« 2011年9月 | トップページ | 2012年1月 »

2011年10月

2011年10月23日 (日)

決勝 フランス 対 ニュージーランド

 フランス 対 ニュージーランド 7-8(0-5) トライ数 1-1

 よい試合だった。決勝ということ、さらにおそらくフランスの防禦が堅いこともあって、オールブラックスがあまり無理をしなかったため両チームの得点は伸びなかったものの、高く張りつめた緊張感が最後まで持続した、今大会における最高のゲームのひとつといってよいだろう。

 フランスはおそらくプランに近い試合運びが少なくとも 70 分過ぎ辺りまでは出来ていたと思う。攻撃では積極的にパスプレーも試みたが、パスのタイミング(タックルされる寸前でのパスが何度通ったことか!)、つなぎ、いずれも彼らとしては最高の出来だった。それでも完全なブレークがほとんどなく、ニュージーランド側の守備力の高さに改めて感嘆させられた(ついでながら、ラックの局面でオールブラックスがほとんど反則を犯さない点は素晴らしかった)。ノータッチの長いキックや、プレッシャーをかけられないタイミングでの不用意なボックスキックが少なかったのは、もちろん相手のカウンターを封ずるためだろうが、要するに考えうるさまざまな局面でのケアが今日の試合では最高度に発揮されていたわけである。
 ほぼ唯一の油断が、トライを奪われた自陣ゴール前のNZ ボール・ラインアウトで、よくあるサインプレーなのだが、今日は、好調を維持し、自信もあったのだろう(実際スチールに何度か成功した)アリノルドキやボネールらがラインアウトで競りに行ったことで、ちょうどラインが割れ――つまり「ブレーク」して――大きな穴ができてしまった。ちなみにウェールズもこのサインプレーはよく用いていたのだが、警戒されるようになって今大会ではほとんどやらなかったと思う。まさかオールブラックスがここでやってくるとは思わなかったのだろうが、ちょっと真正直にやり過ぎたのが惜しまれる。いずれにせよ、ラインアウトもまたラインをめぐる攻防なのだと思い起こさせてくれる点で、この場面は興味深かった。

 攻撃面でいえば、フランスの方が積極的であり、見る分には面白かった。というより、オールブラックス側は、バックスリーが強引な仕掛けをほとんど試みない、またそもそも展開プレーがあまりないなど、総じて慎重だった。そうまでして優勝したいかというような厭味はもちろんいいません。が、物足りなさを感じたのも事実。ただ、第二回大会以降のラグビー・ワールドカップとは、いってみれば〈オールブラックスがいつどのようにして足を掬われるか〉を(NZ 国民を除く?)全観客が心待ちにするイベントでもあったわけで、今回の勝利がそうした鬱陶しいプレッシャーから黒い人たちを解放することになるのであれば、わたくしは心から祝福したいと思う。
 というか、「勝つことを宿命づけられている」などという物語には飽き飽きしているので(讀賣球団ぢゃあるまいし)、今回のような苦しみながらの勝利がそうした神話を壊してくれればと願っているわけです。ちなみに開催国の優勝という点に関していうと、わたくしはむしろ、開催国がこけてしまう筋書きの方が好みだ。

 大会全体についての印象。
 好試合はもちろんいくつもあって、楽しんだのは事実だが、正直なところをいえば、やや退屈でもあった。
 ひとつにはジャパンが一勝も出来ずに終わったからだが、総じてどのチームも、だがとりわけ勝ち進むことのできたチームが、似たり寄ったりの戦術・戦法を採っていたことが大きい。たとえば梅本洋一さんが『日本ラグビー 世界への始動』所収のエッセーで指摘したような「危機」はまったく解消されていないことが改めて感じられた。
 これは今大会に限らない話だが、「ノンストップ」の「高速ラグビー」って、そんなに善いものだろうか。プレーの速度競争を突き詰めていって一体どうなるというのか。単純なスピードが脅威となるような局面は確かにある。しかし、わたくしはむしろタイミング、テンポによって敵を出し抜くというやり方に共感する。だからこそウェールズやフランスを応援するわけだが、後者は何というかグダグダのまま、しかし決勝では底力を発揮してみせたというにすぎず、評価は保留とせざるをえない。前者にも、「セクシーさ」がやや足りないという意味でやはり不満を覚えた。

