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2011年8月

2011年8月22日 (月)

ワールドカップ 2011 準備篇(1)

 先日のサッカー日韓戦は素晴らしいゲームだった。韓国にとっては悪夢以外の何ものでもなかったろうが、偉大なプレーヤーが抜けたあとで、新チーム構築の途上にあるわけだから、今回の結果は仕方ない。とにかく日本チームは、これまで最大の弱点だった、ゴール前で落ち着いて確実にゴールを決めることのできるストライカーをついに(しかもふたり!)手に入れたわけで、あとはセンターバックがもっと強くなれば、強豪相手にも結構やれるのではないだろうか。誠に慶ばしいことである。

 女子サッカーチームの快挙も忘れてはいけないが、そうするとどうしても、ラグビーチームに思いを――やや翳った思いを――馳せずにはいられない。いやもちろん、ジャパンは応援する。胸を締めつけられながら応援はするだろうけれども、興味の焦点は、勝敗(二勝できるか?)と、いずれ負けるにしても無様でない結果(失点を二桁に抑えられるか?)、それくらいしかない。「トライをふたつ奪ったら実質的に勝ち」といった、小薮のような負け犬根性に毒されるのは本当に厭なのだが……。それにしても日本人選手の身体が大きくなった点にはある種の感慨を覚える。
 たとえば前回連れて行った佐々木や小野が選ばれていないのはなぜか? 前者にはライバルが多数いるので仕方ないともいえるが、後者はやはり選ばれるべきだったと思う。こういうセレクションは異論を唱え始めると切りがないけれども、たぶん誰が見たって疑問に感ずるだろう点は、要のポジションが「助っ人」に占められていることだ(過半は日本国籍を取得しているとはいえ)。ロックに一名、第三列のうち二名、SO、インサイド CTB、FB、そしてキッカーということになると、無条件に声援を送るという風にはなりにくい。この人たちの殆どはたまたま日本にいたのではなく、明らかにラグビーをやるために渡来してきたからだ。もちろんこれは、それぞれのプレーヤーに対して悪意だの反感だの抱くのとは違う水準の問題で、結局は協会の方針に対する違和感ということになるだろう。
 などと一応書いてはみたものの、整理はつかないな。オールブラックスなどもこうした外国籍ないし二重国籍選手(フィジー、サモア、トンガからの)が多いわけで、そうすると、上のような違和感は、たとえばニュージーランドの白人が抱く(かもしれない)それと同等のものなのだろうか。しかし彼の地の白人は明らかに「あとからやって来て島を乗っ取った連中」であって――いわゆる日本民族も外から(「大陸」とか「半島」とかから)やって来たのかもしれないがそれは先史時代のことだから同列には論じられない――やはり事情は異なるはずだ。ただ、共通していえるのは、一般に金や仕事がある場所に人は集まるのである以上、「出稼ぎ」選手の存在はほとんど不可避ということだろう。東アジアにおける日本、オセアニアにおけるニュージーランドやオーストラリア。いずれも失業率が零というわけではもちろんないし、日本など既に凋落の途を歩み始めているわけだが、とにかく広い意味での社会情勢、あるいは経済情勢がいくらか反映されているとはいえるのではないだろうか。
 だとすれば、もう日本でプレーしていないアレジは選ばれるべきではなかった。同様に「助っ人」が多かった前回大会のセレクションは、カーワン就任から日が浅く、まだ言い訳も立った。その四年後に事態が何も変わっていないことにやや苛立つ。今日読売テレビでやっていた『ラグマヨ』なる番組で太田 GM は「代表チームは勝ってナンボだから、力が同等であれば日本人を、「助っ人」の力が優っているならそちらを選ぶ」という方針を明らかにしていたが、四年の間いったい何をしてきたんだろうかと、少し腹立たしかった。〔この段落は 9/3 に追記された。〕

 サッカーの場合、プロ化が奏功したことは誰の目にも明らかだが、一方でわたくしには、日本独特(?)の企業スポーツという仕組も、とりわけ選手の生涯というか、人生設計を考えると、そう悪いものではないと思われる。「世界の強豪と伍すために云々」というところから出発すると利点が見えにくくなるけれども、なんとか活かす道はないものだろうか。

