カテゴリー「ラグビー」の記事

2016年6月18日 (土)

日本 対 スコットランド 其之一(六月のテストマッチ・シリーズ)

 日本 対 スコットランド 13-26 (トライ数 1-2)

 日本代表がウェールズ代表に初めて勝った試合から三年。あの時は一本目半、どころか下手すると二本目でしかないレッドドラゴンに対する勝利に歓喜の声をあげたのだが、現在のブレイブ・ブロッサムズが置かれた状況はその頃とはまるで違ったものになっている。

 要するに、昨秋の対スプリングボクス戦勝利の興奮冷めやらぬなか――そうですとも、わたくしは今だに涙と洟なしにあの試合を観ることができないんです――、悪くとも「善戦」(つまりは惜敗)、ということはすなわち実質的に「雪辱」の勝利を日本協会代表チームは期待されていたからである。
 ただし、こうしたテスト・シリーズでは最終戦が本番ということに一応なっていて、だからこの日行われた第一戦は双方にとって半ば予備戦的な位置づけではあった。
 ワールドカップ準々決勝でワラビーズに惜敗し、また今春のシックスネーションズではフランスを十数年ぶりに破ったチームとほとんど変わらぬ「ガチ」のメンバーを組んでくれたスコットランド協会には本当に感謝しなくてはいけないけれど、対する日本チームはといえば、例の南ア戦のそれと比較すれば顔ぶれ・コンディションを合わせて三割から四割くらい力の落ちた条件で試合に臨むことになった――というよりむしろ、これまでの積み重ねが残されているかどうか判らない新チームと称すべきかもしれない。とするなら、敗れたとはいえこの点差(オールブラックス対スコットランドないしウェールズ戦を考えてみればよい)に収まったこと、また戦い方によってはあるいは勝利も不可能ではなかったことには素直に喜ばなくてはならないのだろう。

 ラグビーは野球などとは異なって本当の意味におけるチーム・スポーツだと思うがそれでもたいていの場合、選手個々の力量が点差に如実に映し出されてしまう残酷な面があることも否定できない。キャップ数がそれなりにあるメンバーについていくつか感想を記すなら、10番田村クンはゴール・キッカーとしては申し分ない出来でしたが、攻撃の起点としては「無難」以上とはいえなかった。9番や12番との連係、サイン・ムーブはそれこそチームとしての戦略そして戦術にかかわるものだから現段階では仕方ないとしても、もっと自分から仕掛けないと、12番の負担が多くなりすぎてしまうのではないか。
 その12番の立川クンは、10番として出場した三年前の対ウェールズ戦で既に厳しいマークを受けていたわけだが、この試合でもエイトのマフィとともにマークの主たる対象となっていた。それでも攻守にわたって立派なパフォーマンスを披露できるのだから大したものだ。ジャパンの12番がフィジカリティで互角に渡り合える日が来るとは、素直に感動しないわけにはいかない。われわれは少なくとも、パスは上手かったけど接触局面では必ず腰の引けていた平尾誠二とパスの巧さも身体の強さも中途半端なままキャップだけ無駄に増やした元木某のことは忘れてよいのではないだろうか。
 9番の内田クンはこの水準では厳しいなー。表情が無駄に偉そうという点は措くとしても、まずラックへの寄りが遅いよ。スクラムハーフの仕事はまず、ラックに誰より早く、可能ならばラックが形成されるより前に寄ることではなかったか? だというのにこの人は「余裕をこいて」挙句にボールを奪われているのだから。日和佐クンにもそういう傾向があってわたくしは全然評価できなかったのだが、ワールドカップではその悪しき癖が解消されていましたね。田中クンや茂野クンが出られないとすれば日和佐クンを選ぶべきでしょう。レフェリーが笛を吹く前にラックから強引に球を出してしまえばいいのに、一体何度奪われているんだという話です。内田選手はテンポもよくないね。わたくしは単純なスピード信仰をもってはいないけれど、テンポそしてタイミングはやはり重要だと思う。そして最後にやはり判断。対カナダ戦やこの試合で茂野クンの代わりに内田クンがトライの起点になれたかというと、残念ながら否といわざるをえません。他に人がいないのかな。