 プレーそのもの、ゲームづくりそのものによって驚かせてくれるチームがなかったといってもよい。勝敗における番狂わせでは驚くこともありましたけれどね、結局のところ、前回大会におけるロス・プーマス――いわば〈新しい懐かしさ〉でわれわれに感銘を与えた素晴らしいチームだった――のようなチームが出現しなかったということになる。

 とりあえずの感想なので、後からの修正があるかもしれません。

| | トラックバック (0)

2011年10月15日 (土)

準決勝 ウェールズ 対 フランス/オーストラリア 対 ニュージーランド

 ウェールズ 対 フランス 8-9(3-9) トライ数 1-0

 一番楽しみにしていた試合だったが、終わってみれば最高に莫迦々々しいゲームとなってしまった。ベッカムといい、ウォーバトン(主将なのに!)といい、「イギリス人」はバカぢゃないのか? クレールが何ともなかったのは幸いだが、どうせならフランス XV も激昂して 12 人対 13 人とかの試合になれば面白かったのに。近年のレ・ブルーは規律が行き届きすぎて少々物足りない。

 ウェールズは 14 人でフランスをトライ零に抑えたという意味では確かによく頑張ったし、やはり防御は堅いといえばいえるかもしれないけれど、実際はフランスが無理にトライを狙わなかっただけの話で、彼我のプレースキッカーの調子からしても、レ・ブルーの側は敗北はほとんど考えていなかったろう(ちなみに公式スタッツに拠ればタックル数はフランス 126 ・ウェールズ 56 、ということはつまりフランスは積極的に攻めなかったということになる)。

 もっとも、ひとり足りないからといって負けが必定というわけでもない。ジャパンと、オールブラックス XIV やフランス XIV、あるいはスコットランド XIV との対戦を想像してみればよい。ウェールズはもっと上手くやれたはずだが、その意味では、ウォーバトンの退場以上に、PR の A・ジョーンズの負傷交代が痛かったと思う。ジェンキンス、リース(負傷で選ばれていない)、ジョーンズというファーストチョイスの一列は、スクラムワークでもフィールドプレーでも一流と思うが、この試合では結局 1 番のジェンキンスしか残っておらず、結果としてスクラムは劣勢、7 人でしのいでバックス勝負(数の上では同じとなる)にもち込むこともかなわなかった(スクラムの大半は 12 番ロバーツが SH 側のフランカーとして参加)。まあ一時間を 7 人で耐えるというのは、いずれ体力的に厳しかったろうが。

 SH フィリップスの存在は、トライを奪ったからというだけではなく、こういう状況では頼もしかったが、「九人目(というか八人目というべきか)の FW」として十分に活かせたかというと、疑問が湧く。
 終了直前、ロスタイムの攻撃でも、ゴールラインの手前までピック&ドライブで進むべきだったのに、中途半端な位置で展開したものだから上手くゆかず、ノッコンとなってしまった。

 準決勝第二試合でニュージーランドが勝てば、漫画みたいな決勝戦となるが(そして漫画のロジックではフランスが優勝するのだが)、さてどうなるのだろう?

(何だか忙しくてようやくビデオを見ることができた。これから(hopefully)その第二試合を観戦する。それまではむろん試合結果のニュースは遮断するのである。)

             *

 オーストラリア 対 ニュージーランド 6-20(6-14) トライ数 0-1

ラグビーといっても色々あるのだなと、準決勝の二試合を見て改めて思いました。戦い方もそうだし、技術・戦術の水準においても。ワラビーズが健闘した前半は、今大会最高の(半)マッチといえるだろう。双方に綺麗なラインブレークがあるなど見所が多く、また得点でも競っていたため、非常に楽しむことができた。

 オールブラックスの充実ぶりが目立つセミファイナルだったが、さて、奇しくも第一回大会と同じ顔合わせとなった決勝(ならびに三位決定戦)はどうなるのだろう。勝敗をある意味で超越しうるという意味で三決が(だからそういう意味で)面白くなる可能性はある。準決勝に悔いが残るであろうウェールズがベストメンバーでないことは惜しまれるが、シェーン・ウィリアムズ最後の大会ということもあるし、「セクシー」路線で行って欲しいと切に願う。