           *

 参加チームのメンバーが明らかになった。日本以外で個人的に応援するチームをメモしておく。

 アルゼンチン(B) -Eng(9/10) -Rom(9/17) -Sco(9/25) -Geo(10/2)
  メンバー(BBC より)

Forwards: Patricio Albacete (Toulouse), Marcos Ayerza (Leicester Tigers), Maximiliano Bustos (Montpellier) Alejandro Campos (Agen), Manuel Carizza (Biarritz), Agustin Creevy (Montpellier), Julio Alfredo Farias Cabello (Tucuman RC), Juan Martin Fernandez Lobbe (Toulon), Juan Figallo (Montpellier), Mariano Galarza (Pampas XV), Alvaro Galindo (Racing Metro), Mario Ledesma (no club), Juan Manuel Leguizamon (Lyon), Rodrigo Roncero (Stade Francais), Martin Scelzo (Agen), Leonardo Senatore (Gimnasia y Esgrima Rosario), Nicolas Vergallo (Toulouse).

Backs: Horacio Agulla (Leicester Tigers), Marcelo Bosch (Biarritz), Gonzalo Camacho (Exeter), Felipe Contepomi (Stade Francais), Santiago Fernandez (Montpellier), Lucas Gonzalez Amorosino (Montpellier), Agustin Gosio (Club Newman), Juan Jose Imhoff (Duendes RC Rosario), Alfredo Lalanne (London Irish), Martin Rodriguez (Stade Francais) Federico Sanches (Bordeaux Begles), Gonzalo Tiesi (Stade Francais) Tomas Vallejos (Harlequins).

 エルナンデスがいない(安寿の慟哭が聞こえるようだ)。FW はベストの面子といえるが、カーター不在のオールブラックスと同様の戦力低下が見込まれる。それに先日の対ウェールズ戦を見るかぎり、DF が整備されていない。前回はあんなに簡単に突破されていなかったのではないか。この状態ではスコットランドに勝てるかどうかも怪しくなってきた。

 そのウェールズ(D) -SA(9/11) -Sam(9/18) -Nam(9/26) -Fij(10/2)
  
メンバー(BBC より)

Forwards: Gethin Jenkins (Blues), Lloyd Burns (Dragons), Huw Bennett, Ryan Bevington, Adam Jones, Paul James (Ospreys), Ken Owens (Scarlets, Craig Mitchell (Exeter), Bradley Davies, Sam Warburton (Blues), Luke Charteris, Danny Lydiate, Toby Faletau (Dragons), Ryan Jones, Alun Wyn Jones (Ospreys), Andy Powell (Sale Sharks).

Backs: Michael Phillips (Bayonne), Lloyd Williams (Blues), Tavis Knoyle (Scarlets), Jamie Roberts (Blues), James Hook (Perpignan), Jonathan Davies, Stephen Jones, Rhys Priestland, Scott Williams (Scarlets), Leigh Halfpenny (Blues), Lee Byrne (Clermont Auvergne), Aled Brew (Dragons), Shane Williams (Ospreys), George North (Scarlets).

 2008 年シックスネーションズのグランドスラム・チームからはだいぶ様変わりしたが、第一列にベストメンバーが復帰し、FB バーンの調子が戻れば、実力として遜色はなくなる。とはいえ、NZ や同じ組の SA に勝てるとは思えないので、まずサモアおよびフィジーに確実に勝つための XV ならびに戦略で大会に臨むことになるだろう。勝負は準々決勝の(おそらく)対 AUS 戦かな。これに勝つと次はイングランドかフランス(二位通過の場合)、ということは初の決勝進出への(一瞬の?)夢が見られるということである。M・ウィリアムズは選ばれず、S・ウィリアムズは最後のワールドカップ。ウォームアップマッチで活躍したノースは、大型のスピードスターだが細かいステップなどの技巧も駆使できるWTB で、世代交代は寂しく感ずるが、まあ頑張ってください。

 フランス(A) -Jpn(9/10) -Can(9/18) -NZ(9/24) -Tga(10/1)
  
メンバー(L'Équipe より)

1ère ligne : Fabien Barcella (Biarritz), Jean-Baptiste Poux (Toulouse), William Servat (Toulouse), Guilhem Guirado (Perpignan), Dimitri Szarzewski (Stade Français), Luc Ducalcon (Castres), Nicolas Mas (Perpignan)