 この試合の個人的ハイライトは後半20分のスクラムでした。どう見てもスコットランド贔屓のレフェリー(NZ協会)の判断の誤りを実力で証明して見せたフロント・ロー、とりわけ一番の稲垣クンの頑張りには胸が熱くなりました。ボールがよく動くラグビーもよいけれど、双方一歩も引かぬ、ほとんど静止したかに見えるスクラムがえんえん続くのもわたくしは好きなのです。

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2013年6月15日 (土)

ウェールズに勝った日

 これがモノホンのウェールズ協会代表でないこと、つまり2011年ワールドカップ四位のチームを母体とし、今年のシックスネーションズを制したレッドドラゴンの一本目でないことは、ラグビー・ファンなら誰でも知っている。はるばるファー・イーストの島国を訪ねてくれた若い選手たち――ありがとう、そしてお気の毒さま!――にはこんな高温多湿の中でプレーした経験がない点も承知している。それでもやはりこれは正式なテストマッチであって、日本協会代表が勝利したということは歴史的事実としてたぶん永遠に残る。誠に晴れがましい慶事である。

 冷静にゲームを振り返れば、ウェールズが大外までボールをほとんど動かさなかったことで日本は助かった。第二テストでの失トライはまさにそのようにして外側にミスマッチを作られたことによるわけだが、逆にいうとあれ一本だけというのは、幸運ともいえるし、ウェールズ側が日本を見くびって、外に振らなくとも内側で簡単に崩せると考えていたからともいえるだろう。対策は他に、SH田中はおそらく止められないから、せめてSO立川は抑えようというくらいではなかったか。日本側のアタックとしては、立川のところでラインブレークできれば非常に有利になるのだけどね。それはさすがにさせてもらえなかったということ。

 WTB福岡にトライを取らせるような形にはならなかったが、大畑をたぶん超える俊足と、同じ年代の大畑より高いように見える守備意識は、新たなエースの誕生を予感させた。怪我にだけはくれぐれも気を付けて2015年、そしてもちろん2019年のワールドカップで活躍してください。

 二番手SHの日和佐は、ブレークダウンでボールから目を離す場面が二、三あり、失ターンオーバーの原因となっていた。能力は高いはずだが、これではちょっと任せられないな。ヘッドコーチがおそらくは指摘しているのだろうけど。

 このテストマッチ、梅本洋一さんはどうコメントするかなと、自然にnobodyのサイトにアクセスしようとして、ああ、梅本先生は鬼籍に入られた――まだ信じられないけれど――のだったと、思い返した。ちょっと泣けてくるけど、先生、ついに勝ちましたよ。

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 そういう慶ばしい日に見たテレビ番組「たかじんNOマネー」では橋下徹が例の発言に関し弁明を行なっていた。
 率直なところ、彼の発言の何が問題なのか、わたくしにはわからない。

 ・本当にそういうことがあったのならきちんと片をつけていつまでも――千年とかいってますが――ゴチャゴチャ言わせぬようにしようということ、そして
 ・敗戦国だからといって日本のことをあれこれ責めるけれど、韓国は例えばベトナムでひどいことをしたよねと、イギリスも数多い中の一例としてインドでひどいことをやったよね、フランスも、オランダも、中国も、そしてもちろんアメリカも、かつて日本やベトナムその他でひどいこと、本当にひどいことをしでかしたわけだし、今も世界のどこかでやっているよねと、反論しようということ、

これが骨子だと思うけれど、何処におかしな点があるのか。

 ああ、ひとつ問題点を挙げるなら、誰かの悪意によって「従軍慰安婦」がいつの間にやら sex slaves と「翻訳」され、それが定着しつつあるらしいので、そうすると正しいことを言っているのに、その sex slaves という言葉だけが取沙汰されて益々日本の立場が悪くなってしまいかねないということはあるだろう。これって、翻訳研究とか地域文化研究とかの重要な主題になるんぢゃないのかな。
 (一般には、戸塚悦朗なる弁護士が国連人権委においてそのような方向付けを行なったことになっている。1992年のことであると。二十年かけて定着してしまった誤訳をひっくり返すのは容易ではないけれど。)