 ファイナルは順当に行くなら開催国の勝利だろうけれど、何をやってくるか読めない、あるいはむしろ、そう思わせる術に長けたチームが優勝する可能性もないではない。
 とはいえ、フランスが勝つか、いずれにせよ僅差の勝負にもち込むとすれば、2007 年のような戦い方、ディフェンスで耐えに耐えるというゲームしか思い浮かばない。あの試合では、ジョジオンのトライで逆転したわけだが、その後、僅か 2 点のリードを確か 20 分くらい守り切ったのだった。オールブラックス相手にこういうことの出来るチームは限られている。今回のレ・ブルーはどうだろう?

| | トラックバック (0)

2011年10月 8日 (土)

準々決勝 アイルランド 対 ウェールズ/イングランド 対 フランス/ニュージーランド 対 アルゼンチン 

 アイルランド 対 ウェールズ 10-22(3-10) トライ数 1-3

 個人的には今までのところ最も痺れる試合となった。実力の拮抗した同士の対戦だったけれども、安全第一で PG やDG を狙うというゲームでなかったのがまずはよかったと思う。両チームの持ち味とされる特徴がそれぞれに発揮されることになったからだ。対ワラビーズ戦では 3 点の積み重ねによる辛勝もよしとしたはずのアイルランドも、今日のマッチでは積極的にトライを狙ったように見えた。しかしそれはもしかすると、開始直後のウェールズのトライ(いわゆるノーホイッスル・トライ)が、そのような方向での展開を決定づけたのかもしれない。試合最初の得点がトライであったというのは、その意味で見逃せないポイントだろう。トライこそラグビーの醍醐味だとはいわないけれど。
 もっとも、たまたまプレーが途切れることなくトライまでもって行けたからそうなったという可能性は(双方に)あるだろう。ウェールズが最初に PG を選択していればどのような展開となっただろうか。

 とにかく、違う方法でそれぞれにトライを狙った結果としては、ウェールズの 3 本に対し、アイルランドが 1 本、すなわち前者の完勝である。ただしゲームの内容に即していえば圧勝や快勝とはいえない。ブレークダウンやラインアウトなど、明らかにアイルランドが優勢な部分もあったし、敵陣 22 メートルライン内にいた時間を見ればアイルランド 15 分に対しウェールズは 6 分半と、総じてアイルランドの方がより多く攻めていたのである。実際、アイルランドのピック&ドライブは圧倒的で、ウェールズのそれとは、個々のプレーヤーの突っ込むスピードや力強さの点で、かなりの差があった。第三列ばかりではなく、全員の充実ぶりがうかがえる出来だったと思う。
 それだけに、このゲームで第一に賞賛さるべきは、ウェールズのディフェンスということになる。もちろん反則が皆無というわけではなかったが、アイルランドが PG をほとんど選択しなかった点の評価は、意見の別れるところだろう。ウェールズの防禦は堅いが(対南ア戦のように)
そのうち綻びが出るとの目算はあったかもしれない。実際、ウェールズ側のタックル・ミスは1割以下と精度こそ高かったものの、ほとんどつねに押し込まれていたし、ラックでは、より多くの人数を割かなくてはいけなかったため、応援する者としては気が気ではなかった。今大会でこれほど胸が締め付けられたことはない。

 他に気づいた点。両チームのトライがいずれもフィールドの端だった(J・デイヴィスのはやや内寄りだったが)のは、ミッドフィールドのディフェンスが双方ともに堅かったことの表れだろう。アイルランドが結局一本しかトライを奪えなかったのは、プレーヤーの力とは別次元で、無策というか、工夫が少なすぎたせいではないか。アイルランドのバックスは個々にはそれぞれ素晴らしい働きをしたものの、いわゆるライン攻撃をあまり仕掛けなかったために、防禦する側からすれば的を絞りやすかったということになると思う。反対にウェールズの攻撃は、ショートサイドをしつこく攻めたり、また内側ではロバーツを再三突っ込ませたりとバラエティに富んでいた。医学部学生でもある(あった?)ロバーツ、JPR の後を追うかのようなその経歴にも感心するが、ギャットランドがこの大型プレーヤーをバックスリーからセンターにコンバートしたのは、いわばジョナ・ロムーをミッドフィールドで起用するようなものだろう。現代のディフェンス・システムではそう簡単にラインを破れるわけではないが、少しでも薄くなれば突破されるという意味で、防御側のケア意識が中に向くといった効果は少なくとも見込める。
 またハーフペニーは、キックを受けてからのカウンターアタックは不発だったものの、ハイパントの処理やタックルなど、防禦の点では完璧だった。50m 級のプレースキックはともかくとして、われわれは有賀選手にこうしたプレーヤーになって欲しいと願ったものだが、非我の違いにはいろいろと考えさせられた。

