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2011年10月23日 (日)

決勝 フランス 対 ニュージーランド

 フランス 対 ニュージーランド 7-8(0-5) トライ数 1-1

 よい試合だった。決勝ということ、さらにおそらくフランスの防禦が堅いこともあって、オールブラックスがあまり無理をしなかったため両チームの得点は伸びなかったものの、高く張りつめた緊張感が最後まで持続した、今大会における最高のゲームのひとつといってよいだろう。

 フランスはおそらくプランに近い試合運びが少なくとも 70 分過ぎ辺りまでは出来ていたと思う。攻撃では積極的にパスプレーも試みたが、パスのタイミング(タックルされる寸前でのパスが何度通ったことか!)、つなぎ、いずれも彼らとしては最高の出来だった。それでも完全なブレークがほとんどなく、ニュージーランド側の守備力の高さに改めて感嘆させられた(ついでながら、ラックの局面でオールブラックスがほとんど反則を犯さない点は素晴らしかった)。ノータッチの長いキックや、プレッシャーをかけられないタイミングでの不用意なボックスキックが少なかったのは、もちろん相手のカウンターを封ずるためだろうが、要するに考えうるさまざまな局面でのケアが今日の試合では最高度に発揮されていたわけである。
 ほぼ唯一の油断が、トライを奪われた自陣ゴール前のNZ ボール・ラインアウトで、よくあるサインプレーなのだが、今日は、好調を維持し、自信もあったのだろう(実際スチールに何度か成功した)アリノルドキやボネールらがラインアウトで競りに行ったことで、ちょうどラインが割れ――つまり「ブレーク」して――大きな穴ができてしまった。ちなみにウェールズもこのサインプレーはよく用いていたのだが、警戒されるようになって今大会ではほとんどやらなかったと思う。まさかオールブラックスがここでやってくるとは思わなかったのだろうが、ちょっと真正直にやり過ぎたのが惜しまれる。いずれにせよ、ラインアウトもまたラインをめぐる攻防なのだと思い起こさせてくれる点で、この場面は興味深かった。

 攻撃面でいえば、フランスの方が積極的であり、見る分には面白かった。というより、オールブラックス側は、バックスリーが強引な仕掛けをほとんど試みない、またそもそも展開プレーがあまりないなど、総じて慎重だった。そうまでして優勝したいかというような厭味はもちろんいいません。が、物足りなさを感じたのも事実。ただ、第二回大会以降のラグビー・ワールドカップとは、いってみれば〈オールブラックスがいつどのようにして足を掬われるか〉を(NZ 国民を除く?)全観客が心待ちにするイベントでもあったわけで、今回の勝利がそうした鬱陶しいプレッシャーから黒い人たちを解放することになるのであれば、わたくしは心から祝福したいと思う。
 というか、「勝つことを宿命づけられている」などという物語には飽き飽きしているので(讀賣球団ぢゃあるまいし)、今回のような苦しみながらの勝利がそうした神話を壊してくれればと願っているわけです。ちなみに開催国の優勝という点に関していうと、わたくしはむしろ、開催国がこけてしまう筋書きの方が好みだ。

 大会全体についての印象。
 好試合はもちろんいくつもあって、楽しんだのは事実だが、正直なところをいえば、やや退屈でもあった。
 ひとつにはジャパンが一勝も出来ずに終わったからだが、総じてどのチームも、だがとりわけ勝ち進むことのできたチームが、似たり寄ったりの戦術・戦法を採っていたことが大きい。たとえば梅本洋一さんが『日本ラグビー 世界への始動』所収のエッセーで指摘したような「危機」はまったく解消されていないことが改めて感じられた。
 これは今大会に限らない話だが、「ノンストップ」の「高速ラグビー」って、そんなに善いものだろうか。プレーの速度競争を突き詰めていって一体どうなるというのか。単純なスピードが脅威となるような局面は確かにある。しかし、わたくしはむしろタイミング、テンポによって敵を出し抜くというやり方に共感する。だからこそウェールズやフランスを応援するわけだが、後者は何というかグダグダのまま、しかし決勝では底力を発揮してみせたというにすぎず、評価は保留とせざるをえない。前者にも、「セクシーさ」がやや足りないという意味でやはり不満を覚えた。

 プレーそのもの、ゲームづくりそのものによって驚かせてくれるチームがなかったといってもよい。勝敗における番狂わせでは驚くこともありましたけれどね、結局のところ、前回大会におけるロス・プーマス――いわば〈新しい懐かしさ〉でわれわれに感銘を与えた素晴らしいチームだった――のようなチームが出現しなかったということになる。

 とりあえずの感想なので、後からの修正があるかもしれません。

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