« 2007年12月 | トップページ | 2008年2月 »

2008年1月

2008年1月25日 (金)

パリのゲットー

 わたくしの住むアパルトマンはパリの中でも最も特殊な部類の形状をした建物だと思うけれど、隣人は DJ Mehdi という、その業界――ヒップホップというかフレンチ・エレクトロというかそういう界隈――ではかなり知られた人である。「である」などと断じてしまったが、彼の家族が引っ越してくるまで実は知らなかった。世界は広い。広いのだが、奥方であるグラフィティ・アーティスト Fafi とともに日本にも結構な回数仕事で出掛けているそうだから、その意味では世界は狭いともいえる。ともあれ、夫妻ともにすごくいい人であることは間違いない。

 Mehdi 氏の作品のなかでわたくしが最も好きなのは(なぜか U2 の「ディスコテック」などを思い出させぬでもない) Steed Lord の「ダーティ・マザー」(Dirty Mutha)のリミックス DJ Mehdi Remix だが、これは「好き」というより、壁越しに聞いた回数が最も多いために最も馴染んでしまったという方がむしろ適切かもしれない(試聴はこちら)。面白いのは、彼が越してきた当初、近隣のアパートの住人から「音楽がやかましい」と苦情がくるなど、ちょっとした事件になったことである。これは本当にちょっとした出来事にすぎず、わたくし自身はほとんど迷惑に感じなかったのだが(いやまあ本当いうとうるさく感じられる時もごくたまにないではない)、近辺が静かなためか、苦情が二件隣の建物から来た点が興味深かった。
「閑静な住宅街」といえば聞こえはよいけれど、われわれが暮らすのは、歴史的用法を加味しつつ日本語に訳せば「ゲットー」ということになる(原語のフランス語がもつ複数の意味のうちのひとつを「素直」に訳せばそうなる)。もちろん人はそうした歴史をまったく気にすることなく住まうこともできるわけだが、偶然も手伝ってかかわりをもつことになったその歴史性に何か意義を見出すのも悪くはあるまい。DJ Mehdi がここに(とりあえず)腰を落ち着けることになったのは素晴らしいことだと、勝手にわたくしは考えている。

 わたくし自身はいずれ永住するつもりがないので、自分の身の上に引きつけて何がしかの意味を見出そうと積極的には思わない。ただ、ここも含め「ゲットー」的なものには、その実態とは裏腹な名称が与えられるという一般法則を、同種の「ゲットー」を発見するたびに思い出すくらいのものである。デューク・エリントン、といえば話は通じるだろうか。エリントン公爵(この場合、誰が名づけたかは重要ではない)。
 建物と建物の空隙にたまたま見つけたある「ゲットー」は例えば未来と名づけられている。原語で記せば ... de l'Avenir である。「未来という名のゲットー」。写真を御覧になればわかるはずだが、これほどきつい皮肉もない。いや皮肉以上の悪意そのものというべきである(ザ・ジャムにそんな感じの曲がありましたね)。こんなところに「未来」は訪れるのか、「未ダ来ザルモノ」が?Lavenir_1 あるいは、それでもやはり希望はともかくここから始まるというべきだろうか。
 
この写真を撮ったあと、現在この「ゲットー」は工事が始められており――壁のグラフィティはそのままだが、出入りを禁じていた柵は撤去されている――おそらくアパルトマンが建つはずである。そこに住まう人たちに未来、つまり「コレカラ来ルモノ」の来たらんことを!

Lavenir_2_2

 感嘆符など付けるものだから、もともと何を書こうとしていたか危うく忘れてしまうところだった。一方のお隣は高名なフランス人音楽家、いま一方には日本人がお住まいなのだが、ある時わたくしのところを含めた「向こう三軒両隣」(誤用かもしれない)が少なくとも二枚、同じレコードを所有していることがわかったと、ただそれだけのことで、つまり壁越しに時折、聞き覚えのある音楽が聞こえてくるのである(Mehdi 氏自身の選曲かどうかは未詳)。チェット・ベイカー『シングズ』、マーカス・ミラー『テイルズ』。チェット・ベイカーはもちろんゲットーに響くことを許された、そう多くはないだろう白人音楽家のひとりである。
 一般的には十分ありうることなのかもしれないけれど、わたくし自身はこうした経験は初めてだった。三軒が同時に同じ CD をかけるような状況を期待するともなく期待しつつ、しかし昼食を作りながら踊るのに最近は、デート・コース・ペンタゴン・ロイアル・ガーデンの「ミラー・ボールズ」をかける毎日である。

