーストウッドの演出に対する期待がますます高まるというべきか。

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