 番組では大谷やら須田やら飯田橋やらが揚げ足取りに終始していたけれど、いったい君たちは何処の国の人なの?
 反体制というのは、まあたぶん社会には必要。だけど、「体制に対する批判・監視」と称して、大多数のマスメディアや「良識派」文化人・コメンテーターが打ち出す主張が、中国政府や韓国政府の主張にどうにもこうにも沿った形で展開されるのは何故かしら? ああいった連中は、それぞれの国における体制そのものでしょうが。
 そういう「良識派」とやらは、ふつうの言葉では売国奴というのだけど、あるいはもっと穏健に、中国や韓国のロビイストのエージェントでも構わぬけれども、いずれにせよわかってないのかな。本当の左翼、本当の反体制(そのようなものがあるとしての話だが)とは、外国の反体制派と連帯し、共同戦線を張るものだということが。だいたい、右翼だの左翼だのいわれるけれど、語源に遡れば、いずれ革命政府内での分類なのだから、日本のメディアは全然違いますよね。
 真の左翼とは、地球規模の反体制であるイランとの連帯をたとえば模索するものだ。

 共産党や公明党は、党組織、党の運営はまともに見えるが、与党としては好ましくない。自民党はとにかく景気をよくしてくれたらよいのだが、どうせアメリカには何もいえまいし(というか自民も別方向での売国奴だよね)、ワタミの社長を候補に立てるようなセンスには辟易せざるをえない(福島の原発の問題を放置した安倍の過失は問われぬまま終わるのか?)。民主党や社民党は次の選挙で潔く無と化してほしい。中韓ロビイストのエージェントみたいな政党は要らん。維新は維新で「燃える闘魂」(だったっけ?)を担いじゃって、また北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国にでも派遣するのか?――せっかくウェールズに勝った記念すべき日に、「戦争に負けるとはこういうことか」と改めて思わされるなんて!

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2012年1月 8日 (日)

第 48 回大学選手権決勝

 帝京対天理 15-12(12-7) トライ数 2-2

 体格で劣るチームが如何に戦うかという観点からすれば、今回の決勝戦は非常に興味深かった。ここ数年で随一とさえいえるかもしれない。比較対象として――まあわざわざ別のチームと対照させる必要はないという意見はありうる――思い出されるのは、かつての早明戦ではなく、1992 年度大会で優勝した法政だろう。競技のオープン化以前のことゆゑ、今にして思えば牧歌的というか、さまざまな点で異なっていたけれども、軽量だが機動力にすぐれ、よく働くフォワーヅと、決定力のあるバックスから成るチームとしてある程度まで似ているといえるのではないだろうか。
 もちろん、あの時の法政はのちの代表(坂田、伊藤、苑田、秋山)やそれに次ぐクラスのプレーヤー(中瀬とか)を多数擁していたわけで、チーム総合力の純粋な比較というのはあまり意味がないけれど、それでもこうした、やや偏頗な見方が成立するとすればそれは、ただ大学間の試合というにとどまらず、ジャパンの戦い方とどこかでつながっている、あるいはつながっていて欲しいと思わせるところがあるからだろう。
 事実、1992 年当時にテレビの解説をしていた小藪氏は、その後ジャパンの監督となってから、たとえば法政 FW 第一列を起用するなどしていたはずだ(A 代表だったかしら?)。法政のゲームに感心し、しかしそこから何かを学んで代表チームに応用するのではなく、たんにその選手をちょっと使ってみただけというところに、同氏の監督としての浅はかさが表れていると思うし、それが 95 年のワールドカップの惨劇につながったのは間違いないところだが。
 それはともかくとして、法政はバックスのラインを深く敷いていたから、その点では横井章氏の説く方法とも、そして天理のやり方とも異なっていたが、スペースのない状態で攻めることが求められる現代のラグビーに有効なのは、もちろん浅いラインである(もっとも、準決勝の対関東学院戦では立川は飛ばしパスを多用していた)。

 ボールおよび地域支配率で圧倒された天理はよくやったと思う。というか、勝ってもおかしくなかっただけに、プレーヤーも、そして監督も(監督としては)初めての決勝ということもあり、勝ち方、勝ち試合の締め方に甘さがあった点、大いに悔やまれる。
 具体的な敗因としては、ボールを大部分支配されるとう前提でマッチに臨んでいたとすれば、ラインアウトのミスと、ハンドリングエラーということになる。またボール支配率で五分を見込んでいたとすれば、戦略の間違いということになるだろう。
 また、ラック周辺での反則(たとえば横から入るなど)の多さは気になった。レフリーの見逃し・見落としに救われたという面が多分にあって(帝京にも同じことが幾分かいえるけれど)、プレーの質自体がもたらす緊張感は、僅差の勝負にもかかわらず、あまりなかったように思う。

