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2009年3月22日 (日)

シックスネーションズ WAL-IRE

ウェールズ 対 アイルランド 15-17(トライ数 0-2)

 アイルランドが久方ぶりの優勝をグランドスラムで飾った点は素直に祝福したいし(おめでとう!)、勝敗の行方が正真正銘のラスト・プレーまでわからないという点では非常にスリリングだった。
 また、うまい具合に最終戦が決勝戦となるものだなあと感心しもしたけれど、ラグビー・ゲームとして取り立てていうほどの試合ではないとも感じられた。Too little of rugby and too much of "pick & go" という印象。
 結局のところ一番強かったということになるのだろうが、この試合ではアイルランドはラック周辺での反則が多すぎはしなかったか。BBC のスタッツによるなら、ウェールズの反則数 5 に対し、アイルランドは 15 となっている。そのうち四つ(つまりアイルランド陣での反則のほとんど)を PG として計 12 点を奪いはしたものの、それ以上に利用することのできなかった相手のある意味での要領の悪さ、要するに作戦勝ち――といってしまえば簡単だが、プレーを遅らせ too little rugby を演出する要因だったのだから、決してほめられたものではあるまい。BK によるライン・アタックがあまり有効ではなく、ピック&ゴーに活路を見出すほかなかった以上、戦術としては当然というべき選択肢ではあるけれど、こう反則が多くては、新ルール試行の意図は見事に裏切られてしまっているといわざるをえない。さらにレフリー W・バーンズ氏による見逃しも少なくなかった。後半 35 分のスティーヴン・ジョーンズのダイレクト・タッチという「ミス」(蹴った地点に戻されて相手ボールのラインアウト)、あれはまさに新ルールの賜物なわけで、ある種の不公平感が残ってしまう。
 もっとも、ウェールズ側にも、きわめて悪質な反則(ライアン・ジョーンズによる足掛け)がイエローにならずに済むという幸運があった。

 ともかくアイルランド、とりわけ FW はやはり最後まで強く、そしてうまかった。今夏のライオンズ主将は 4 番 POC で決まりと(そしてフッカー及び二列・三列はアイルランドで固めたってよかろうと)思った人も多いのではないか。
 彼らは突進して相手に当たるとき、必ずといってよいほど、クルっとターンして相手のタックルをうまく外すようにしていたのが興味深かった。事実、ウェールズにしてはタックルのミスが多かった(86 回中 11)。BK では FB カーニーが、どの試合だったか、連続で何回転もしていて、彼の何だかせわしない走り方と相俟ってある種のおかしみを醸しだしていたけれど、ともかくよく鍛えられているのだとは思う。

 ウェールズ側で気づいたこと。
 ・ラッシュしてくるディフェンスへの対応の不備。結局イングランド戦で露呈してしまった弱点をフランスやアイルランドに見事に利用されてしまったということになるだろう。ラインの後へのショート・パントなどもほとんどなかった。
 ・キックオフのボールをほとんど取れていない。
 ・FW 戦へのこだわり。強化に努めてきただけあって、イングランド戦やフランス戦、そしてこのアイルランド戦でも、本当によくやったとは思う。アイルランドという、強くて上手くて狡猾な相手に少なからずターンオーバーしているのだから十分やっているといわなければならない。しかしやはり、パスプレーをもっと多用し、積極的にラインブレークを狙うべきだったのではないだろうか。
 ・ラインアウトの失敗(22 本中 6 本奪われた)。フランス戦のように上手く行っても勝てないのに、こんなひどい状態で勝てるはずがない。
 ・シェーン・ウィリアムズがほとんど目立たなかった。「高速リベロ」とフランス 2 のアナが戯れに命名してはいたものの、その名にふさわしい動きは結局初戦のスコットランド戦のみ、残りの試合では、ウィングとしてさえほとんど活躍らしい活躍もできず終わってしまった。どこにでも顔を出す彼の機動力が、ウェールズの攻撃の予測のつかなさに如何に貢献していたかを改めて物語ることとなった。(何だか吉田義人の晩年と似ている?)
 ・FW(とりわけ R・ジョーンズ)がポイント作りのために突っ込んでいくも、孤立してボールを奪われるという場面が少なからずあった。R・ジョーンズは、ラックに敢えてせずに立って前進しながらサポートを待つというプレーも見られたと記憶するが、それを続けるべきだったと思う。
 ・マイケル・フィリップスが突破したときのサポートが足りない。これはいつもそうなのだが、味方をも欺くようなフレア、というか味方にさえ予測不可能な突然の出来事だからであろうか(今日は二回もあったが)、咄嗟のチャンスを活かせないことが多いように思う。
 ・あと、カムバック!マイケル・オーウェン(これで何回目になるだろうか……)。