2ème ligne : Pascal Papé (Stade Français), Julien Pierre (Clermont), Romain Millo-Chluski (Toulouse), Lionel Nallet (Racing-Métro 92)

3ème ligne : Julien Bonnaire (Clermont), Imanol Harinordoquy (Biarritz), Thierry Dusautoir (Toulouse/Cap), Fulgence Ouedraogo (Montpellier), Raphaël Lakafia (Biarritz), Louis Picamoles (Toulouse)

1/2 de mêlée : Morgan Parra (Clermont), Dimitri Yachvili (Biarritz)

1/2 d'ouverture : David Skrela (Toulouse), François Trinh-Duc (Montpellier)

3/4 centres : Fabrice Estebanez (Brive), Maxime Mermoz (Perpignan), David Marty (Perpignan), Aurélien Rougerie (Clermont)

Ailiers - Arrières : Maxime Médard (Toulouse), Alexis Palisson (Brive), Vincent Clerc (Toulouse), Cédric Heymans (Toulouse), Damien Traille (Biarritz)

 ルージュリーにジョジオン並みの働きができるのだろうかなどと思っていたけれども、先日の対アイルランド戦を見たかぎりでは問題はなさそう。トライに結び付いたエマンスとのコンビネーションは見事だった。攻撃面ではジョジオンとオドリスコルを足して二で割ったようなプレーを期待している。それに対して防御時は、横の細かい動きに対応できるかどうか等、やや心配が残る。WTB との間をスミスやノヌーに突破される場面が想像される。そうすると WTB 同士の争いになって、フランスのバックスリーもスピードでは負けていないが、オールブラックスの調子が良ければ、WTB がたとえ捕まっても必ずフォロワーが来ているので、フランス側は二次・三次防御がどれだけ揃うかが鍵となるだろう。ポワトルノーはおらず、FB の位置を占めるはずのエマンスにしてもトラーユにしても、本職とはいいがたいのだから。
 NZ 戦の FB は四年前の成功を踏まえてトラーユだろうか。準々決勝突破のためには、イングランドと当たるであろう二位通過より、スコットランドかアルゼンチンと当たる一位通過の方が望ましいかもしれないが、グループリーグで NZ に勝ってしまうと、決勝では負けてしまうような気もする。というかその前に、決勝に進むためには、ワラビーズとスプリングボクスとではどちらが戦いやすいのかな。
 しかしこうしてメンバーを見渡すと、トゥールーズ 9人、ビアリッツ 5人、ペルピニャン 4人、クレルモン 4人、モンプリエ 2人、スタッド・フランセ 2人、ブリーヴ 2人、ラシング=メトロ 1人、カストル 1人という構成で、クラブは存外限られていることがわかる(エマンスは次シーズンからバイヨンヌ)。
(いまだに Racing-Metro 92 が「ラシン…」と書かれている例を見かけます。レーシングという英語を無理矢理フランス語風にしているわけなので、正しい発音はラシングとなります。クラブ関係者に確かめたので間違いありませんし、理屈からいってもそうなるでしょう。フランス語にも〈母音字+ ng〉という綴りはありますが(poing, etang)、最後の g を発音しない、つまり「生粋」のフランス語としてこの言葉を解すなら、鼻母音 in(g) の部分は規則通りに「アン」と発音されるはずで、だから「ラサン」でなくてはおかしい。「ラシン」というのはそのいずれでもない、いわば鵺のような表記です。その辺り、規則と例外の混同があるのではないでしょうか。全体としては「ラシング=メトロ・カ(キャ)トルヴァンドゥーズ」となります。)

 日本(A) -Fra(9/10) -NZ(9/16) -Tga(9/21) -Can(9/27)
  メンバー

http://sakura.rugby-japan.jp/worldcup/2011/id10996.html

 また『レキップ』紙の日本代表に関する記事

           *

 いわゆるトライネーションズのゲームはなぜあんなにも忙しないのだろうか。とくにワラビーズの 10 番クーパーの、つねに身体を小刻みに揺らすプレーは見ていて落ち着かない。イングランドのロビンソンも同じような動作が代名詞だったがあれはバックスリーだからいいので、試合中ずっとボールに触れている選手があれでは、何というか急かされているような気になって仕方ない。ウェールズには前回の雪辱をぜひとも果たして欲しい。

 (未了)

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