« マノエル・ド・オリヴェイラ『魔法の鏡』 | トップページ | 雑談(1) »

2009年1月14日 (水)

「現実が来週から始まる」

 フレデリック・タデイ(Frédéric Taddeï)の司会によるフランス 3のライブ討論番組 Ce soir (ou jamais !) 、14 日は"L'État de notre monde, face à face avec Paul Auster"と題して、歴史家ピエール・ロザンヴァロンと哲学者ベルナール・スティグレール、シャンタル・デルソル、ミシェル・オンフレの四人に、途中からポール・オースターが加わる構成だった。

 なぜこのメンバーなのかと疑問に感ずる向きもあるかもしれない。どうせならエマニュエル・トッドとマイケル・ハートでも呼べばよいのにとか。まあこの番組はそういうタイムリーなゲストを売りにするものではないし、イスラエルの今回の犯罪的軍事行動が起こる前からおそらくすでに出演者は決まっていたのだろう(そもそもイスラエルのテロリズム・ジェノサイドは今回が初めてではない)。一般論として、「外」の出来事に敢えて触れない――それでもオンフレは、彼だけは「ガザ」の名を口にした――というのもひとつの見識ではあるし、それに、大統領がじきじきに調停を呼びかけたことからも明らかなように、フランスの「民意」はすでに固まっており、今更喧々囂々の議論が要請されているわけでもない(それが必要なのは例えば日ノ本だろう)。街頭デモも連日行なわれている。サルコジの行動は実を結ばなかったが、それは彼個人の能力不足ではなく、ただイスラエル国がアメリカ合衆国の出張所である以上、EU による介入の失敗はほとんど必定だったというだけのことにすぎまい。

 石油利権といういい方があるけれども、中東の石油資源を必要としているのは(自分のところで調達できる)アメリカではなく、ヨーロッパそして日本だという説があって、それが事実だとしてもしかし、今のような形で供給される必要はおそらくない。結局、どこかに、世界を現状のままとどめおきたい勢力があり、その意向に沿う形で物事が動いているということなのだろう。

 ポール・オステールはフランスとはもともと関係の深い人であり、作品もよく読まれている。この日の出演がどのような経緯で決まったのか正確なところは知らないけれど、「ユダヤ系」である彼を吊し上げるということではもちろんなく、要するに新作の宣伝だろうと思う(出演者のトークの最中に時折、画面を分割して右半分で近著が紹介される)。いずれにせよ、彼の登場を契機として、話題はオバマ体制に移る。出演者は(アメリカ人作家も含め)みなバラク・オバマへの期待をそれぞれ――たとえばロザンヴァロンがシンボリックな水準での変化を指摘し、スティグレールがそれに同調するなど――口にした。フランスが子ブッシュに恥をかかされ、煮え湯を飲まされたのは確かなので、とりあえず「あいつ以外なら誰でもいいや」というところはあるだろうが、本当に「変化」は起こるのかね。I doubt...  I doubt, I'm afraid.

 締めくくりのオースターの言葉:

昨年九月から今年の一月二十日までというのはわれわれにとってひとつの幻想―― fantaisie と言ったのを司会者が fantasme と訂正する――の物語です現実が来週から始まります(la réalité commence la semaine prochaine)。

|

« マノエル・ド・オリヴェイラ『魔法の鏡』 | トップページ | 雑談(1) »

社会・雑感」カテゴリの記事

テレビ」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「現実が来週から始まる」:

« マノエル・ド・オリヴェイラ『魔法の鏡』 | トップページ | 雑談(1) »