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2009年1月31日 (土)

シックスネーションズが来週から始まる(改)

 シックスネーションズに向けて、各チームのスコッドが発表され始めている。絶対的な強さをもつチームはないとの評価がある一方で、やはり展望についての自信の表れだろうか、真っ先に発表したのはウェールズだった。先日のマッチ(ハイネケンカップ)で足首を傷めたL・バーンの回復具合は気に懸かるけれども、他方、負傷のため秋のテスト・シリーズに出場しなかった G・ヘンソン、J・トマス、M・フィリップスらが復帰し、昨年度のグランドスラム・チームと比べて遜色のない陣容と、ひとまずいうことはできる。

 少なからぬ驚きをもって受け止められたのが、D・ピールの不選出。ギャッツのお気に入り SH がフィリップスであることは間違いないし、よほどのことがない限り彼が一本目ということになるだろうが、その控えとして G・クーパーを起用するという点をめぐって賛否両論が提出されている。たとえば BBC のフォーラムなど、アイルランドやイングランドのファンまで議論に参戦しており(二日で 100 の投稿)、夏のライオンズのメンバー選考にもかかわるとはいえ、イギリス人はやはりマメだなと思った。

 それら投稿の大半はピールの方が(フィリップスよりも、だがとりわけクーパーより)上だとしている。気持はわかるけれど、現在のピールならさほど差がないようにも思われる。確かに 2005 年のパフォーマンスは素晴らしかったけれども、その後は残念ながらパッとしない(その点は「ピール派」も認めている)。他方、クーパーも 2003 年のファースト・チョイスだったわけだし、年齢もピールとは二つ(フィリップスとは三つ)違うだけで、さらに昨秋ワラビーズに勝ったメンバーでもあるため、選ぶのは確かに大変である。

 フィリップスがファースト・チョイスになったことはそれに比べれば理解するのは易しい。一言でいうならそれは、ウェールズのパックが強くなったために、〈弱い FW と素早い SH〉 という組合せに頼る必要がなくなったからである。というか、これは言い方が逆で、まず他チームにはない個性としてフィリップス起用が決まり、そのために何が必要かを計算した結果としてのフォワード強化ということだろう。フォワードが強くなることそれ自体は、持久力も同時に強化されるなら、悪かろうはずはない(個人的にはマイケル・オーウェンの復帰はもうないだろうことを悲しんでもいるけれど)。
 事実、秋のテストマッチでウェールズは「オフロード」パスを積極的に試みたわけで、要するにフィリップスが相対的に「鈍重」であり、したがってラックへの寄りが遅くなるということであれば、ラック形成を可能な限り少なくすればよかろう――と、そういうことなのだと思う。
 昨年のシックスネーションズ最終戦、対フランス戦でのマーティン・ウィリアムズのトライ――フランス 2 の J・アベイユーは興奮して「グランドスラム・トライ(essai de grand chelem)!」と叫んだ――は、ラックからボールを持ち出したフィリップスが、まるでロックのようにフランス DF に突っ込んでいって出来たラックから生まれたものだった。SH が核となったラックにスイープ役として SO スティーヴン・ジョーンズ(と他一名)がサポートに入るというあり方(むろんそこだけ取り出して見れば、実際にはどのチームにもふつうに起こりうる場面ではあるが、SH が敢えて LO のようにプレーするという点でやはり違いが認められる)に、かつてキャンピージーが苦言を呈したとされる、だが現在「南半球」的ないしニュージーランド的と認識されてもいる「FW と BK の別のないラグビー」へのある点での接近を指摘することは可能だろう。
 2005 年の「セクシー」ラグビーとのトレードオフといえる、フィリップス起用とフォワード強化。それが本当にトライネーションズに伍す最善のやり方かどうか、答えはまだ出ていないけれど、他にはない個性を活かす方向でのチームづくりというのは、日本代表のことを考え併せても興味深い。ウェールズには、他方で S・ウィリアムズ→L・ハーフペニーという系譜、すなわち小柄・俊足のウィンガーでトライを取るという別の個性もあって、うらやましく感じる。ほとんど唯一の問題は多くの人が指摘するように、7 番 M・ウィリアムズの後継者が育っていない点で、BBC によれば、2011 年の W 杯で彼がプレーできるように、つまりそれ迄に消耗してしまわないように、出場試合数をコントロールして「選手生命」を延ばすことで協会とクラブとの合意が形成されつつあるらしい。ほとんど「国の至宝」扱いだが、実際、年齢、つまり数字だけでどうこう言うのはおかしなことなので、行けるところまで行けばいいと思う。応援しています。