 ジャパンは敗退したが、ウェールズがベスト 4 に進むとは!これほど喜ばしいことはない。運はもちろんあった。アイルランドの戦法はワラビーズに通用したが、この準々決勝の相手がワラビーズなら、ウェールズが勝てたかどうかわからないからだ。しかし、フロントローと 4・9・11 番以外は若いメンバーばかりで、試合ごとに力が上がっているのは間違いない。

            *

 イングランド 対 フランス 12-19(0-16) トライ数 2-2

 イングランドが展開プレー、フランスがハイパント攻撃という、双方がともに通常のイメージとは逆の入り方をした試合。必勝を期した対戦でなぜイングランドがそのような戦略を採ったのか、やや理解に苦しむところもあるけれども、フランスが真正面からは応じず、意気込み(PG を一本も狙わぬという)がいわば斜めにすかされたことで、結局中途半端な戦い方となってしまったように見えた。

 同じような高速展開といっても、フランスとイングランドとでは差があった。フランスの方はプレーヤーの動きとボールの動き(両者の合わさったものがプレー全体の運動と呼ばれるものだ)が非常に滑らかに連動していたのに対し、イングランドの展開には何処か無理をしているところがあって、あまり効果が得られなかった。習熟度も関係しているのだろうけれど、スペースの使い方がまずいと思われた。たとえばパスを受けるところで複数の選手が重なってしまっている場面がしばしば見られたが、それはどちらかのプレーヤーがスペースを殺してしまっているということであって、要するに活用できていないわけである。ウェールズがショートサイドを執拗に攻略するのと比較してみればそのことは容易に理解されるだろう。
 また、攻撃のスピードを誇るようなチームではもともとなかったが、フランス DF の出足のよさに、その速度がいっそう殺されているようにも見えた。
 ウィルコがどうこうということではなく、トライを積極的に狙うラグビーを志すならば、そのような方向でチームをきちんと鍛えた方がよいだろう。トライへの意志は明らかであって、それを抑圧する必要など少しもないのだから(だって、たかがスポーツなわけだし、ねえ)。

 というわけで、準決勝第一の組合せは、ウェールズ対フランスという、(個人的には)夢のような対戦となった。ノックアウト・ステージのフランスの戦い方には近年、どこか詐術めいたところがあり、それはちょび髭を蓄えたことでまさに絵に描いたような詐欺師然となったリエヴルモンの風貌が示すとおりだが、それがウェールズに通用するかどうか、非常に楽しみである。いずれにせよ好試合となるだろう。

            *

 ニュージーランド 対 アルゼンチン 33-10(12-7) トライ数 2-1

 ともに一本目のゲームメーカーを欠いた対戦。その分のハンディキャップは、得点方法が限定されてしまったという意味でアルゼンチンの方がより大きかったと思うが、とにかく NZ が順当に勝利した。

 オールブラックスを 2 トライに抑えた点ではプーマスは健闘したといえるだろう。実際、前半のディフェンスはタックルにせよカバーディフェンスにせよまさしく感動的だったし、先に奪ったトライには思わず涙腺が緩みもした(トライ自体がまた実に素晴らしかった)。とはいえ、一方的に攻められるなかで犯してしまった 10 の反則のうち 7 回までも PG を決められてしまったということは、黒い人たちが単に無理を避けたというだけのことで、ロス・プーマスの勝ち味は薄かったといわざるをえない。
 無理矢理というのは、たとえば
ワールドカップでいえば、前回の準々決勝対フランス戦において、意地を張るかのように、過度に時間をかけた末にようやくあげた二本目(だったかな)のトライのようなプレーを指す。今日は最後まで冷静さを失わなかった。

