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2015年2月

2015年2月13日 (金)

この世はすべてポジショントーク?

 統一地方選そして大阪市住民投票が迫ってきたためでしょう、「都構想」をめぐる議論が活発化してきました。直近の輿論調査(朝日新聞社・朝日放送)の結果は賛成 35%、反対 44%(朝日の調査では一年前もほぼ同様の数字でした)。

 この数日は藤井聡という、「国土強靭化」基本計画で名を馳せた京大教授が「中立の立場」から発表した「大阪都構想:知っていてほしい七つの事実」が物議を醸しています。
 「物議」というのは、発表の内容が酷いということがまずひとつ、そして橋下徹が公開討論をやろうともちかけたのに対し藤井氏が拒否したということがあったからですが、藤井教授って、そもそもは反TPPで(中野剛志らとともに)名を売ったにもかかわらず安倍内閣の内閣官房参与に就いているということからして、大規模公共事業利権のために「魂を売った」も同然の――要は土建屋ですよね(だって安倍や甘利はTPPやる気満満ですから)。つまり彼のような人物が動くということは、都構想がその理念的・理想的側面とは別に、利権をめぐる争いの場でもあるということにほかなりません。そもそもこの御仁は大阪と関係ないし。
 いや本当、政治は理屈ぢゃないんだなあと、今更ながら感慨を深くしているところです。理屈というなら、たとえば都構想の理念――橋下氏がうまく表現できずにいたところのイメージ――は次のような、大阪市出身で現在札幌市在住という一般住民の方が作成したがあります。
 都市圏人口と中心的公共団体(例えば大阪市)の人口と比率を図示したものですが、東京で三倍なのに対し、大阪は六倍弱となっている。つまり現在の行政区分に従った大阪市という枠組が経済の実態に合っていない(乖離の度合がきわめて高い)ということがわかります。大阪の都市圏人口1200万に対して行政区分に従った大阪市の人口が260万。
 いい換えれば、反対派は同構想を「大阪市廃止・解体構想」とのたまっているけれど、実態に即せば「大阪市拡大構想」ともいえるわけですね。大阪市の人口260万を都市圏人口1200万に合わせる乃至近づけるのだから。
 この図解が政治家や役人ではなく市井から提示されたことは、まさに民主主義の実践にほかなりませんが、この図に橋下市長がすぐさま反応したのに対し、平松氏や柳本市議の場合、その意味するところをそもそも理解できるのかという疑問が先に立ちます。理解したうえで(おのれに理のないことが明らかとなるがゆゑに)無視しているのか、端的に理解できないのか、前者の方がまだ救いがあるけれど、実際は(頭が悪いのだか、政治を真面目に考えていないのだか、ともかく)後者なのだろう思われます。だって、彼らは特段の理由もないままこの図でいう263万人の枠組にのみ固執しているだけなのだから。
 というか、内田樹らも含めて、ここまで高級なことは考えていないよね。行政制度にここまで高度な思想は必要ないと考えているというか。だからこそ内田氏は自身のチッターで

松本創@MatsumotohaJimu

前々からの疑問をもう一つ。「大阪府と大阪市の2つの自治体があるから二重行政の無駄が生じ、経済・財政的に疲弊した」という謎の主張を彼らはするが、神戸も京都も横浜も名古屋も、政令指定都市はみんなそうなんであって、個々の都市の経済情勢と行政機構の仕組みになんら相関が感じられない。〔Retweeted by 内田樹 retweeted at 12:46:43 2月11日〕

そういう当たり前のことをすっ飛ばして、「大阪府・市を一緒にすれば経済成長する」と素朴に信じられる理由がわからんし、そのことをちゃんと検証・指摘せず、大阪だけ特別かのように「都構想」を喧伝し続けるメディアの論理もわからない。〔Retweeted by 内田樹 retweeted at 12:47:23 2月11日〕

まあとにかく役所と役人が全部悪いことにして、「やつら」を叩いて、引き摺り下ろして、組織を解体すれば、一発逆転ホームランで輝ける未来が待っているというシンプルな夢を見たいのかもしれないけど、問題はそんなところにないし、それほどシンプルでもないから一発逆転はあり得ません。残念ながら。〔Retweeted by 内田樹 retweeted at 12:48:03 2月11日〕

