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2015年6月

2015年6月20日 (土)

大阪都構想 後日譚

 大阪都構想の(とりあえずの)廃案決定後初となる記者会見で橋下市長が「なにわの芸術応援募金」なる取組に言及している。文化・藝術分野における寄附の促進に寄すると期待される制度である。

次がですね、芸術・文化についての補助金のあり方、最後の総仕上げの所なんですが、なにわの芸術応援募金というものを開始します。

これまで文化行政の補助金の見直しをする度に、文化を破壊するとか、文化に対する理解がないとか言われてきましたけど、最終的にやりたかったことがなんとか仕上がったと、局のほうが頑張ってくれて、いわゆる寄付で文化を支えるという、本来の原理原則の形、これがやっと大阪市からできることになりました。

本当は国全体でやっていかなければいけないんですけど、行政サイドが特定の団体・芸術に対して評価をして、そこに補助金を打つという、そこに戦略性もなく、漫然と前年度の踏襲で毎年毎年決まった形で補助金を出していくというのが、これまでの文化行政の基本だったところをですね、いろんな芸術団体に公平に機会を与えて、しっかり評価をするということを基本にやっていく。

大阪市はアーツカウンシルというものを作っていますけれども、最後は寄付者の評価にゆだねるというのが一番の文化を支える本来の姿だと。もともと文化・芸術を支えるのが市民であってですね、行政が支えるっていうことをやるから、結局、お上に支えられる文化は衰退していくという歴史があるわけですからね。なるべく行政は文化を支えるというのはやらずにですね、国民の皆さんに支えてもらう、それが収益性のある事業になる芸術・文化活動であれば、それは容易にお金を集めることができるんですが、なかなかそうはいかない芸術・文化活動もあると思います。

その場合には国民のみなさん市民のみなさんにですね、税金を役所におさめるのか、その代わりに芸術文化団体にお金をわたすのかという選択を、国民・市民のみなさんに与えて選んでもらうと。

その選択を与えれば、収益性のある芸術文化事業だけしかお金が集まらないという事態は避けられるんではないかと。まあ寄付税制ですね、寄付税制の一番の領域と言いますか、効果を発揮できる領域って言うのが、まさに文化の領域ではないかと思ってます。

既存の制度を使って局と議論をしてて、新しい制度を創設したいと思ったんですが、なかなか今の日本の国の税制はですね、大枠を定めているもんですから、地方で勝手に税制を創設するのが難しいところがありまして。まあ局が知恵をしぼってくれましてね、今のふるさと寄付金を活用した形での文化寄付税制というものをなんとか作ることができました。

まずですね、この募金は大阪市のふるさと寄付金のメニューのひとつでありまして、登録された団体から応援したい団体を選ぶことができます。いただいた寄付金は登録団体の助成金として役立てます。一応ふるさと寄付金のメニューを活用しますが、寄付者の意向を最大限に尊重していくと。

 […]

登録団体は14団体になりました。音楽、演劇、文楽、法楽、落語。ということで、こういう団体が登録されました。大阪市内に主たる事務所を構えているということが前提となっていますので、今回の大阪市の税制ではセンチュリーは入っていません。

センチュリー交響楽団が豊中市なので。だから、同じようなことを大阪市でやってもらえれば、センチュリーの方に行くと。大阪フィルハーモニーとか、関西フィルハーモニーですか。文楽協会も入って、人形浄瑠璃文学座も入っていると。

それから能も入って、落語も入っていると。今回こういう形で、寄付が集まるようにしましたので。固定資産の減税とか、なにか特定団体の方に税金が免除されるようなことは、基本的にはなしにすると。

あとは、それぞれの団体が頑張ってPRしてもらって。おそらく集まってくると思います。税金払うくらいだったら、この団体に寄付したいと思う人、たくさんいると思いますし。

これ、別に大阪市民だけではなくて、全国民が自分の自治体に税金払うくらいだったら、こっちの方に払いたいということができる仕組みになってますので、全国から(寄付が)集まるんじゃないかなって思ってます。

とくに文楽協会はメディアがさんざん、僕の方に補助金出せ出せ出せ出せと。新聞やテレビ、みんな言ってたわけですけど。全社員きちっと文楽協会の方に寄付してもらえれば、大阪市が補助金出す以上のお金がしっかりと集まると思いますから。

