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2007年12月17日 (月)

ハイネケン・カップ プール第四節

 週末にフランス 2 でハイネケンカップの二試合を観戦する。昨日は「ペルピニャン対ロンドン・アイリッシュ」、今日は「トゥールーズ対ライスター」。ワスプス対クレルモン・オヴェルニュもカーディフ・ブルーズ対スタッド・フランセ・パリも面白そうだったが(そしてスコアを見るかぎり実際にそうだったようだが)仕方ない。プール・ステージの後半に入り、順位争いのための戦略も必要となってくるが、いつも合理的なゲーム運びが出来るわけではなく、僅差敗北ボーナスの 1点を獲得すべくラストワンプレーでトライを必死で取りに行くといった展開が見られるようになるだろう。
 1 組首位のロンドン・アイリッシュは、負けても(双方ともボーナス点なしとすれば) 1 点差で首位をキープできる。6 組のトゥールーズは連敗すると首位陥落、かつ逆転が難しくなる状況だ。日本で放送するかどうかわからないが、こちらのマッチはとても面白かった。Un match à ne pas manquer である。これがワールドカップ準決勝ならなお良かったし、こういうゲームをやればラポルトも、たとえ負けたにしても敬意を受けることができたろう――いや、ワールドカップに多大な期待を寄せるのはやめた方がよいかもしれない、クラブチームだからこそのパフォーマンスというものもある。

 ここまでチーム戦績の数字上は攻撃力(そして失トライの少なさ)が際立っていたロンドン・アイリッシュだが、いったいどのようにトライを取るのだろうと興味をもっていた。マイク・キャットのキックで敵陣深くに入ってから仕掛けるのだろうくらいは想像がつくけれども、問題はその後どうするかである。
 とはいえ、グラウンド・コンディションが今日も悪く、みぞれ混じりの雨が雪、次いで雨に変わり最後まで止むことがなかった。そのせいもあり双方にハンドリング・エラーが多発したが、とりわけロンドンの方はラインアウトも含めチャンスの多くをノックオンで潰えさせてしまった。ラインが揃った状態でボールが SO に渡ると、ふつう回してもよさそうなところでも必ずショートパントやチップキックが蹴られる。これまでもこうやって攻めていたのか。両 WTB がアイランダーということもあり、上手く転がれば(ないし弾めば)前進できるということだったのかもしれない。だが今日はそのキックがことごとく相手ディフェンスに当たり失敗に終わった。リズムが出ないまま組織的プレーも出来ず、ノートライの完敗である。

 ペルピニャンの方は前半20分まで連続して相手陣で攻撃し続けるという、うまいゲームへの入り方をしてリズムをつかんだ。マルティやツイランギの負傷欠場はあったものの、FW 戦で負けることなく、ロンドン側のミス(反則による一時退出も含む)を上手く利用して結局最後まで優位に進めることとなった。ボーナス・ポイントを獲得できなかったのは惜しまれるが、残り二試合での逆転を狙うことになる。ロンドン、ペルピニャンとも連勝はほぼ確実なのでボーナス点の勝負になるだろう。注目の「新人」パーシー・モンゴメリーは、チームがほとんどの時間攻勢だったこと、またライン参加の機会がなかったこともあり、今日は散発的にキックを蹴り返すだけにとどまった。後半途中で退いたが、怪我の具合が心配である。またスコットランド代表 SH のキュイスターは(いつからいるのか知らないけれど)サイド攻撃を継続するのかラインに回すのかの判断が他の選手と噛み合っていなかった。これはまあ修正可能だろう。

 日曜のトゥールーズはパリ同様に快晴(ただし後半からは霧でフィールドが薄く覆われるという、ちょっと見られないコンディションとなった)。芝が綺麗で、キックオフ前の期待がいっそう高まる。スタンドには代表チームを率いるマルク・リエーヴルモンとエミール・ンタマックが並んで陣取り、ゲームを見つめる。先発メンバーのうちライスター側は 2 ・5・6・7・10・12 番、スタッド・トゥールーザン側は 2・4・6・7・9・11~15 番が現代表または経験者なので、顔ぶれだけでいえばほとんどフランス対イングランドである。
 そのフランス代表、いやトゥールーズの戦い方は概していうと、FW は FW の仕事を、BK は BK の仕事をというものだった。FW はラック・サイドのピック&ゴーとラインアウト以外では互角。前者はライスターに一日の長があり、フランス側はどの局面でもあまりドライブできなかった。反対にラインアウトではライスター側が自滅に近く、チャンスを活かせずに終わった(ただし今日はラインアウト自体が少なかったため決定的な要因とは思われない)。SO のプレー選択では、タッチキックと相手に取らせるキックがきわめて少なかった点、そしてトゥールーズ側がハイパントを多用したのに対し、ライスターはほとんどがパスだった点が注目に値する。トゥールーズはバックスが全員トップ・フォームだったこともあり、結果として(あるいは意図的に)何をやってくるか相手が予想できない攻撃態勢をつくることができた。ディフェンスの的が絞れないとき、フィールドは実際以上に広く感じられるものだ。この戦略は奏功したようで、ライスター・ディフェンスが前に出てくればハイパント、待っていればバックス展開というふうにして、攻守にわたって相手の出足を少しずつ遅らせることができたと思う。
 ライスター・タイガーズの方はハイパンをほとんど用いずパスによる展開とラック・サイドの突破でゲームを組み立てた。FW のピック&ゴーは確実にゲインしていたし、アンディ・グッドのパスはスピード、コントロールとも申し分なく、走り込む受け手にドンピシャのタイミングでボールが渡っていたのだが、一時防御を突破したあとのサポートがなかった、あるいは遅かった。もちろんトゥールーズのディフェンスもよかった。

