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2008年2月10日 (日)

6 ネイションズ ウェールズ 対 スコットランド、フランス 対 アイルランド

ウェールズ 対 スコットランド 30-15 (10-6) トライ数 4-0

 今大会は最終スコアがあまり開かず、得点を見るかぎりほとんどのマッチは拮抗している。しかし、かなりの数に昇るミスや反則はとりあえず措くとして、各チームの仕上がり具合にははっきり差が見られる。イングランドが後半に息切れしてしまうのは別の次元の問題かもしれないが、スコットランドやイタリア、アイルランドは戦略ないし戦術が明らかに上手く行っていない。「まずフランス、次いでウェールズが抜けている」(プラネットラグビー)というのが大方の素直な印象だろう。

 その「二強」にトライ数 0-3、0-4 と連続完敗したスコットランドは、「オフロード」を多用したつなぎという、比較的はっきりとした戦術を実行しようとしてはいるのだが、ミスが多く、詰めのディフェンスにはあまり効果的でないこともあって、今のところ功を奏していない。大会第一週のスタッツ(プラネットラグビー調べ)のうち「マッチごとのパス数」を見ると、

 アイルランド  vs イタリア   221 (ア  115、伊 106)
 スコットランド vs フランス   285 (ス  130、仏 155)
 イングランド  vs ウェールズ  184 (イン 97、ウ 87)

となっており、パスでつなごうという意志は少なくとも感ぜられたのだが(ちなみにキック数は少ない方から順にス・仏・ウ・ア・伊=イン)、第二週では

 ウェールズ  vs スコットランド  172 (ウ 131、ス  41)
 フランス  vs  アイルランド     292 (仏 118、ア  174)
 イタリア  vs   イングランド    241 (伊 158、イン 83)

と、早くも破綻してしまっている(キック数は少ない方からア・仏=伊・イン・ス・ウ)。クリス・パターソンを先発させたという点では、「破綻」というよりむしろ戦略変更というべきかもしれないが、またゲームの大半をウェールズが支配していたという事情もあるにせよ、とにかく何とか有効なやり方を見出してほしい。「われわれの仕事は観客を楽しませることではなく試合に勝つことだ」という監督の言葉は、まさしく勝者のものなのだから。

 スコットランドに足りないのは例えばスペースを作り出す工夫だろう。ウェールズはその点ではチーム全体で意志が統一されており、大きな可能性を秘めているように思われる。ジェームズ・フックが真の意味で「フレア」を個人的に発揮し出し、痺れるようなパスを二試合続けて放ったというばかりではなく、チームとして、ボールを動かし続けながらディフェンスのギャップを見つける、あるいは作り出すという意図がプレーヤー全員に浸透している(対イングランド戦のパス数はほとんどが後半のものと考えれば、ハーフ換算でフランスと遜色のない数になる)。M・ウィリアムズが変わらず好調を保ち、いわば FW と BK をうまくリンクしているのも大きい。
 スコットランド戦では、トライ機会を多く逸してしまったことで逆に仕上がりの甘さが露呈してしまったものの、また反則→ PG で点差を詰められるというよくない流れもありはしたが、トリプルクラウンのかかったアイルランド戦、そしてグランドスラムのかかるであろうフランス戦が実に楽しみである。

 今週のパス――というものを仮にでっち上げてみるならば、エマンス→クレール(対アイルランド戦、三本目のトライ)、ウィルキンソン→サッキー(対イタリア戦)という、それぞれに素晴らしかったパスと適当に比較した上でわたくしは、対スコットランド戦、シェーン・ウィリアムズの一本目のトライにつながるフック→バーンのパスを挙げたいと思う。ほぼ等間隔で並んだディフェンスに対し、ヘンソンからのパスとは長さの(したがってタイミングの)異なる短いパスをギャップに放ち、FB リー・バーンを突破させたプレーは、長短のリズムを「流麗」な――としばしば形容される――ウェールズ的運動の中で具象化した見事な、「フレア」の名に値する瞬間だった。

 ただし監督の思い描くラグビーからすると、フックはまだキックに頼りすぎているとのことである。攻撃を連続させるべきところでキックを選択すると確かに勢いが殺がれてしまう。キックを控えて、もっとラグビーをすること。ランナーとしても優れるフック(ステップなどの技術はいうに及ばず、単純な駆けっこでも今村雄太より速いことにはびっくりさせられた)はついつい自分で前に行き過ぎる傾向があって、ブリッツ・ディフェンスの餌食になったり、チーム全体のアタックに勢いを与えるための間合いをあまり考えずにプレーしてしまうことも少なくない。今日もパスをひとつインターセプトされている。そうした点で一日の長があるスティーヴン・ジョーンズが(SH ピールとともに)引き継いでからは、停滞気味だったボールが再び動き出し――スコットランドもその時まで何とかもちこたえて頑張っていたのである――最終的にはダブルスコアの試合となった。

 *

フランス 対 アイルランド 26-21 (19-6) トライ数 4-2

 こちらも監督の望むラグビー、つまりボールを動かしつつバックスリーでトライをとるというラグビーを実践しえたフランスが支配したと、一応はいえるだろうゲーム。ディフェンスの意識も高く、早め早めに詰めるなどしてアイルランドのバックスによるコンビ・プレーをほとんど封じ込めることに成功した。攻撃は変わらず好調を持続しており、昨秋にノートライに抑えられたイングランドや、新ディフェンス・コーチにブリッツ・ディフェンスを叩き込まれたウェールズ相手にどれくらいやれるのか非常に興味がもたれる。二本目のトライにおけるスクレラ→クレール、三本目のエマンス→クレールは、走るコース、パスを放つタイミングとも完璧なコンビネーションだった。

 試合としては、メンバーの入れ替えも影響したのだろうか、後半 10 分過ぎくらいから突如フォワードが崩れてスクラム、モールではっきり劣勢となり、ピック&ゴーも止められなくなってトライを二本許してしまい、勝敗をもつれさせることになった。バックスも含め押されっぱなしとなったのは不思議である。アイルランドが最後のプレーでボールを蹴らなければ、実際どうなっていたかわからない。パスプレーをほぼ完全に――必ずしも好調とはいえぬブライアン・オドリスコルの個人技だけではやはり厳しい――封じられ、FW 戦に集中したアイルランドの攻撃をまともに受けて立ち、そして完全に力負けしてしまったわけで、成熟途上のチームとしてはゲーム・マネージメント上の課題が見つかったことをよしとしなければなるまい。

 *

 今大会はいつもと趣が違って、試合前の「国歌」斉唱には伴奏がつかず、合唱団(今日の試合ではブレスト海軍兵学校の人たち)のみである。ミレニアム・スタジアムでカトリーヌ・ジェンキンスを見ることができないのはとても残念だが、それはともかくとして、楽器がないことで一層見えやすくなるのは、皆が一同に会すという意味での「大会」のミサ的な性格である。むろんミサは祝祭と無関係ではない。

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