関西の民放各社と、新聞社、全社員が文楽協会にきちっと。大阪市に税金納めてくれなくても結構ですので、皆さんが住んでいる自治体に税金を納めるかわりに文楽協会の方に払ってくれればいいんじゃないかと思ってます。

ふるさと寄付金は控除が拡大になりましたので、 […]。

皆さん、10万円ぐらい寄付してください。ここにいる人が10万円寄付したら、それだけで500万円ぐらいなるんで。10万円寄付して、年収700万。たぶん(記者の)皆さん、700万以上絶対あるでしょうからね。7万8500円、これが税金控除と。まぁ、1万2000円、1万1500円くらいは文楽を守るためにはそれぐらいはやってもらわないと。

各新聞社の役員には必ず言っておいてください。テレビ局の役員とか、100万くらい寄付してくれれば、あっと言う間に、団体運営補助の4000万円くらいわっと集まるので。これ、誰からが寄付したことってわかるんでしたっけ? 大阪市のほうに。

職員:名前のほうは公表する予定です。

橋下:名前を公表する予定。これは、来年メディアの社長メンバーが出てなかったらおかしいということが言えますんで。各新聞、テレビが、あれだけ文楽の補助金について言ったんで。社名とか出せないんですか? 調べられないんですか? でも、名前は公表するんですよね。でも、同意があった場合だけですよね?

職員:そうですね。

橋下:それは、メディアのほうが同意しないわけがないでしょうからね。楽しみにしてます。これ、いつ公表するんですか?

職員:取りまとめが11月になっておりますんで、それ以降でまとまり次第ということで。

橋下:僕の任期中に公表しましょう。

(会場笑)

橋下:楽しみです。あれだけ、新聞、テレビ、役員が寄付してくれるか。大阪フィルの方もどんどん寄付してください。大阪フィルと文楽協会。助成金削減した言うて、わんやわんや言われて。能楽とか、演劇も、落語もね。ともかくね、税金払うのか、文化団体に寄付するのか、一回大阪市内の方で調整したいと思ってます。

記者:読売新聞の○○です。なにわの芸術応援募金についてなんですけど、知事時代から芸術分野に対する公金支出のあり方を改革してこられたと思うんですけど、センチュリーなんか知事時代にいろいろあったんですけれども、今回は大阪市内を活動拠点とする団体が対象とのことなんですけれども、知事との間で府市連携の拡充みたいな話は進められているんでしょうか?

橋下:まだ話ししてませんね。ただ、僕らが言わなくても大阪市がこういうことやれば、府のほうで同じようなこと考えてくれれば、やれるはずですから。大阪府でもやってくれればいいと思うんですけれどね。

記者:対象分野とか対象の団体はどういう基準で決まったのですか?

橋下:いろんなものが入ってくると不正もありえるので、いわゆる脱税とかそういうことにもなり得るので、まず一般社団法人は基本的に入れない。公益社団法人か公益財団法人。特定非営利活動法人は審査が必要で、通常のNPOでは駄目。

職員:特定非営利法活動促進法で定められた特定非営利法人のみを対象にするということで。

橋下:一般のNPOじゃなくて、一定の審査が必要な団体で、あとは活動分野を扱う手法でみてもらうという仕組みでやっています。

記者:これまで行政が公金を支出してきたメリットというところでいうと、使途を明確にしてもらうっていうところである種管理できることだと思うのですが、寄付に変わるということで行政の監視が届かないという可能性があるのでは?

橋下:そのほうがいいと思いますよ。寄付なんですから。ただ……運営には使えないんでしたっけ?

職員:運営には使っていただけますが、税金などの使えないものは定めています。

橋下:この場合には税金で補助する場合には団体運営補助は駄目だよといっているんですが、寄付の場合は運営の人件費とかでもいい。税金の支払いとかいくつか駄目なやつが……。

職員:たとえば原価償却費でありますとか、食糧費でありますとか、交際費でありますとか、そういうものには使っていただけないと。逆にいま市長がおっしゃられましたように、今なにか事業をやられる経費や、それに関わる管理費については充当していただいて結構であるとしています。

橋下:だからできるかぎり自由にしていいんじゃないですかね。寄付者が寄付するわけですからね。それで評価というものが入るので、各団体も漫然と活動しても寄付者から評価を受けませんからね。しっかり寄付者の寄付の意志を湧き起こさせるような活動をやってもらいたいと思います。