Lavenir_4 〔追記 暖冬から春にそのまま移行し、桜も咲き始めている三月初旬現在の「未来という名のゲットー」。こうして見ると廃墟以外の何ものでもないけれど、グラフィティで埋まる入口の奥、右に入ったところで immeuble (建物・ビルの意)が出来あがりつつある。車椅子の男性も何か感じたのか、視線を向けている。「おじいさん、ここには未来があるそうですよ。」
 覗きに行って追い出されたあと、道を渡って少し離れたところから撮影。〕

| | トラックバック (0)

2008年1月23日 (水)

フランス代表 2008 年エディション

 シックスネーションズに向けたフランス代表が選ばれた。今回発表されたのは緒戦となるスコットランド戦に臨むメンバー 22 名であるが、W 杯直後であり、新監督 M・リエヴルモン最初のゲームでもあるなど、さまざまな点からして実験的意味合いが強く、会期中にスタメンどころか控えの人員も入れ替わる可能性はあると見られる。

 代表初選出の 6 名については何も知らないのでわたくしとしては楽しみに待つほかない。サプライズと受け止められているプレーヤーもいるようだが、ともかくそれが嬉しい驚きとなることを願っている。
 復帰メンバーの 5 名のうち、F・フリッツや W・セルヴァ(ット)の選出は当然だが、一方でウェブ版『レキップ』紙の見出し「新選出6名、シャバルはいない」が語るように、S・シャバルの落選はある程度の驚きをもって受け止められているようである。しかし昨年初めてシャバルを知ったような人はとりあえず措いて、B・ラポルトに嫌われる(?)など不遇な時代におそらくはピークを迎えてしまった人――控えで登場し強烈なタックルをぶちかましたシーンはよく覚えているけれども
――というのが客観的な評価としてあるのかもしれない。
 あるいは、シャバルのコンディションは不変だとしても、『レキップ』の相談役 L・ベネゼック(ベネゼッシュ)もいうように、まずは器用な(プレーの幅の広い)選手を優先させたチーム編成に合わなかっただけともいえる。
 いずれにせよ今シーズンの E・ヴェルムレン(クレルモン)の働きが、より強い印象を残したのは確実である。第三列では「現在のところ彼がベストのプレーヤー」とリエヴルモンは説明している。J・ボネールとの併用が上手く行っていることも大きいだろう。オリヴィエ・マーニュが去り、セルジュ・ベッツェンもとうとう去ってしまった。感慨深いけれども、新たな三列のトリオが最終的にどのようなプレーを見せてくれるか実に楽しみである。

 10 番は、F・ミシャラクがしばらく代表を休養してスーパー 14 に専念し、L・ボクシスも負傷ということなので、これはもう D・スクレラしかいないようだ(「控えで云々」と恥ずかしいことを書いてしまったが面倒なので訂正はしない)。なお Y・ジョジオンも負傷中である。

 W 杯時の「ラポルト批判」にもつながってくるが、「型にはまった」(stéréotypé)プレーではなく、もっと「自由な」(ouvert)プレーのための人選とベネゼックはいっている。「ボールを積極的に動かしてフィールドに混乱状況を造り出そうとする意志」がこのチーム編成には認められると。

そのことはいくつかの選出を見れば歴然としている。たとえばセドリック・エマンスのフルバック起用、あるいはフロリアン・フリッツの復帰、互いに〔タイプが異なるので足りない部分を〕補い合いながらプレーにダイナミズムを与えることのできる三列の選出などがそうだ。〔レミ・デュシュマンによるインタビュー〕

事実、プレーのあり方として何を優先するか問われたリエヴルモンは「われわれは不十分より過剰の方が好ましいとどこかで考えているところがある〔「及ばざる」より「過ぎたる」方が望ましい〕。だから選手たちには、自発的にその方向でプレーするよう奨励するつもりだ。各マッチごとの戦略的・戦術的側面はたぶんその次の段階の話になる」と答えている(エメリック・マルシャルによるインタビュー)。

Avants : Julien Brugnaut (Dax), Lionel Faure (Sale), Jean-Baptiste Poux (Stade toulousain), William Servat (Stade toulousain), Dimitri Szarzewski (Stade français), Loïc Jacquet (Clermont), Lionel Nallet (Castres, cap), Arnaud Mela (Albi), Julien Bonnaire (Clermont), Thierry Dusautoir (Stade toulousain), Fulgence Ouedraogo (Montpellier), Elvis Vermeulen (Clermont)