 帝京はディフェンスがやはりうまかった。ボールが取れないこともあって、天理の CTB コンビが辛抱しきれずに強引なクラッシュを仕掛けてしまう場面が目に付いた。天理のフロントスリーは準決勝ではパスのタイミングや受け手の走り込む角度の工夫によって面白いようにラインを突破していたが、今日はブレークできたのはほんの数回だったと思う。それは要するに、帝京のライン DF がバイフとハベアをよく封じたということだろう。クリエイティブという感じはほとんどないが、帝京が総合的に一番強かったのは間違いない。

 手放しで天理を称賛するというのではないけれども、この日のゲームをもう一度ゆっくりと見返していろいろ分析してみたいという気になったし、また例えば早稲田や筑波とのゲームがどのようになるかという夢想に誘われもした。
 立川選手はきちんと育てれば 2019 年の SO になるかもしれない。 早稲田出身の好プレーヤーたちが上手い具合に伸びずに終わるのをわれわれは歯痒い気持で見てきたが、その二の舞にはならぬよう祈るばかりです。

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2011年10月23日 (日)

決勝 フランス 対 ニュージーランド

 フランス 対 ニュージーランド 7-8(0-5) トライ数 1-1

 よい試合だった。決勝ということ、さらにおそらくフランスの防禦が堅いこともあって、オールブラックスがあまり無理をしなかったため両チームの得点は伸びなかったものの、高く張りつめた緊張感が最後まで持続した、今大会における最高のゲームのひとつといってよいだろう。

 フランスはおそらくプランに近い試合運びが少なくとも 70 分過ぎ辺りまでは出来ていたと思う。攻撃では積極的にパスプレーも試みたが、パスのタイミング(タックルされる寸前でのパスが何度通ったことか!)、つなぎ、いずれも彼らとしては最高の出来だった。それでも完全なブレークがほとんどなく、ニュージーランド側の守備力の高さに改めて感嘆させられた(ついでながら、ラックの局面でオールブラックスがほとんど反則を犯さない点は素晴らしかった)。ノータッチの長いキックや、プレッシャーをかけられないタイミングでの不用意なボックスキックが少なかったのは、もちろん相手のカウンターを封ずるためだろうが、要するに考えうるさまざまな局面でのケアが今日の試合では最高度に発揮されていたわけである。
 ほぼ唯一の油断が、トライを奪われた自陣ゴール前のNZ ボール・ラインアウトで、よくあるサインプレーなのだが、今日は、好調を維持し、自信もあったのだろう(実際スチールに何度か成功した)アリノルドキやボネールらがラインアウトで競りに行ったことで、ちょうどラインが割れ――つまり「ブレーク」して――大きな穴ができてしまった。ちなみにウェールズもこのサインプレーはよく用いていたのだが、警戒されるようになって今大会ではほとんどやらなかったと思う。まさかオールブラックスがここでやってくるとは思わなかったのだろうが、ちょっと真正直にやり過ぎたのが惜しまれる。いずれにせよ、ラインアウトもまたラインをめぐる攻防なのだと思い起こさせてくれる点で、この場面は興味深かった。

 攻撃面でいえば、フランスの方が積極的であり、見る分には面白かった。というより、オールブラックス側は、バックスリーが強引な仕掛けをほとんど試みない、またそもそも展開プレーがあまりないなど、総じて慎重だった。そうまでして優勝したいかというような厭味はもちろんいいません。が、物足りなさを感じたのも事実。ただ、第二回大会以降のラグビー・ワールドカップとは、いってみれば〈オールブラックスがいつどのようにして足を掬われるか〉を(NZ 国民を除く?)全観客が心待ちにするイベントでもあったわけで、今回の勝利がそうした鬱陶しいプレッシャーから黒い人たちを解放することになるのであれば、わたくしは心から祝福したいと思う。
 というか、「勝つことを宿命づけられている」などという物語には飽き飽きしているので(讀賣球団ぢゃあるまいし)、今回のような苦しみながらの勝利がそうした神話を壊してくれればと願っているわけです。ちなみに開催国の優勝という点に関していうと、わたくしはむしろ、開催国がこけてしまう筋書きの方が好みだ。