 前半にひとつずつ取り合ったトライはどちらも非常に美しかったが、いずれも FW のラインブレークからラックが形成される前にバックスに展開して奪ったもの。トゥールーズのトライは、相手陣右側でのラインアウトがすぐスロワーに戻され、2 番のセルヴァ(ット)がライン際を疾走(これもまあラインブレークである)したところから始まった。あらかじめ決まっていたのだと思うが、ボールはすぐエリッサルド、クーラン、ジョジオン(背番号は 13 だがやはり「第一センター」)とパスされる。タイガーズのディフェンスはまったく対応できておらず、このまま回すだけでもトライを取れただろうが、11番エマンスが巧みな動きでラインブレークし、ディフェンスを引き付けてからフリッツ→ポワトルノーでトライ(大外にはさらにクレールがいた)。
 そういうわけで、相手に的を絞らせない攻撃の組合せを創出するという点でクーランのゲーム・コントロールはかなりよかった(彼が全部組み立てているとしての話だが)。また、この人は外見がウェールズのガレス・クーパーによく似ているのだが、試合中何度も、ごく自然に SH をこなしており(その場合エリッサルドが SO となる、いわゆる「ダブル・ハーフ」戦法で、実際に二人とも SO として一本ずつ DG を決めている)、基本的に別々の事をしている FW と BK の連携をいっそう円滑にする点で効果的だったと思われる。SO はまだ選考の余地はあるだろうが、フランス代表の BK は今日のメンバーでよいのではないか。敢えていうなら問題はむしろ FB で、クレマン・ポワトルノーの糸の切れた凧みたいなフリーランニングは確かに魅力的なのだが、キック(処理)でのポカが多すぎる。デビュー時からあまり成長の跡が見られないのはどうしたことか。

 だからアンディ・グッドはもっとハイパンを蹴るべきだった。FB が下手糞ならハイパンが常道だろうに。今日は SH・SO のハイパントが非常に少なく、タッチキックや陣地をとりあえず稼ぐキックはもちろんあったものの、基本的にはほとんどパスだった。先週とは違い、ゲインしたあとのサポートがあまりなく、結果的にはさして有効ではなかった。これはディフェンスの的を絞らせないというトゥールーズ側の戦略が奏功したということだろう。まあでもプール二位チームの中で勝ち抜ける可能性は残っている。

 トゥールーズ・バックスのプレーは見ていて単純に面白く、スペクタクルに対する欲望はいちおう満足させられたはしたのだが、ひとつ思ったのは、これは悪くするとサッカーでいうところの「中盤での華麗な(だがその実さほど有効でない)パス回し」に堕してしまいかねないということだ。トライ一本目はサインが上手く決まったからこそのプレーだったわけだし、二本目はハイパントを相手 FB に取らせ、孤立させてボールを奪ったのが起点となっている(ただしマーフィはキャッチングそのものは今日は完璧だった)。素早くウィングに展開し、クレールがW 杯のアイルランド戦と同様、タックルを引きずりながら力業でタッチダウンしたのは素晴らしかった(タックルした三人がコリー、ランベニ、マーフィというのは凄い)けれども、要するにこれは高度なタスク・ラグビーなのであって、筋書き通りに事が運ばないときどうなるかはまだまだ不明である。またたとえばバックスの展開において、パスの速度・タイミングを利用して、またギャップを巧みに見つけて抜こうとするセンスではライスターの方により大きな可能性を感じた。一歩違えばガンガン突破する可能性である。
 むろん可能性は、実現することのない「将来の夢」や果たされぬ約束と同じように、ただの可能性にすぎない。だが、可能性を胚胎する者が眩しく輝き人を引き付けるということもまた真実なのである。W 杯でアルゼンチンを輝かせた M・ロフレダ監督が何を考えているか知らないけれども、できることならタイガーズにも何とか勝ち抜けてもらいたいと思う。

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