Arrières : Jean-Baptiste Élissalde (Toulouse), Morgan Parra (Bourgoin), David Skrela (Stade français), François Trinh-Duc (Montpellier), Florian Fritz (Stade toulousain), Damien Traille (Biarritz), Vincent Clerc (Stade toulousain), Cédric Heymans (Stade toulousain), Julien Malzieu (Clermont), Aurélien Rougerie (Clermont)

Soit:
6 nouveaux:  Brugnault, Faure, Parra, Mela, Trinh-Duc, Malzieu
11 rescapés du Mondial:  Poux, Szarzewski, Nallet, Bonnaire, Dusuatoir, Élissalde, Skrela, Traille, Clerc, Heymans, Rougerie
5 revenants:  Servat, Vermeulen, Jacquet, Oudraogo, Fritz

〔付記 『レキップ』紙の記事はいずれも 1 月 22 日付のもの。〕

〔追記 先発フィフティーンが発表された。最大の「実験」としてスタンドオフに新人フランソワ・トラン=デュックが選ばれている(つまりスクレラは結局控えスタートとなる)。非常に楽しみだが、初戦がスコットランドというのはレ・ブルーにとっては最も都合の好い日程といえるかもしれない。きわどい戦い方になる可能性は大きいけれどもいずれにせよ勝利を見込める相手という意味において。イタリアとはやはり差が大きいし、逆にイングランド相手ではそうした余裕はもちようがないだろうからだ。それは第一列の人選、HO セルヴァットを挟んでスクラムを支えることになる両PR がいずれも新人(J・ブリュニョーとL・フォール)になったことに関してもいえる。むろんプクスの負傷が直接の原因ではあるが、「どれだけやれるか」を見極めようという余裕をもちうるという点では結局同じことである。J・ボネールの代りに F・ウドラオゴ(?)の 6 番起用についてもやはり同じことがいえるだろう。
 
他方、バックスではF・フリッツが練習中の骨折により大会をリタイアせざるをえなくなった。代替プレーヤーは木曜に発表されるとのことで、スクレラを SO と CTB 両方の控えとしてベンチに温存するなら、CTB のプレーヤーが選出されることになるだろう。いずれにしても戦力的にはかなりの痛手となる。〕

〔追記 2 テレビ出演の際のプレゼンターの発音によれば、ローラン・「ベネゼッシュ」のようである。他方、ベネゼッシュ氏はFB のアントニー・「フロック」と発音しており、これは試合の生中継時の実況アナの発音「フロッシュ」と齟齬がある。LB 氏自身、南部の「訛り」をもつ人だが、要するにどちらでも構わないということだ。〕

| | トラックバック (0)

2008年1月21日 (月)

ハイネケン・カップ プール第六(最終)節

 週末にフランス 2 でハイネケンカップの二試合を観戦する。昨日は「スタッド・トゥールーザン対エジンバラ」、今日は「ハーレクインズ対スタッド・フランセ・パリジアン」。準々決勝進出チームが決まるプール最終節である。

 レンスター(アイルランド)とライスター(イングランド)が同組という、悪くするとプールステージ敗退も覚悟しなくてはいけなかった――とはやや大袈裟だが――トゥールーズは、大会期間を通じて徐々に調子を上げ、また他チームのもたつきもあって、プール首位での決勝ステージ進出をほぼ確実にした状態で最終戦に臨む。試合の感想は、凡庸だが、トゥールーズはやはり強い、そしてゲームは面白かったということになる。
 機転の利くプレーヤーを多数擁しているため、見ていてストレスがたまらずに済む。たとえば後半ひとつめのトライ。攻め込まれた際のこぼれ球をフリッツが拾い上げてラインブレーク(ポワトルノーがフォローにつく)、相手ゴールライン手前まで進んで、ラック形成。テレビでは手前側のタッチライン際のゾーンは映っていないのだが 14 番のクレールがすでに待ち受けており、SH エリッサルドは迷わず、弾道が低めのキックパスを直接送る。手でボールをパスして回してもトライは確実と見えたが、一番手っ取り早い方法でトライを奪った。判断、コンビネーション、キックの精度、どれも百点満点のプレーで、もちろんこれも決め事のひとつとして十分に習熟したプレーなのだろうけれど、いざというときにそれを実行できる点が素晴らしかった。