 大会全体についての印象。
 好試合はもちろんいくつもあって、楽しんだのは事実だが、正直なところをいえば、やや退屈でもあった。
 ひとつにはジャパンが一勝も出来ずに終わったからだが、総じてどのチームも、だがとりわけ勝ち進むことのできたチームが、似たり寄ったりの戦術・戦法を採っていたことが大きい。たとえば梅本洋一さんが『日本ラグビー 世界への始動』所収のエッセーで指摘したような「危機」はまったく解消されていないことが改めて感じられた。
 これは今大会に限らない話だが、「ノンストップ」の「高速ラグビー」って、そんなに善いものだろうか。プレーの速度競争を突き詰めていって一体どうなるというのか。単純なスピードが脅威となるような局面は確かにある。しかし、わたくしはむしろタイミング、テンポによって敵を出し抜くというやり方に共感する。だからこそウェールズやフランスを応援するわけだが、後者は何というかグダグダのまま、しかし決勝では底力を発揮してみせたというにすぎず、評価は保留とせざるをえない。前者にも、「セクシーさ」がやや足りないという意味でやはり不満を覚えた。

 プレーそのもの、ゲームづくりそのものによって驚かせてくれるチームがなかったといってもよい。勝敗における番狂わせでは驚くこともありましたけれどね、結局のところ、前回大会におけるロス・プーマス――いわば〈新しい懐かしさ〉でわれわれに感銘を与えた素晴らしいチームだった――のようなチームが出現しなかったということになる。

 とりあえずの感想なので、後からの修正があるかもしれません。

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2011年10月15日 (土)

準決勝 ウェールズ 対 フランス/オーストラリア 対 ニュージーランド

 ウェールズ 対 フランス 8-9(3-9) トライ数 1-0

 一番楽しみにしていた試合だったが、終わってみれば最高に莫迦々々しいゲームとなってしまった。ベッカムといい、ウォーバトン(主将なのに!)といい、「イギリス人」はバカぢゃないのか? クレールが何ともなかったのは幸いだが、どうせならフランス XV も激昂して 12 人対 13 人とかの試合になれば面白かったのに。近年のレ・ブルーは規律が行き届きすぎて少々物足りない。

 ウェールズは 14 人でフランスをトライ零に抑えたという意味では確かによく頑張ったし、やはり防御は堅いといえばいえるかもしれないけれど、実際はフランスが無理にトライを狙わなかっただけの話で、彼我のプレースキッカーの調子からしても、レ・ブルーの側は敗北はほとんど考えていなかったろう(ちなみに公式スタッツに拠ればタックル数はフランス 126 ・ウェールズ 56 、ということはつまりフランスは積極的に攻めなかったということになる)。

 もっとも、ひとり足りないからといって負けが必定というわけでもない。ジャパンと、オールブラックス XIV やフランス XIV、あるいはスコットランド XIV との対戦を想像してみればよい。ウェールズはもっと上手くやれたはずだが、その意味では、ウォーバトンの退場以上に、PR の A・ジョーンズの負傷交代が痛かったと思う。ジェンキンス、リース(負傷で選ばれていない)、ジョーンズというファーストチョイスの一列は、スクラムワークでもフィールドプレーでも一流と思うが、この試合では結局 1 番のジェンキンスしか残っておらず、結果としてスクラムは劣勢、7 人でしのいでバックス勝負(数の上では同じとなる)にもち込むこともかなわなかった(スクラムの大半は 12 番ロバーツが SH 側のフランカーとして参加)。まあ一時間を 7 人で耐えるというのは、いずれ体力的に厳しかったろうが。

 SH フィリップスの存在は、トライを奪ったからというだけではなく、こういう状況では頼もしかったが、「九人目(というか八人目というべきか)の FW」として十分に活かせたかというと、疑問が湧く。
 終了直前、ロスタイムの攻撃でも、ゴールラインの手前までピック&ドライブで進むべきだったのに、中途半端な位置で展開したものだから上手くゆかず、ノッコンとなってしまった。

 準決勝第二試合でニュージーランドが勝てば、漫画みたいな決勝戦となるが(そして漫画のロジックではフランスが優勝するのだが)、さてどうなるのだろう?

