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2015年9月

2015年9月21日 (月)

南アフリカ 対 日本(B)

 南アフリカ 対 日本 32-34(12-10) トライ数 4-3 公式統計

 「異論はありうるだろうが」(arguably)ラグビー・ワールドカップ史上、そしてさらにはラグビー・ユニオン史上最大の番狂わせ――という表現、これは確かに試合の痛快な一面を扇情的にいい表したものではあるけれど、反面、日本チームがそれほどまでに弱いと見なされていたということでもあるわけで、どちらかといえば不名誉なことなのかもしれない。
 これまでW杯史上最大の番狂わせといえば、1999年大会準決勝のフランス対ニュージーランド戦だった。しかしフランス(およびイングランド)はそもそも南半球三ヶ国に実力で伍することのできる、つまりまぐれでなく勝つことのできるチームなので、同列には論じられないはず。

 というわけで、この試合結果が日本の実力を反映したものかどうかは、少なくとも今大会のこれからの結果、もっといえば次の大会(日本で開催される)での戦い方如何にかかっている。まあ、数年に一度、気紛れのように番狂わせなり「ジャイアント・キリング」なりを仕出かすチームというキャラクターも悪くはないけれど!

 それはそれとして確かなのは、われわれはもはや日本代表の過去の「善戦」に言及する必要が――個々の素晴らしいプレーは別だが――なくなったということである。

 素晴らしいプレーはこの試合でももちろん披露された。例えば残り10分少々、南ア陣22m付近からの右オープンのサイン・ムーブがそうだ。SH 田中→インサイドCTB立川→FH小野という変則的なパスに続き、小野の背後に忍んでいた左WTB松島へのリターン・パス。これは個人的な記憶では例えば2007年大会でワラビーズにやられたもので、ラーカムと相対していたFL佐々木が対応しきれずトライにまでつながったプレーである(まあこれ以外にも山ほどトライを献上したのですが)。今回の日本のムーブでは、相手CTBの世界的名選手デヴィリアスが小野につられて全く対処できなかった。これほど痛快な出来事もない。身体の重心を外に移しながら内側にパスをした小野の技倆に目が覚めるというか、すでにとどまるところを知らなかったわたくしの涙と洟がいっそうひどくなったのでした。

 そういえばわたくしは前半30分くらいのドライビング・モール(英語ではrolling maulというようです)によるトライ辺りからずっと洟を啜りながら泣いていたのだった。日本の――というか弱い方のチームの――モール・トライはだいたいにおいて感動的なのだが、この日はとりわけ、小野や立川らバックスが駆け付けて押し比べに参加したところで涙腺が突発的に開いたと思う。
 観客を味方につけ、南アフィフティーンから冷静さを奪うところまで計算されていたとすれば(むろんそこまで計算づくだったと思うが)、エディ・ジョーンズ氏は本当に凄い、というか凄かった。なぜこのような人を手放すのかといえばそれは、ひとえに日本協会幹部が揃いも揃って馬鹿だからである。先般の新国立競技場騒動で世間を呆れさせた河野一郎のごとき下種野郎に長らく牛耳られていた組織ゆゑ仕方のないことではあるものの、もう何というか、岩渕健輔くんに早く偉くなってもらうほかない。
 近頃話題の清宮父氏はこの試合を見て、たいそう技癢を感じたことだろう。もちろん彼にはそれなりの(周到に用意された)「番狂わせ」の実績があるわけだが、FWコーチのマルク・ダル・マゾもEJとともに去ってしまうわけで、日本選手権のようには行かない可能性がある。それでも薫田某よりはだいぶましと思うけれど。

 選手全員が最善を尽くしたことにはただ賛辞を贈るのみだが、個人的には立川の復調が嬉しかった。以前にも書いたことがあるけれど、日本のバックスは立川が自らゲインしなければ苦しくなるので、今日の彼のプレーは非常に効果的だった。もしかするとこの水準のゲームではCTBの方が向いているのかもしれないね。それは次のスコットランド戦ではっきりするはず。

 プレーとは直接の関連はないけれど、ヴィクター・マットフィールドの諦念を翳された表情も印象に残った。

 このゲームをスタジアムで観た人は本当に幸運だと思う。
 

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2015年9月19日 (土)

イングランド 対 フィジー(A)

 イングランド 対 フィジー 35-11(18-8) トライ数 4-1

 ワールドカップの開幕戦では開催国(正確には協会)チームが同じプールの中堅チームと相見えることになっている。中堅チームとはここでは、例えば1999年、2003年ならびに2007年の大会でウェールズ、オーストラリアそしてフランスと対戦したアルゼンチンのように、強すぎも弱すぎもしない、つまり試合をぶち壊すことなく、しかし開催国の面子をつぶすこともないと想定される、或る意味で「都合のよい」チームの謂いである('95年の南ア対豪州という取り合わせもありましたが!)。
 もっとも、アルゼンチン協会代表チームは2007年大会で痛快なことに開催国フランスの面子を二度にわたって踏みにじるという狼藉を働くことで、関係者各位を大いに見返すこととなった。ロス・プーマスが今やトップ8の一角を揺るぎのない仕方で占めていることは皆が知るとおりで、われらが日本協会代表も、せめて「そこそこ強い嚙ませ犬」くらゐの地位が与えられるよう頑張ってほしいものである。