 エジンバラはパスプレー中心で、完全なラインブレークは望まず、要するにタックルさせつつ半身だけ裏に出て何とかつなぐという方針だったように見えた。ある程度はつなぐことが出来ていたのだが、ミスがあまりに多く、完全に対応できていたとはいいがたいトゥールーズのディフェンスを慌てさせるところまでは行かなかった。スコットランドのチームだから(とはもはやいえないかもしれぬが)FW は強かったけれども、こうもミスが頻発してはゲームにならない。

 ジョジオン欠場のためポワトルノーを 12 番(13 番はフリッツ)、エマンスを 15 番、ドンギーを 11 番に置いた布陣も上手く行った。W 杯初戦の頃から同じ意見なのだが、エマンスのフルバック起用は「あり」だと思う。キャッチングやキックはモンゴメリーやレイサムに比べ遜色はあるとしても、ポワトルノーよりずっと安定しているし、攻撃面でも、ライン参加のタイミングやボールを受けてからのプレー選択がより合理的に感じられる。調子のいい時のステップの切れでも上回っている。あと、これはどうでもよいことだが、俳優のマチュー・アマルリックに似てもいる。
 何だかクレマンにつらく当たっているようだが、べつだん嫌っているわけではない。ただ、数年前ラポルトに見捨てられている頃、この人がスーツを着てチーズのテレビ CM に出ていたことがあって、そのときの「ムフフ、俺っていい男だろ」といわんばかりの表情を目にして、積極的に応援する気が失せたという、ただそれだけのことである。まあスタアだからしようがないし、実際、男前ではあるのだが、そんなことはラグビーと無関係なので(コルレトのスパイクシューズの色選択の方がまだしも関与的ではないだろうか)。同じく干されていたヴァンサンが見事に復活したのだから、あなたもまあ頑張ってくださいと、型通りのエールを儀礼的に送っておきたいとは思う。
 もちろんポワトルノーが好いプレーヤーであること自体は疑いようもない。しかし、才能ある不安定な選手はむしろ、型にはまったプレーを要求されるポジションに配して、時々ビッグプレーを炸裂させるような使い方が妥当ではないだろうか。ミシャラクの SH 起用とか。だからポワトルノーもとりあえず、あるいはキック(処理)に本当に開眼しないかぎりは、12 番で――つまりジョジオンやトラーユのバックアップあるいは後継者として――起用するのがよいように思う。今日のマッチではパスを受けたあと横に流れて隣のウィングのスペースを消してしまうという、まるでジャパンの平のようなまずいランも見られたが、それはまだバックスリーとしての癖が残っているということにすぎないので、センターとしての意識を高くもてば、かなりのプレーヤーになる予感がする。

 プール首位のカーディフ・ブルーズに 3 ポイント差をつけられたスタッド・フランセは、いわゆる自力での勝ち抜け可能性がなく、最大の 5 ポイントを獲得しても、カーディフがともかくも勝ってしまえば敗退となる。ここまでずっとトライが取れず苦しんだのが最後に効いてきたというところである。
 とはいえラグビーはどんな時にも全力を尽くすスポーツなので(多分)、自分たちに出来る限りのことをやろうとする選手たちの頑張りは清々しかった。結果の 4 トライはいずれも見事なプレーの結実したものだが、今日は SO スクレラの出来が殊のほかよかった。悪いときはタックルとキック(の失敗)しか印象に残らない人だが、今日は相手の陣形がよく見えていたのだろう、味方を前に出すプレーが随所に出ていた。抜いて突進したあと(進んだ方向もよかった)、さらにタックルさせながらエルナンデスにつないだパス(エルナンデスがさらにタックルさせながら 14 番アリアスにパスしてトライ)は、ラグビーの理想的なあり方のひとつを最も美しい形で具現化したものだった。この人もラポルトに干されてきた不運のプレーヤーだが、そう、前にフランス代表のバックスはトゥールーズでよいと放言したときにわたくしは、ダヴィッドのことをすっかり失念していたのだった。少なくとも控えの SO として選ばれて欲しいと思う。