 敗れはしたものの(相手が悪かった!)プーマスのフィフティーンはみな、ふつうに上手いよね、ラグビーが。ボールをつなぐ技術という点にかんしては、スコットランドはもちろんのこと、アイルランドなどより上ではないだろうか。
 後半はさすがに疲れてしまい、タックルも相当甘くなったが、スコットランドやアイルランド、ウェールズという、ティア1の第二グループとは十分に伍してゆけるチームだったと思う。

| | トラックバック (0)

2011年10月 2日 (日)

ウェールズ 対 フィジー プール D

 ウェールズ 対 フィジー 66-0(31-0) トライ数 9-0

 試合前からウェールズのノックアウト・ステージ進出がほぼ確定しており、今日の興味の焦点は How much are they going to play rugby? ということに尽きる。この場合の to play rugby とはもちろん、競技としてのラグビーをするということではなく、パス・プレーをするという意味になる。
 ウェールズのゲームがそうなるだろうことは想像できたが(負傷も避けなくてはいけないわけだし)、わたくしの個人的関心は、いわゆるフィジアン・マジックの復活とまではいかなくとも、少なくともフィジーが対南ア戦や対サモア戦のようなクラッシュ一辺倒の戦い方ではなく、奔放なパス・プレーを復活させることができるかという点にあった。つまりウェールズの「プレー」ぶりに触発されて、抑圧したはずの欲望を解き放つのではないかと期待しているのである。降雨などこの際関係ない。PLAY it again, Sam! である(ああ、でもこの台詞をこういう文脈で使うと、PC 的にまずいかもしれない)。
 前半が終わった時点でウェールズが 4 トライを奪って 31-0。やる気どころか、もしかするとやる意味さえ見い出せていないのかもしれぬフィジアンをウェールズが無慈悲に――細かいミスも少なくはないが――攻め立てた。この調子で試合が終わってしまうと、ずっと瀕死状態にあったひとつのスタイルが(とりあえずは)死に絶えるという意味で、世界ラグビーの大きな損失が最終的に計上されてしまうことにもなりかねない。フィジアン・スタイルの壊滅とは、日本のラグビー――横井章氏のブログやまた『日本ラグビー 世界への始動』(日本ラグビー狂会編著、双葉社、2009)所収の同氏インタビューなど参照――の長期低迷に匹敵するくらいの出来事なのであって、憂慮する人も決して少なくないと思う。
 1999年大会だったか、フィジー相手に苦しんだフランスが FW 戦を挑んで彼らのスタイルを抑圧し、何とか勝利するということがあった。前回大会でもウェールズが同様にスクラムでねじ伏せようとしたものの力足らずで跳ね返された試合はまだ記憶に新しいと思うが、今回のレッドドラゴンは、その時より力がずっと上だし、今日は勝敗に拘る必要もないので、抑圧的とはなるまいとわたくしは踏んでいる。

 話を今大会に限定すると、フィジーのゲームがまったくつまらないのは、パス・プレーがほとんどないという以前に、何をするにもテンポが一様だからである。たとえばウェールズなら、今日の前半、ショートサイドを攻めたロバーツのトライがそうであるように、パスの長さやタイミングを変えることでプレーを変調させることができるだろう。それはつまりあれほどの狭いスペースを実質的に拡張できるということにほかならない。超ロングパスや、フィールドの端から端までのキックパスも同じことで、詰まってしまったところに突如、物理的・地理的に隔絶したはずのスペースがつながってしまう点が素晴らしいわけである。ガンガン身体を当ててゆくのも悪くはないけれど、そればかりでは退屈してしまう。だから、

 ……フィジー不発。ガッカリです。

| | トラックバック (0)

2011年10月 1日 (土)

フランス 対 トンガ プール A /イングランド 対 スコットランド プール B

 フランス 対 トンガ 14-19(6-13) トライ数 1-1

 トンガが素晴らしいゲームをした。ブレークダウンへの素早い働きかけ、スクラムでの頑張り、ラインディフェンスの鋭い出足。実に感動的だった。プレーヤーのフィジカリティあってこそだとは思うが、特に奇を衒った攻撃を行なうわけではないものの、縦への突進と横への展開の組み合わせが効果的で、フランスにディフェンスの的を絞らせず、美しいラインブレークを何度も繰り返す。綺麗に突破したあとのコース取りがまずく、トライをふたつみっつ奪い損なったのが惜しまれるけれど、ともかく完勝である。