 文楽協会その他への寄附については既に私見を述べたので繰りかえしませんけれど、政治家が仕事をするというのはまさしくこういうことなのだと、改めて感じました。

 それに引き換え、大阪自民は、「都構想によらずとも改革はできる」とテレビ討論でいった(いうことを余儀なくされた)その舌の根も乾かぬうちに、何をやっているのか――というか、正確には〈何もしない〉をやっている。
 「ヘイトスピーチ規制条例」(参考:大阪市人権施策推進審議会)なんか、さっさと施行しろよ。反対派の(言論の自由をめぐる)危惧はもちろん理解できますが、試験的に、ということは例えば期間を限定するなどしてとりあえずやってみればよいのでは? たぶん色々難点が出てくるでしょうが、そこからの修正や摺り合わせが大事なのではないかと愚考します。
 もっとも、「ヘイトスピーチ」といういい方には個人的には反対というか、例えば「憎悪表現」では駄目なのか等々思うけれど。でもまあ「マイナンバー」の醜悪さよりは大分ましか。醜悪というのは、たとえば「あなたのマイナンバーは?」みたいな文章が罷り通ってしまうということですね。こういう事例に接するたび、わたくしは日本(語)なんか今日明日にでも亡びてしまへと思います、政府広報に起用されたタレントの無意味で貧相な笑顔にもげんなりしつつ。

 それはそうと、都構想廃案以後も、というより決着が(とりあえず)着いたことを承けて、さまざまな論者が考察(チッター等より長めのやつ)を発表しています。
 

 ・藤井建夫「民主主義はそんなに「すばらしい政治体制」なのか?――大阪都構想をめぐる住民投票から考える直接民主制の問題
 ・田中康夫「ONE OSAKA“府市合わせ”構想
 ・上久保誠人「大阪の問題解決はこれからだ都構想反対派も責任を持って対案を示すべき
 ・品田裕「大阪都構想の否決は高齢者のせい? 選挙における世代間対立をどうみるか
 ・内田樹「朝日新聞への寄稿
 ・宇佐美典也「大阪都構想について今更ながら考える

 藤井建夫「民主主義はそんなに「すばらしい政治体制」なのか?

 なぜ今頃「民主主義はベストではなくベター云々」を蒸し返すのかと思ったら、要は橋下が、「大阪市における特別区設置案」廃案決定を承けた記者会見で「民主主義は素晴らしい」みたいなことを述べたのに対する意見なのですね。
 
 まずこの藤井さん(どういう方が全く存じ上げないけれど大学教員ということらしい)に望むのは、文脈を読もう!ということです。つまり橋下は原理的に民主主義の利点を再確認したのではなく、タウンミーティングなどで「納税者を舐めた連中を叩き潰す」と明言したにもかかわらず「命まではとられずに済んだ」、その点を強調しようとしただけでしょう? そのような文脈を踏まえるなら、カール・シュミットの引用は端的にありえない。シュミットに、またシュミットにのみ依拠する根拠・必然性を明示しなければ、読者は「この人はただ単にシュミットを引用してみたかっただけやろ?(気持はわからぬでもないけど)」といいたくなります。

 田中康夫「ONE OSAKA“府市合わせ”構想

 国政におけるわたくしの支持政党は第一に新党日本です(でした)。その点は何度か触れたと思います。今もそのつもりではいるのですが、所属議員が零という状況では意味がありません。したがって、行政改革の必要性(例えばそしてとりわけ政府の外郭団体の整理の必要性)を公約としている維新の党が実質的には唯一の支持政党ということになります。とりあえずのと、急いでつけ加えなくてはいけませんが、というのは本来相容れぬはずの民主党と合併でもしてしまえば、支持する理由はもはや失われてしまうからです。
 そのようなわけで、新党日本を確かに支持してはいたのですが、田中康夫はアメリカとの関係については、具体的にはほとんど発言してきませんでした。たぶんそれは、誰が首相になろうと、あるいはまたどの政党が政権を掌握しようと、その一存では変えられないことが明らかだからでしょう(その意味で鳩山由紀夫は空前絶後の逸材でした)。
 田中康夫のこのたびの寄稿、気持はわかるが、あなたは大阪の事を何も知らないと、申し上げなくてはなりません(確認しておけば、大阪市の人口だけですでに長野県のそれを上回っているわけですから)。

 (未了)

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