(何だか忙しくてようやくビデオを見ることができた。これから(hopefully)その第二試合を観戦する。それまではむろん試合結果のニュースは遮断するのである。)

             *

 オーストラリア 対 ニュージーランド 6-20(6-14) トライ数 0-1

ラグビーといっても色々あるのだなと、準決勝の二試合を見て改めて思いました。戦い方もそうだし、技術・戦術の水準においても。ワラビーズが健闘した前半は、今大会最高の(半)マッチといえるだろう。双方に綺麗なラインブレークがあるなど見所が多く、また得点でも競っていたため、非常に楽しむことができた。

 オールブラックスの充実ぶりが目立つセミファイナルだったが、さて、奇しくも第一回大会と同じ顔合わせとなった決勝(ならびに三位決定戦)はどうなるのだろう。勝敗をある意味で超越しうるという意味で三決が(だからそういう意味で)面白くなる可能性はある。準決勝に悔いが残るであろうウェールズがベストメンバーでないことは惜しまれるが、シェーン・ウィリアムズ最後の大会ということもあるし、「セクシー」路線で行って欲しいと切に願う。

 ファイナルは順当に行くなら開催国の勝利だろうけれど、何をやってくるか読めない、あるいはむしろ、そう思わせる術に長けたチームが優勝する可能性もないではない。
 とはいえ、フランスが勝つか、いずれにせよ僅差の勝負にもち込むとすれば、2007 年のような戦い方、ディフェンスで耐えに耐えるというゲームしか思い浮かばない。あの試合では、ジョジオンのトライで逆転したわけだが、その後、僅か 2 点のリードを確か 20 分くらい守り切ったのだった。オールブラックス相手にこういうことの出来るチームは限られている。今回のレ・ブルーはどうだろう?

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2011年10月 8日 (土)

準々決勝 アイルランド 対 ウェールズ/イングランド 対 フランス/ニュージーランド 対 アルゼンチン 

 アイルランド 対 ウェールズ 10-22(3-10) トライ数 1-3

 個人的には今までのところ最も痺れる試合となった。実力の拮抗した同士の対戦だったけれども、安全第一で PG やDG を狙うというゲームでなかったのがまずはよかったと思う。両チームの持ち味とされる特徴がそれぞれに発揮されることになったからだ。対ワラビーズ戦では 3 点の積み重ねによる辛勝もよしとしたはずのアイルランドも、今日のマッチでは積極的にトライを狙ったように見えた。しかしそれはもしかすると、開始直後のウェールズのトライ(いわゆるノーホイッスル・トライ)が、そのような方向での展開を決定づけたのかもしれない。試合最初の得点がトライであったというのは、その意味で見逃せないポイントだろう。トライこそラグビーの醍醐味だとはいわないけれど。
 もっとも、たまたまプレーが途切れることなくトライまでもって行けたからそうなったという可能性は(双方に)あるだろう。ウェールズが最初に PG を選択していればどのような展開となっただろうか。

 とにかく、違う方法でそれぞれにトライを狙った結果としては、ウェールズの 3 本に対し、アイルランドが 1 本、すなわち前者の完勝である。ただしゲームの内容に即していえば圧勝や快勝とはいえない。ブレークダウンやラインアウトなど、明らかにアイルランドが優勢な部分もあったし、敵陣 22 メートルライン内にいた時間を見ればアイルランド 15 分に対しウェールズは 6 分半と、総じてアイルランドの方がより多く攻めていたのである。実際、アイルランドのピック&ドライブは圧倒的で、ウェールズのそれとは、個々のプレーヤーの突っ込むスピードや力強さの点で、かなりの差があった。第三列ばかりではなく、全員の充実ぶりがうかがえる出来だったと思う。
 それだけに、このゲームで第一に賞賛さるべきは、ウェールズのディフェンスということになる。もちろん反則が皆無というわけではなかったが、アイルランドが PG をほとんど選択しなかった点の評価は、意見の別れるところだろう。ウェールズの防禦は堅いが(対南ア戦のように)
そのうち綻びが出るとの目算はあったかもしれない。実際、ウェールズ側のタックル・ミスは1割以下と精度こそ高かったものの、ほとんどつねに押し込まれていたし、ラックでは、より多くの人数を割かなくてはいけなかったため、応援する者としては気が気ではなかった。今大会でこれほど胸が締め付けられたことはない。