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 対してフランスはというと、個性がありすぎて、強化の方針が定められないように見える。それはいい換えれば、ギャットランドというガイジン監督の断行したウェールズ的「トレードオフ」はできるかぎり避けるということだろう。とてもフランス的なやり方とはいえるけれど、首脳陣の苦労はその分大きくならざるをえない。個性というものに対するこうしたふたつの異なった態度、これも実に興味深い(他の4チームにもそれぞれ固有の態度があるのだろうが割愛する)。

           * * *

 とか何とかいっているうちに、各チームのメンバーが発表されているので追記する(二月五日)。

 ウェールズには著しい驚きはなし。敢えていうなら、いつも苦労するフッカー(ラインアウトに関して)選び、そして CTB に「グランドスラム」コンビのヘンソン=シャンクリンではなく、ヘンソン=ロバーツのコンビ――この組合せは秋のテスト・シリーズの当初予定されたものでもある――を先発させることくらいか。

バーン
ハーフペニー、シャンクリン、ロバーツ、S・ウィリアムズ〔CTB が変更されたので修正した〕
S・ジョーンズ、フィリップス
ジェンキンス、リース、A・ジョーンズ
ゴフ、A・W・ジョーンズ
R・ジョーンズ、M・ウィリアムズ、パウエル

 イタリアは主だった候補の負傷により、マウロ・ベルガマスコを SH に起用する。ちょっと楽しみかな。こういう漫画みたいな展開、決して嫌いではない――とはいえ実際的な利点もないわけではない。「マウロは 7 番にいるときより多くのタックルをこなさなくてはならないだろう」と監督ニック・マレットは予想している。いずれにせよ全責任は自分にあるとマレットが請合っているのだから、ベルガマスコ=マルカトの HB は萎縮することなく堂々とプレーしてほしい。

 対するイングランドでは、シプリアニの落選(イングランド A への降格)ということ以上に、A・グッドの起用が注目される。T・フラッドの負傷のため止むを得ずということなのだが、ゲラーティ(控え)を差し置いての選出に対する批判、あるいはそもそも「またあの退屈なキッキング・ゲームか」という苦言が賑わいを見せている。
 二点目に関しては、本場のファンでもイメージでしか語らない人がいるのだなという感想を抱いた。実際にはパスプレーも上手で、「退屈きわまるバック・ライン」の原因はむしろセンターにあるのだから。一点目については、セレクターのマーティンジョンソンがよく知っている、そして移籍したブリーヴで好調をずっと維持しているというグッドの選出は、とりわけ勝利が第一の目標である以上、当然といえるだろう。ゲラーティは点差が開いて勝利が確実となった時点で(そうなるかどうか予断は許されない)出場させればよいのではないか。
 個人的にも、フランスに移ってからのグッドは知らないので、どうなっているか見てみたい。

 フランス。

ポワトルノー
マルジュー、フリッツ、ジョジオン、メダール
ボクシス、ティユス=ボルド
ウエドラオゴ、アリノルドキ(No. 8)、デュソトワール
ナレ、シャバル
ルクルス、スザルゼウスキ、フォール

 『レキップ』紙の報じるところでは、マルク・リエヴルモンいわく、「(ボールを動かすという意味での)プレー」のため、そして「トライをとって勝つ」ためのセレクション。いい換えれば、実験段階は終わり、真の意味におけるチームとして(自信とともに)選んだということになる。
 監督談話というものをそのまま信じてよいのか、一般論として迷うところだが、「ボクシスは(10 番候補のうち唯一)アングロサクソン的なところがある」とリエヴルモンはいっている。また、クラブで FB をやっている経験からも大きなものを得ているはずだと。こちらも楽しみ。

〔人名、ティユス=ボルド(Tillous-Borde)とルクルス(Lecouls)に訂正した。〕

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