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2011年10月 8日 (土)

準々決勝 アイルランド 対 ウェールズ/イングランド 対 フランス/ニュージーランド 対 アルゼンチン 

 アイルランド 対 ウェールズ 10-22(3-10) トライ数 1-3

 個人的には今までのところ最も痺れる試合となった。実力の拮抗した同士の対戦だったけれども、安全第一で PG やDG を狙うというゲームでなかったのがまずはよかったと思う。両チームの持ち味とされる特徴がそれぞれに発揮されることになったからだ。対ワラビーズ戦では 3 点の積み重ねによる辛勝もよしとしたはずのアイルランドも、今日のマッチでは積極的にトライを狙ったように見えた。しかしそれはもしかすると、開始直後のウェールズのトライ(いわゆるノーホイッスル・トライ)が、そのような方向での展開を決定づけたのかもしれない。試合最初の得点がトライであったというのは、その意味で見逃せないポイントだろう。トライこそラグビーの醍醐味だとはいわないけれど。
 もっとも、たまたまプレーが途切れることなくトライまでもって行けたからそうなったという可能性は(双方に)あるだろう。ウェールズが最初に PG を選択していればどのような展開となっただろうか。

 とにかく、違う方法でそれぞれにトライを狙った結果としては、ウェールズの 3 本に対し、アイルランドが 1 本、すなわち前者の完勝である。ただしゲームの内容に即していえば圧勝や快勝とはいえない。ブレークダウンやラインアウトなど、明らかにアイルランドが優勢な部分もあったし、敵陣 22 メートルライン内にいた時間を見ればアイルランド 15 分に対しウェールズは 6 分半と、総じてアイルランドの方がより多く攻めていたのである。実際、アイルランドのピック&ドライブは圧倒的で、ウェールズのそれとは、個々のプレーヤーの突っ込むスピードや力強さの点で、かなりの差があった。第三列ばかりではなく、全員の充実ぶりがうかがえる出来だったと思う。
 それだけに、このゲームで第一に賞賛さるべきは、ウェールズのディフェンスということになる。もちろん反則が皆無というわけではなかったが、アイルランドが PG をほとんど選択しなかった点の評価は、意見の別れるところだろう。ウェールズの防禦は堅いが(対南ア戦のように)
そのうち綻びが出るとの目算はあったかもしれない。実際、ウェールズ側のタックル・ミスは1割以下と精度こそ高かったものの、ほとんどつねに押し込まれていたし、ラックでは、より多くの人数を割かなくてはいけなかったため、応援する者としては気が気ではなかった。今大会でこれほど胸が締め付けられたことはない。

 他に気づいた点。両チームのトライがいずれもフィールドの端だった(J・デイヴィスのはやや内寄りだったが)のは、ミッドフィールドのディフェンスが双方ともに堅かったことの表れだろう。アイルランドが結局一本しかトライを奪えなかったのは、プレーヤーの力とは別次元で、無策というか、工夫が少なすぎたせいではないか。アイルランドのバックスは個々にはそれぞれ素晴らしい働きをしたものの、いわゆるライン攻撃をあまり仕掛けなかったために、防禦する側からすれば的を絞りやすかったということになると思う。反対にウェールズの攻撃は、ショートサイドをしつこく攻めたり、また内側ではロバーツを再三突っ込ませたりとバラエティに富んでいた。医学部学生でもある(あった?)ロバーツ、JPR の後を追うかのようなその経歴にも感心するが、ギャットランドがこの大型プレーヤーをバックスリーからセンターにコンバートしたのは、いわばジョナ・ロムーをミッドフィールドで起用するようなものだろう。現代のディフェンス・システムではそう簡単にラインを破れるわけではないが、少しでも薄くなれば突破されるという意味で、防御側のケア意識が中に向くといった効果は少なくとも見込める。
 またハーフペニーは、キックを受けてからのカウンターアタックは不発だったものの、ハイパントの処理やタックルなど、防禦の点では完璧だった。50m 級のプレースキックはともかくとして、われわれは有賀選手にこうしたプレーヤーになって欲しいと願ったものだが、非我の違いにはいろいろと考えさせられた。