 前半トライが思うように取れず(2 トライのみ)、後半にスタッド・フランセは「より攻撃的な」布陣として、15 番にコルレト――黄色いスパイクはやめたのか?――、エルナンデスを 10 番に上げ、スクレラを 12 番に置く(さらに 13 番にミルコ・ベルガマスコが入る)。その割にはしかし、やはり思うようにトライを奪うことはできずもたついた。プール最下位のハーレクインズだからトライを三つ追加することができたものの、もっと強力なチーム相手にそこまでやれたかどうか、わからないところがある。まずペネトレーターがいない。突進力で筆頭に立つのは(ス)ザルゼウスキーだろうが、そして本当に好いプレーヤーではあるのだが、この人はミスが多い。自分が行かねばという気負いが強すぎるのかもしれない。パリッセあたりがそういう役目を分担すべきだろう。BK もドミニシの衰えをカバーできないままだと、いわゆる善戦止まりという戦いぶりから抜け出せないような気がする。FB ・ CTB には余るほどタレントが揃っているのに、どうにもバランスがよくない。クラブチームだから、ローテンションのようにして回してゆくのは決して咎められることではないのだが――ベテランが時々出場して輝きや貫禄を見せるのも悪くない――ちょっと歯がゆさを感じてしまう。

 ハーレクインズはあまり見たことのないチームだが何だか小型だった。ロックの二人と、先発 13 番のルースコンブ(南ア出身、ウェールズ代表)以外はみな 180 センチあるかないかくらいに見えた。果敢にボールを回して、長い時間攻めはしたのだが、あまりゲインは出来なかった。このチームにもペネトレーター不在の問題があるといえるだろう。南ア・ストーマーズから移籍のD・バリーは残り 10 分足らずのところで出場機会を得たものの、ほとんどプレー参加できなかった。

 このあとシックスネーションズを挟んで四月に準々決勝が行なわれる。忘れそうだから、進出チームを書き記して終わりとしたい(一度も見ていないので何ともいえないが、前回優勝のワスプスは「失速」し三位に終わった)。

準々決勝…… 4 月 6 日(イ 3 チーム、ウ 2、ア 1、フ 2)
 A1 サラセンズ vs オスプリーズ(二位)
 B1 ロンドン・アイリッシュ vs ペルピニャン(二位)
 A2 グロウスター vs マンスター
 B2 トゥールーズ vs カーディフ・ブルーズ

準決勝 A …… 4 月 26 日(A1 勝者のホーム)
準決勝 B …… 4 月 26 日(B1 勝者のホーム)

決 勝…… 5 月 24 日(カーディフ、ミレニアムスタジアム)
 (ちなみに昨年度決勝ワスプス対タイガーズは入場者数 81,076 人とのこと)

| | トラックバック (0)

2008年1月18日 (金)

ボビー・フィッシャー

 ボビー・フィッシャーが亡くなった。日本政府もアメリカ合衆国政府に逆らうことが時にあるのだと印象づけた――というのは大袈裟か――「旅券不備の廉で拘留されるもアイスランド市民権獲得により強制送還回避」事件から三年弱、レイキャビクで息を引き取ったという。彼の地で何をしていたのだろうか。アイスランドといえば確か『硫黄島からの手紙』のロケーション地だが、日本と関係が深いような深くないような……いや、国というものにはとにかく少しのこだわりももたぬ人だったというべきである。たまたま「アンチ合衆国」となってしまったのもその結果にすぎまい。厳密に直線を画され囲われた盤上を睨むテーブルゲームの天才。大きなお世話といわれそうだが、その強さに敬意を払いながら、冥福を祈りたいと思う。

| | トラックバック (0)

2008年1月17日 (木)

ウェールズ(とイングランド)2008 年エディション

 シックスネーションズに向けて各代表のメンバーが発表されている。日本代表も気になるけれど、まずはやはりウェールズである。公表されたのは 28 名だから、今大会を通じてのスコッドと見てよいだろう。W 杯直後であり、新監督 ウォーレン・ギャットランド最初のゲームでもあるなど、さまざまな意味で仕切り直しとなるテストマッチ・シリーズである。

 ゲームに臨んでのウェールズの現実的な問題は FW だろうが、こちらは引退を表明していたマーティン・ウィリアムズがギャットランドの説得を容れて復帰し、また負傷により W 杯不参加のライアン・ジョーンズも主将として待望の復帰を果たすなど、少なくとも陣容においては昨年とそれほど変わりがないように見える(良きにつけ悪しきにつけ、つまりルース FW の戦力はだいたい同じだとしても、タイト 5 の弱さもそのまま変わらずということだ)。個人的な不満はマイケル・オーウェンが選考から漏れたことである。彼はサラセンズへの移籍が決まっているが、来期以降の活躍に期待したい。