 他に気づいた点。両チームのトライがいずれもフィールドの端だった(J・デイヴィスのはやや内寄りだったが)のは、ミッドフィールドのディフェンスが双方ともに堅かったことの表れだろう。アイルランドが結局一本しかトライを奪えなかったのは、プレーヤーの力とは別次元で、無策というか、工夫が少なすぎたせいではないか。アイルランドのバックスは個々にはそれぞれ素晴らしい働きをしたものの、いわゆるライン攻撃をあまり仕掛けなかったために、防禦する側からすれば的を絞りやすかったということになると思う。反対にウェールズの攻撃は、ショートサイドをしつこく攻めたり、また内側ではロバーツを再三突っ込ませたりとバラエティに富んでいた。医学部学生でもある(あった?)ロバーツ、JPR の後を追うかのようなその経歴にも感心するが、ギャットランドがこの大型プレーヤーをバックスリーからセンターにコンバートしたのは、いわばジョナ・ロムーをミッドフィールドで起用するようなものだろう。現代のディフェンス・システムではそう簡単にラインを破れるわけではないが、少しでも薄くなれば突破されるという意味で、防御側のケア意識が中に向くといった効果は少なくとも見込める。
 またハーフペニーは、キックを受けてからのカウンターアタックは不発だったものの、ハイパントの処理やタックルなど、防禦の点では完璧だった。50m 級のプレースキックはともかくとして、われわれは有賀選手にこうしたプレーヤーになって欲しいと願ったものだが、非我の違いにはいろいろと考えさせられた。

 ジャパンは敗退したが、ウェールズがベスト 4 に進むとは!これほど喜ばしいことはない。運はもちろんあった。アイルランドの戦法はワラビーズに通用したが、この準々決勝の相手がワラビーズなら、ウェールズが勝てたかどうかわからないからだ。しかし、フロントローと 4・9・11 番以外は若いメンバーばかりで、試合ごとに力が上がっているのは間違いない。

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 イングランド 対 フランス 12-19(0-16) トライ数 2-2

 イングランドが展開プレー、フランスがハイパント攻撃という、双方がともに通常のイメージとは逆の入り方をした試合。必勝を期した対戦でなぜイングランドがそのような戦略を採ったのか、やや理解に苦しむところもあるけれども、フランスが真正面からは応じず、意気込み(PG を一本も狙わぬという)がいわば斜めにすかされたことで、結局中途半端な戦い方となってしまったように見えた。

 同じような高速展開といっても、フランスとイングランドとでは差があった。フランスの方はプレーヤーの動きとボールの動き(両者の合わさったものがプレー全体の運動と呼ばれるものだ)が非常に滑らかに連動していたのに対し、イングランドの展開には何処か無理をしているところがあって、あまり効果が得られなかった。習熟度も関係しているのだろうけれど、スペースの使い方がまずいと思われた。たとえばパスを受けるところで複数の選手が重なってしまっている場面がしばしば見られたが、それはどちらかのプレーヤーがスペースを殺してしまっているということであって、要するに活用できていないわけである。ウェールズがショートサイドを執拗に攻略するのと比較してみればそのことは容易に理解されるだろう。
 また、攻撃のスピードを誇るようなチームではもともとなかったが、フランス DF の出足のよさに、その速度がいっそう殺されているようにも見えた。
 ウィルコがどうこうということではなく、トライを積極的に狙うラグビーを志すならば、そのような方向でチームをきちんと鍛えた方がよいだろう。トライへの意志は明らかであって、それを抑圧する必要など少しもないのだから(だって、たかがスポーツなわけだし、ねえ)。

 というわけで、準決勝第一の組合せは、ウェールズ対フランスという、(個人的には)夢のような対戦となった。ノックアウト・ステージのフランスの戦い方には近年、どこか詐術めいたところがあり、それはちょび髭を蓄えたことでまさに絵に描いたような詐欺師然となったリエヴルモンの風貌が示すとおりだが、それがウェールズに通用するかどうか、非常に楽しみである。いずれにせよ好試合となるだろう。