というような、誠に意味のない呟きを呟き返しするわけでしょう。
 「政令指定都市はみんなそうなんであって」と、事実のようにこの御仁は仰るけれど、京都や名古屋と大阪の、それぞれの属する府県における地理上の位置を考えれば、同列には論じえないことがわかるはず。大阪府の場合、善いことなのか悪いことなのか一概にはいえないけれど、大阪市(と堺市)が中心にあって、どのみち中央集権的な体制をとらざるをえないようになっているのです。京都や愛知、そして松本氏が暮らす兵庫はそのようになってはいないでしょう? 日本海側から京都市や神戸市に毎日通勤する人がいないとすれば、京都の南半分は政令指定都市たる京都市を中心として行政を考え、同時に北半分は京都府の領分というような、役割分担が可能であるし、まただから政令指定都市ということに一定の意義が認められます。
 逆にいうと、同心円を用いた上の図解はまさに大阪にこそピタリと当てはまるわけですね。たぶん内田氏にも松本氏にもこの図解は高級すぎて理解できないと思うので、それに何より御二方とも兵庫県民であらせられるので、もう大阪のことには首を突っ込むなと強くいっておきたい。お呼びではないんですよ。
 ちなみに東京都の場合、地理的な偏りはあるけれど、人口比が七対三なので、京都や兵庫などと同列に扱うことはできない。

 大阪都構想が実現した場合、これまで大阪市が行なってきたような大規模な公共事業はすべて大阪府(大阪都?)の分担となる。それはいい換えれば、このサイトで紹介されているような無駄なハコもの行政が劇的に減少する可能性があるということです。もちろん大阪府庁の投資・都市計画が失敗する可能性は大いにある。でも今までよりはましになるでしょう。愚者一人と愚者二人ではどちらがましかという比較にすぎないけれど。
 都構想は所詮その程度のものであって(結局のところ地方政府に出来ることは限られているので)、そんなに大騒ぎするようなことでもない。柳本市議を始めとする反対派は、政治屋を続けたいなら区議選に立候補すればよろしい。差配できる予算は大幅に減ぜられるわけですが、住民の暮らしには特段の変化はないでしょう。

 たぶん都構想に対し賛成か反対かにかかわらず、われわれが考えなくてはいけないのは、そもそも何故都構想が生まれたのかという点でしょう。
 反対派は、都構想「すなわち大阪市解体」によらずとも、府市の連携・会合によって改革は可能だというわけですが、仮に維新の会が結成されていなければ、あなたたちはそもそも改革の必要性を微塵も感じなかったでしょうと、まともな(少数の)府民・市民は考えるはず。偉大な市長である關一の孫として担ぎ上げられたものの二期目にして改革の必要性を理解した關淳一市長に対し、何も見ない、何も考えない平松邦夫を擁立したのが大阪市議会・市役所であるわけでしょう。大規模公共事業の度重なる失敗。大阪自民党の幹事長、柳本顕、高名な父君である柳本卓治を父にもつ柳本氏は、卓治氏を始めとするエスタブリッシュメントの責任を問わぬままに、都構想に反対できると考えているのでしょうか。1975-90 年に大阪市議会議員だった、つまりことごとく失敗に終わった大規模公共事業の殆ど全てにかかわったと高い蓋然性をもっていうことのできる柳本卓治のような政治家を許さぬような制度が必要だと、わたくしは考えるのですが。
 

 あと、われわれは「無駄なハコもの」といったりしますが、そうした事業を請け負うデベロッパー(各種建設業者や信託銀行)にしてみれば全然無駄ではないんですよね。それどころか、飯の種である。つまり公金がそれら事業者に流れていったわけです。それでまさに飯を食う人間がいることを思えば、全否定はできないけれど、でもやりすぎでしょ、ってのがまともな住民の認識だと思うよ。これら「負の遺産」のことを忘れて都構想に反対する大阪市民は、利害関係者でなければ、そろそろ目を覚ますべきでしょう。

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