 他方、バックスでは何よりガレス・トマスの穴をいかにして埋めるかという問題があるだろう。シェーン・ウィリアムズが健在なのは心強いけれど、ゲームの流れを読み、相手の陣形を把握して、(攻撃時には)プレーの方向性を決めるという仕事は、今回のスコッドの 14 番・ 15 番候補にはまだ難しいだろうと思う。まあ、ギャヴィン・ヘンソンが完全にフォームを取り戻しているのなら、13 番トム・シャンクリンとのセンターコンビに、グランドスラム時のような活躍を期待することもできるのだが。
 ハーフバックスは、報じられているかぎりでは、スティーヴン・ジョーンズとドゥウェイン・ピールのスカーレッツ組よりジェームズ・フックとマイク・フィリップスのオスプリーズ組の方が評価が高いようである。

 初戦のイングランド戦が本当に楽しみなのだが、そこには不安も多分に混じっている。イングランドは世代交代がずっと課題となっているチームだが、それが上手く行けばかなり手強くなるのは確実だからである。
 そのイングランドはすでに 32 名のスコッドを公表している。トンガ国籍で NZ のリーグ・ラグビー出身の WTB レスリー・ヴァイニコロ(あだ名はヴォルケーノだそう)の選出が驚きをもって受け止められているが、フルバックを誰にするか、新星ダニー・シプリアニをどのように起用するかなど悩ましい問題があるようだ。若返り方針もあって、ルーシーやファレルは選出が見送られている一方で、ティンドルは復帰しており、センターをどのような組合せにするかも興味がもたれるところである。
 個人的にはウィルキンソンをセンターで見てみたい気もする。「ウィルコ-ティンドル」あるいは「ウィルコ-テイト」のコンビと、レッドドラゴンの「ヘンソン-シャンクリン」の対戦というのはかなり面白そうに思う。それはしかし、テストマッチ・レベルのプレッシャーにシプリアニがどれほど対応できるかという点にかかっており(第三列のプレッシャーが相対的に弱いとイングランドのスタッフが分析しているのはどのチームだろうか)、それが見極められるまでは夢想の域を出るものではない。

 フォワードでは周知のとおり、ダラリオ、コリーは代表を引退したので、実年齢はともかく誰がリーダーとなるのかがゲームを通じて明らかになってくると面白い(主将は変わらずヴィッカリーであるものの、彼にはまずスティーヴンスとのポジション争いがあるといわれている)。

 シックスネーションズは 2 月 2 日(土)開幕する(於トゥイッケナム)。

Wales squad:
Backs: Lee Byrne (Ospreys), Jamie Roberts (Cardiff Blues), Tom James (Cardiff Blues), Mark Jones (Llanelli Scarlets), Shane Williams (Ospreys), Tom Shanklin (Cardiff Blues), Sonny Parker (Ospreys), Gavin Henson (Ospreys), James Hook (Ospreys), Stephen Jones (Llanelli Scarlets), Dwayne Peel (Llanelli Scarlets), Mike Phillips (Ospreys), Gareth Cooper (Gloucester).

Forwards: Gethin Jenkins (Cardiff Blues), Adam Jones (Ospreys), Duncan Jones (Ospreys), Rhys Thomas (Newport Gwent Dragons), Huw Bennett (Ospreys), Matthew Rees (Llanelli Scarlets), Ian Evans (Ospreys), Ian Gough (Ospreys), Alun Wyn Jones (Ospreys), Jonathan Thomas (Ospreys), Martyn Williams (Cardiff Blues), Robin Sowden-Taylor (Cardiff Blues), Gareth Delve (Gloucester), Alix Popham (Llanelli Scarlets), Ryan Jones (Ospreys, capt).  〔『BBC』サイト 1 月 14 日付の記事より。〕

England squad:
Backs: Balshaw (Gloucester), Cipriani (Wasps), Cueto (Sale Sharks), Flood (Newcastle), Gomarsall (Harlequins), Hodgson (Sale Sharks), Noon (Newcastle), Richards (London Irish), Sackey (Wasps), Strettle (Harlequins), Tait (Newcastle), Tindall (Gloucester), Wigglesworth (Sale), Wilkinson (Newcastle), Vainikolo (Gloucester).