 グループ・ステージで初めて2敗を喫したフランスは依然本調子の出ぬままである。明日のスポーツ紙一面には「苦い教訓(ルソン・ザメール)」とか何とかいう大見出しが躍ることだろう(この見出し、以前に『レキップ』で実際に用いられたことがあります、シックス・ネーションズでスコットランドに負けたとき)。マルク・リエヴルモンの意図ははっきりしないままだが(あるいはむしろ意図を読ませぬようにしているのかもしれないけれど)、ひとつ確実にいえるのは、FW 戦で劣勢のときにどうするかという「プラン B」を用意しておかないと、前回の二の舞になるということだ。
 展開プレーが(日本やカナダ相手の試合はさて措き)さして効果的でないのは、どうもラインに並ぶプレーヤーが外に外に流れて、ウィングのスペースを潰してしまっているからではないかと思う。メダールやクレールは見たところ好調そうだが、やはりスペースがなければどうにもならないだろう。本日行われたイングランド対スコットランドのゲームでは、後半の後半、スコットランドのカウンターアタック局面で、FB パターソンが、自分の右側にいるプレーヤーを活かすためディフェンス二人を引き付けようとして、ぎりぎりまでパスせずにいたのだが、ランのコースとしては外に流れてしまい、スペースを消すことになったし、結果として一人しか引き付けられなかった。外のウィングはもう一人(たぶんアーミテージ)に捕まえられ、トライのチャンスは潰えたのだが、あの場面では、むしろ早めにパスしてサポートに回るという手もあったのではないだろうか。

 この対戦だとわたくしはニュートラルか、どちらかといえばトンガに肩入れするので、試合結果には満足している。今日のような戦いができるのなら、フランスの代わりにトンガが準々決勝に進むのもよかったかもしれない。ただ、トンガはたとえばスプリングボクスに勝つことはあるかもしれないけれど、オールブラックスには絶対に勝てないよね、構造的にいって。フィジーやサモアもそう。だから結局のところは、フランスが進出した方が大会の、ひいては世界の多様性という観点からして好ましいと思う。
 そして、わたくしの個人的好みとしては、イングランドには何とか勝って、しかるのちにウェールズないしアイルランド相手に華々しく散って欲しい。今回はシェーン・ウィリアムズやブライアン・オドリスコル最後のワールドカップなのだから、それに次回のウェールズやアイルランドが準決勝まで進める保証もないので、うん、まあそういうことです。

          *

 イングランド 対 スコットランド 16-12(3-9) トライ数 1-0

 この試合は、スコットランド・アルゼンチン戦のように「塩っぱい」ゲームとはならなかった。ロス・プーマスと同様にイングランドもロースコア戦略にとりあえず付き合ったわけだが、アルゼンチンが知らぬうちにスコットランドの術中に嵌ったといえるのに対し、イングランドの方はむしろ、トライへの欲望を敢えて抑えつつ勝機を窺うという戦い方だったろうからである。

 一時は 9 点差(8 点差以上で負けると敗退が決まる)をつけられたものの、後半に 3 点差まで追い上げたのち、残り 5 分となり、スコットランドがトライを狙わざるを得なくなってから――ということは試合の焦点が PG・DG からトライへと一挙に転換してから――逆転のトライを決める。この通りの未来予想図を描いていたわけでもないだろうが、こうした展開にはそもそも慣れているわけだし、実質的にイングランドがコントロールしたといえるゲームだった。あるいは、それほどの力の差があったということだ。

 ウィルキンソンからフラッドへの交代は(ウィルコが疲れたとか怪我したとかでなければ)、「これで(実質的に)勝った」という監督からのメッセージ以上の意味はないはずで、というのは、トライに結実したのは、フラッドのパスがよかったからではなく(最後の飛ばしパスは素晴らしかったが)、スコットランドがトライを奪うべく前がかりとなっていたことが大きいからである。

 さて、準々決勝のイングランド対フランスはどうなるのだろう。今日の両チームの状態なら、イングランドが余力を残しつつ勝利するだろう。まだ目の覚めていない――というか実はもう目覚めている?――フランスはイングランドからトライがとれるかどうかさえ不明である。ブレークダウンで優位に立てない場合はそれをなるべく避けるようゲーム・プランを変更しなければならないと思うが、試合の最中にそのようなことができるだろうか?

| | トラックバック (0)

« 2011年9月 | トップページ | 2012年1月 »