 さて、今大会の「嚙ませ犬」はフィジー代表。愛称は知らないが、エンブレムは椰子の木。他とは異質なラグビーで知られていたものの、近年はその象徴を返上しなくてはいけないほど「グローバル・スタンダード」の波に洗われているチームである。
 試合としては、どうせイングランドが勝つんだろうと高を括っていたこともあって、予想外の展開にかなり引き込まれた。フィジーはもう少し上手くやれたのではないかと悔やまれる。
 フィジー代表についてはいろいろ思うところあって、ああそういえば四年前にはどんなことを書いたんだったかと振り返ってみれば、こんな感じでした。

2011年10月 2日 (日) ウェールズ 対 フィジー プール D

 ウェールズ 対 フィジー 66-0(31-0) トライ数 9-0

 試合前からウェールズのノックアウト・ステージ進出がほぼ確定しており、今日の興味の焦点は How much are they going to play rugby? ということに尽きる。この場合の to play rugby とはもちろん、競技としてのラグビーをするということではなく、パス・プレーをするという意味になる。
 ウェールズのゲームがそうなるだろうことは想像できたが(負傷も避けなくてはいけないわけだし)、わたくしの個人的関心は、いわゆるフィジアン・マジックの復活とまではいかなくとも、少なくともフィジーが対南ア戦や対サモア戦のようなクラッシュ一辺倒の戦い方ではなく、奔放なパス・プレーを復活させることができるかという点にあった。つまりウェールズの「プレー」ぶりに触発されて、抑圧したはずの欲望を解き放つのではないかと期待しているのである。降雨などこの際関係ない。[…]。
 前半が終わった時点でウェールズが 4 トライを奪って 31-0。やる気どころか、もしかするとやる意味さえ見い出せていないのかもしれぬフィジアンをウェールズが無慈悲に――細かいミスも少なくはないが――攻め立てた。この調子で試合が終わってしまうと、ずっと瀕死状態にあったひとつのスタイルが(とりあえずは)死に絶えるという意味で、世界ラグビーの大きな損失が最終的に計上されてしまうことにもなりかねない。フィジアン・スタイルの壊滅とは、日本のラグビー――横井章氏のブログやまた『日本ラグビー 世界への始動』(日本ラグビー狂会編著、双葉社、2009)所収の同氏インタビューなど参照――の長期低迷に匹敵するくらいの出来事なのであって、憂慮する人も決して少なくないと思う。
 1999年大会だったか、フィジー相手に苦しんだフランスが FW 戦を挑んで彼らのスタイルを抑圧し、何とか勝利するということがあった。前回大会でもウェールズが同様にスクラムでねじ伏せようとしたものの力足らずで跳ね返された試合はまだ記憶に新しいと思うが、今回のレッドドラゴンは、その時より力がずっと上だし、今日は勝敗に拘る必要もないので、抑圧的とはなるまいとわたくしは踏んでいる。

 話を今大会に限定すると、フィジーのゲームがまったくつまらないのは、パス・プレーがほとんどないという以前に、何をするにもテンポが一様だからである。たとえばウェールズなら、今日の前半、ショートサイドを攻めたロバーツのトライがそうであるように、パスの長さやタイミングを変えることでプレーを変調させることができるだろう。それはつまりあれほどの狭いスペースを実質的に拡張できるということにほかならない。超ロングパスや、フィールドの端から端までのキックパスも同じことで、詰まってしまったところに突如、物理的・地理的に隔絶したはずのスペースがつながってしまう点が素晴らしいわけである。ガンガン身体を当ててゆくのも悪くはないけれど、そればかりでは退屈してしまう。だから、

 ……フィジー不発。ガッカリです。

 

 一読して半分くらゐは賛成できるかなあ――いや、観方としては今も大差ないけれど、結局のところは日本代表同様に、個性の出にくいセットプレーの整備から再出発するしかないのだなという、諦念にも似た、しかし肯定的な感慨を抱いた。
 以下、雑駁な感想などを列挙する。

 
 ・双方ともハンドリング・エラーが多かったが、これは雨もあり、また開幕戦ということもあって、仕方あるまい。
 ・ゲーム内容も天候に応じたもので、両チームともに大した特色は出さなかった。
 ・フィジーの敗因の第一はプレースキックの不調。
 
 
 
 ・フィジーは足技に秀でている。(フランスやアルゼンチンもそう。)
 ・イングランドのバックスはパスがそこそこ巧いけれど、ラインが浅い、つまりパスを受けてから駆け出すために、数的優位にあるか、もしくはミスマッチが生じていないかぎり、トライに結びつけるのは難しいだろう。
 ・イングランドは傑出した才能は見当たらないが、いずれの選手も計算の立つ好選手と思われた。手堅い選手選考といえる。しかし準決勝進出がせいぜいのところで(プール・ステージを二位で通過すると準々決勝の相手は南アフリカとなる)、優勝は無理だろう。

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