Forwards: Borthwick (Bath), Croft (Leicester), Chuter (Leicester), L Deacon (Leicester), Easter (Harlequins), Haskell (Wasps), Kay (Leicester), Mears (Bath), Moody (Leicester), Payne (Wasps), Rees (Wasps), Regan (Bristol), Shaw (Wasps), Sheridan (Sale), Stevens (Bath), Vickery (Wasps, capt), Worsley (Wasps).  〔『BBC』サイト 1 月 9 日付の記事より。〕

| | トラックバック (0)

2008年1月13日 (日)

ハイネケン・カップ プール第五節

 週末にフランス 2 でハイネケンカップの二試合を観戦する。昨日は「サラセンズ対ビアリッツ・オランピック」、今日は「クレルモン・オヴェルニュ対マンスター」。

 前回、ヤシュヴィリのキックで辛勝したビアリッツは、ボーナス・ポイントつきで勝利しないかぎり決勝ステージ進出の望みが絶たれてしまう。基本的にサッカー用のスタジアムとのことで、インゴールの狭さが気になるが、グラウンド・コンディションは悪くない。イギリスのスタジアムはとても行儀が良くて、プレース・キックは敵味方かかわりなく水を打ったように静かに見守るのが清々しい。フランス人のように、好きなときに好きなだけ野次を飛ばすのも決して嫌いではないが、まあともかく、違うんだなあといつも感心する。
 プレーの面では両チームにそれほどの違いはないように見えた。基本的にパスでボールを動かすという方針だったようで、ビアリッツの方は陣地を取るためのキックを織り交ぜるが、それも程度問題である。ホームのサラセンズは、R・ヒルが 7 番、B・ラッセルが 15 番、スタンドでは T・カステニェードが観戦していたが、もうこれは世界的な大スターといってよいだろう Ch・ジャックが 4 番に入る。新人の頃はみんな「ジャック、ジャック」といっていたものだが、そういう人にも引退の時期はやはり訪れるわけで、感慨深かった。ただしそれはオールブラックスの話で、今日は 2 トライ、サポートプレー、カバーディフェンスなどなど大活躍だった。チームとしての戦い方は徹底されていて、とにかくパスで抜くと、そういうことだった。
 ビアリッツもそうだったのだが、おそらく違いは、ビアリッツのパスがとにかく大外へ回すことを眼目としているのに対し、サラセンズのパス回しが、ギャップをつねに探しつつ行なわれるという点にあるように感じられた。回し続ければビアリッツ側のディフェンスがいつか崩れるという確信があったのだろう。そして結局、その通り、ボール支配率で圧倒したサラセンズは、前半終了間際のトライ以降、大小のラインブレークを重ねて完勝し、プール・ステージ平均 5 トライという高い攻撃力を証明する結果となった。ブランコが仏頂面で見詰めるビアリッツは、11 番に入った Z・ングウェニャを走らせることもできぬまま、すべてに中途半端な戦いぶりに終わってしまった。

 今シーズン初めて見るクレルモンだが、これは面白いチームだと思った。ミシュランの本拠地クレルモン・フェランの住民がうらやましい。プレーヤーは、9・10 を除きとにかく大型ないし強力である。2 番にあの「スーパーマリオ」ことアルゼンチンのレデスマ、8 番に E・ヴェアムーレンというラインアップだけでも迫力があるけれど(むしろ上手さの勝つボネールは 6 番に入った)、BK も 12 番のバイ(フィジー)や 13 番ジュベール(南ア)は特大とはいえないにしても、前者は強さ、後者はギャップをつくことのできる柔軟さ(走る角度がよい)をそなえており、そこに超大型バックスリーが加わる。そしてこれらプレーヤーが、あまり難しいことは考えずガンガン突進するという、(かつての)いわゆる「イケイケ」全開のお祭りラグビーなのだから、面白くないわけがなかった。SH のミニョニもこのチームにはとても合っており、今日は自身でもトライを奪うなど活躍を見せた。
 イエローカード計 3 枚、フィールドに 13 人しかいないという時間帯もありながら、そして得失トライ差がほとんどないという戦績そのままの危うさをやはり露呈しながらも、勢いで勝ってしまった。今日のゲームはこれでよいとして
、マンスターにボーナスポイントを与えてしまったために、決勝進出はきわめて困難となっている。
 マンスター――どうでもよいが筆頭スポンサーがトヨタだから、今日は自動車関連メーカー対決である――は敗れてしまったが、首位ワスプスに 3 点差で次節に望みをつないでいる。注目のダグ・ハウレット――これもどうでもよいことだが、フランス人は「ドゥグ(ウ)レ(
ット)」という――は 11 番に入った。さすがにディフェンスは安定している。位置取りもよいし、タックルも厭わない。クレルモンと対戦すると華奢に見えてしまうけれども、ヴェアムーレンやジュベールを一発で倒せるのはやはり一流の証だろう。ただし終了直前に、セービングする相手プレーヤーへの飛び込みという反則(判定自体は微妙だったが)を犯し、駄目押し PG を与えてしまったのが残念だった。
 両チームの差は「勢い」だったといえるが、そのことはとりわけ FW の集散力に顕著だった。マンスターもボールを活かす工夫をいろいろしていたのだが、大事なところでサポートが必ず遅れてしまい、多数のターンオーバーを許してしまった。強さで引けをとった上に機動力でも負けてしまった当然の結果である。