 他に、この試合では、前半 30 分でリー・バーンが負傷退場してしまうという不運が大きく響いた。
 ハイボール処理の多くを担当してきた(しかも高い成功率を誇ってきた) FB の退場は、ボール獲得の点で当然不利に働いたし、アイルランド二本目のトライ(ROG のキックパス → ボウのキャッチ)は、FB に回った G・ヘンソンの(WTB ウィリアムズとの連携)ミスが原因となってしまった。中央付近でのスクラムからのプレーだったはずだが、あの段階、あの地点でフルバックが飛び込んでしまっては――しかもタックルを見事に外されたのでは――後を衛る者が誰もいなくなってしまうではないか。
 スリークォーターのディフェンス・リーダーではあるのだが、FB としてはテスト・レベルに達しているかどうか危ういヘンソン、元来はバックスリーである CTB のロバーツ、こうした布陣の弱点を、アイルランドに突かれてしまったわけだが、逆にいうと、ロバーツをシャンクリンと並べて CTB で起用しても何とか(決して万全とはいえないけれど)対応してこれたのも、バーンが後に控えていたからということになるかもしれない。そもそも前に飛び出すディフェンスは、ラインの裏にキックを蹴り込まれる危険とつねに隣り合わせなのだから、備えはそれなりに出来ていたはずなのだ。

 結局、今大会のウェールズはトライをあまりとれずに終わった(5 試合で 8)。原因は多数、またさまざまな水準で指摘しうるだろうが、まあ要するに、耐えに耐える中で得られた数少ないチャンスをものにして勝つという、フランス(W 杯での対ニュージーランド戦のように劣勢が予想される場合)やアイルランド的なあり方は、ウェールズには合っていないのだと思う。得点が PG だけでも勝てば何の問題があるかと、一時期のイングランドのように平然としていられるほど成り切れるわけでもあるまい。パスをひたすら繰り出す中で突破口を見出すという、「セクシー・ラグビー」の教訓――何という教訓でありましょうか――をいま一度思い出す必要がありはしないか。後半 40 分の S・ジョーンズの PG の場面にはもちろん痺れたけれど、他方でノー・トライに終わったという事実はやはり大きい。相手のディフェンスが外へのパスコースを切ってくるならば、こちら側のアタック・ラインを――たとえば法政大学のように(笑)――深くするとか、いろいろあるのではないだろうか。いずれにせよどのような対策が今後とられることになるか興味深い。

 いや、それにしても、最後の五分間のサスペンスといったらありませんでした。S・ジョーンズの DG で勝ったと、てっきり思ってしまいましたよ、わたくしは。スティーヴン劇場という感じでしたねえ……。

            *

 2005 年の最終戦、同じようにして決勝戦(ただしフランスにも優勝の可能性が残っていた)となったミレニアムでのウェールズ対アイルランド戦を見直してみた。
 一見して気づいたのは、この試合の方が、ボールがよく動いて(そういう意味では)ずっと面白かったということである。ウェールズが勝ったからということではなく、いや本当にそういうことではなくて、ピック&ゴーはアイルランド側にさえほとんどなく、それどころか、アイルランドは、10-15 番を総動員したきわめて複雑な、しかし剃刀のような切れ味のサインプレーを惜しげもなく披露しつつ、果敢にラインブレークを狙っているし、というわけで、新ルールって一体何の意味があるのだろうかと思わずにいられなかった。オコネルとオカラガンが勢いよく走りこんでパスを交換するなんて、今では考えがたいけれども、それがたった四年前のことなのである。まあ、ディフェンスというのは年々進化するというか、厳しくなってゆくものだし、同じようには行かないだろうけれど。
 先発メンバーを見ると、ウェールズ側は 1・3・6・7・9・10・11・12・13 番、アイルランドでは 3・9・10・13・15 番が今も(控えの人も含めて)活躍するプレーヤーである。
 POC は当時 5 番だが、興奮のあまりウェールズ 5 番を組み伏せて、何回も殴る場面があって笑った。このシーンはすっかり忘れていたけど、ただの暴れん坊やん……。
 ちなみにいえば、BOD はこの頃、驚異的な加速力を誇っていたが、ウェールズの CTB コンビがそれでも何とか拮抗していたのが興味深い。防禦時のラインもすでに浅いものだった。

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