 ジャパンは敗退したが、ウェールズがベスト 4 に進むとは!これほど喜ばしいことはない。運はもちろんあった。アイルランドの戦法はワラビーズに通用したが、この準々決勝の相手がワラビーズなら、ウェールズが勝てたかどうかわからないからだ。しかし、フロントローと 4・9・11 番以外は若いメンバーばかりで、試合ごとに力が上がっているのは間違いない。

            *

 イングランド 対 フランス 12-19(0-16) トライ数 2-2

 イングランドが展開プレー、フランスがハイパント攻撃という、双方がともに通常のイメージとは逆の入り方をした試合。必勝を期した対戦でなぜイングランドがそのような戦略を採ったのか、やや理解に苦しむところもあるけれども、フランスが真正面からは応じず、意気込み(PG を一本も狙わぬという)がいわば斜めにすかされたことで、結局中途半端な戦い方となってしまったように見えた。

 同じような高速展開といっても、フランスとイングランドとでは差があった。フランスの方はプレーヤーの動きとボールの動き(両者の合わさったものがプレー全体の運動と呼ばれるものだ)が非常に滑らかに連動していたのに対し、イングランドの展開には何処か無理をしているところがあって、あまり効果が得られなかった。習熟度も関係しているのだろうけれど、スペースの使い方がまずいと思われた。たとえばパスを受けるところで複数の選手が重なってしまっている場面がしばしば見られたが、それはどちらかのプレーヤーがスペースを殺してしまっているということであって、要するに活用できていないわけである。ウェールズがショートサイドを執拗に攻略するのと比較してみればそのことは容易に理解されるだろう。
 また、攻撃のスピードを誇るようなチームではもともとなかったが、フランス DF の出足のよさに、その速度がいっそう殺されているようにも見えた。
 ウィルコがどうこうということではなく、トライを積極的に狙うラグビーを志すならば、そのような方向でチームをきちんと鍛えた方がよいだろう。トライへの意志は明らかであって、それを抑圧する必要など少しもないのだから(だって、たかがスポーツなわけだし、ねえ)。

 というわけで、準決勝第一の組合せは、ウェールズ対フランスという、(個人的には)夢のような対戦となった。ノックアウト・ステージのフランスの戦い方には近年、どこか詐術めいたところがあり、それはちょび髭を蓄えたことでまさに絵に描いたような詐欺師然となったリエヴルモンの風貌が示すとおりだが、それがウェールズに通用するかどうか、非常に楽しみである。いずれにせよ好試合となるだろう。

            *

 ニュージーランド 対 アルゼンチン 33-10(12-7) トライ数 2-1

 ともに一本目のゲームメーカーを欠いた対戦。その分のハンディキャップは、得点方法が限定されてしまったという意味でアルゼンチンの方がより大きかったと思うが、とにかく NZ が順当に勝利した。

 オールブラックスを 2 トライに抑えた点ではプーマスは健闘したといえるだろう。実際、前半のディフェンスはタックルにせよカバーディフェンスにせよまさしく感動的だったし、先に奪ったトライには思わず涙腺が緩みもした(トライ自体がまた実に素晴らしかった)。とはいえ、一方的に攻められるなかで犯してしまった 10 の反則のうち 7 回までも PG を決められてしまったということは、黒い人たちが単に無理を避けたというだけのことで、ロス・プーマスの勝ち味は薄かったといわざるをえない。
 無理矢理というのは、たとえば
ワールドカップでいえば、前回の準々決勝対フランス戦において、意地を張るかのように、過度に時間をかけた末にようやくあげた二本目(だったかな)のトライのようなプレーを指す。今日は最後まで冷静さを失わなかった。

 敗れはしたものの(相手が悪かった!)プーマスのフィフティーンはみな、ふつうに上手いよね、ラグビーが。ボールをつなぐ技術という点にかんしては、スコットランドはもちろんのこと、アイルランドなどより上ではないだろうか。
 後半はさすがに疲れてしまい、タックルも相当甘くなったが、スコットランドやアイルランド、ウェールズという、ティア1の第二グループとは十分に伍してゆけるチームだったと思う。

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