| | トラックバック (0)

2008年1月 3日 (木)

牡蠣

 フランスには「松の内」どころか「三が日」さえないけれども、「年越し」はある。「大晦日」の夕刻、自宅で年を越すべく牡蠣を求める人でごったがえす魚屋の臨時店員にさばかれて、わたくしも「年越し」と「元旦」用に牡蠣を入手する。ダース 8 ユーロと 10 ユーロのノルマンディー産のものを半ダースずつ、9 ユーロだから 1500 円くらいになるだろうか。はっきり覚えてはいないが、おそらくこれまでで最も高いクラスのものを買ったことになる。(正味の)身の丈 10 センチ内外の生牡蠣である。

 31 日朝にゲラが届き――それにしても八時半って早過ぎやしないか、UPS さんよおおお――休みなしが確定してしまった正月のささやかな贅沢であるが、年を越しつつ、また新年を寿ぎつつシャンパンと一緒に食う牡蠣は、泣きたくなるほど旨かった。「死ぬほど」という言い方、あるいは「鬼のように」、「ギザ」などさまざまな言い方があるけれども、ここでは「泣きそうなほど」の方がやはり適切に感じられる(関西人は割とよくそういうと思う)。まあ「震えるほど」でもよいがとにかく、泣きそう。うん、泣きそう。

 広島とも宮城とも縁の無いわたくしにとって生牡蠣はフランス留学のもたらしてくれる幸福のひとつなのだが、泣きそうになりながらも同時に、ひとつの科学的な疑問が浮かんでくる。この牡蠣をフライにしたらどうなるのだろう? フランス人は一般にカキフライを好まないらしいけれど、わたくしはフランス人ではないので、想像するだけで唾液の分泌が激しくなる。激しくなる。

 親しい友人が「食べ物は最低三十回は噛んでから嚥下しましょう」イデオロギーについて、「でもよく噛むとみんな喉ごしが一緒になってしまう」と反発していた。至言である。わたくしは例えばケバブ・サンドイッチも好きだが、やはり一緒になってしまってはいけない。もちろん全く噛まずに飲み込むと単なる「鵜呑み」になってしまうけれども、牡蠣は数回噛むともなく噛む――つまり咬むというより食む――うちにどこか知らないところへ消えてしまっていることに後から気づくというのが、あるべき食し方だろうと思う。次の贅沢まで、「あの泣きそうになったアレ」の記憶とともに生きるのである。本当に噛んだかどうかさえすでに定かではないあの感触と慎ましやかな甘みを反芻しながら。

〔付記 ケバブで思い出したが、日本からもってきた数少ない日本語ラグビー文献の一冊、だからいちおう愛読書といって差し支えなかろう『英国・フランス楕円球聖地紀行』に、バゲットにケバブを挟み込んだサンドイッチのことが書いてあった。著者の中尾氏が昔日を振り返りつつバゲット・ケバブサンドの消滅を嘆いているわけだが、わたくしもそれは見たことがない。少なくともパリはピタかアラブ風パン一色である。そこで過日、焼きたてのバゲット――これはわたくしのもうひとつの幸福――にケバブサンドの中身を移して食べて見た。当然のことながら美味であった。サンドイッチというのはそもそもが食道や胃に流し込むために発明されたものだから、あまり大仰に言い立てると野暮になってしまうが、それでもやはり旨かった。〕

| | トラックバック (0)

« 2007年12月 | トップページ | 2008年2月 »