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 ニュージーランド 対 アルゼンチン 33-10(12-7) トライ数 2-1

 ともに一本目のゲームメーカーを欠いた対戦。その分のハンディキャップは、得点方法が限定されてしまったという意味でアルゼンチンの方がより大きかったと思うが、とにかく NZ が順当に勝利した。

 オールブラックスを 2 トライに抑えた点ではプーマスは健闘したといえるだろう。実際、前半のディフェンスはタックルにせよカバーディフェンスにせよまさしく感動的だったし、先に奪ったトライには思わず涙腺が緩みもした(トライ自体がまた実に素晴らしかった)。とはいえ、一方的に攻められるなかで犯してしまった 10 の反則のうち 7 回までも PG を決められてしまったということは、黒い人たちが単に無理を避けたというだけのことで、ロス・プーマスの勝ち味は薄かったといわざるをえない。
 無理矢理というのは、たとえば
ワールドカップでいえば、前回の準々決勝対フランス戦において、意地を張るかのように、過度に時間をかけた末にようやくあげた二本目(だったかな)のトライのようなプレーを指す。今日は最後まで冷静さを失わなかった。

 敗れはしたものの(相手が悪かった!)プーマスのフィフティーンはみな、ふつうに上手いよね、ラグビーが。ボールをつなぐ技術という点にかんしては、スコットランドはもちろんのこと、アイルランドなどより上ではないだろうか。
 後半はさすがに疲れてしまい、タックルも相当甘くなったが、スコットランドやアイルランド、ウェールズという、ティア1の第二グループとは十分に伍してゆけるチームだったと思う。

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2011年10月 2日 (日)

ウェールズ 対 フィジー プール D

 ウェールズ 対 フィジー 66-0(31-0) トライ数 9-0

 試合前からウェールズのノックアウト・ステージ進出がほぼ確定しており、今日の興味の焦点は How much are they going to play rugby? ということに尽きる。この場合の to play rugby とはもちろん、競技としてのラグビーをするということではなく、パス・プレーをするという意味になる。
 ウェールズのゲームがそうなるだろうことは想像できたが(負傷も避けなくてはいけないわけだし)、わたくしの個人的関心は、いわゆるフィジアン・マジックの復活とまではいかなくとも、少なくともフィジーが対南ア戦や対サモア戦のようなクラッシュ一辺倒の戦い方ではなく、奔放なパス・プレーを復活させることができるかという点にあった。つまりウェールズの「プレー」ぶりに触発されて、抑圧したはずの欲望を解き放つのではないかと期待しているのである。降雨などこの際関係ない。PLAY it again, Sam! である(ああ、でもこの台詞をこういう文脈で使うと、PC 的にまずいかもしれない)。
 前半が終わった時点でウェールズが 4 トライを奪って 31-0。やる気どころか、もしかするとやる意味さえ見い出せていないのかもしれぬフィジアンをウェールズが無慈悲に――細かいミスも少なくはないが――攻め立てた。この調子で試合が終わってしまうと、ずっと瀕死状態にあったひとつのスタイルが(とりあえずは)死に絶えるという意味で、世界ラグビーの大きな損失が最終的に計上されてしまうことにもなりかねない。フィジアン・スタイルの壊滅とは、日本のラグビー――横井章氏のブログやまた『日本ラグビー 世界への始動』(日本ラグビー狂会編著、双葉社、2009)所収の同氏インタビューなど参照――の長期低迷に匹敵するくらいの出来事なのであって、憂慮する人も決して少なくないと思う。
 1999年大会だったか、フィジー相手に苦しんだフランスが FW 戦を挑んで彼らのスタイルを抑圧し、何とか勝利するということがあった。前回大会でもウェールズが同様にスクラムでねじ伏せようとしたものの力足らずで跳ね返された試合はまだ記憶に新しいと思うが、今回のレッドドラゴンは、その時より力がずっと上だし、今日は勝敗に拘る必要もないので、抑圧的とはなるまいとわたくしは踏んでいる。

 話を今大会に限定すると、フィジーのゲームがまったくつまらないのは、パス・プレーがほとんどないという以前に、何をするにもテンポが一様だからである。たとえばウェールズなら、今日の前半、ショートサイドを攻めたロバーツのトライがそうであるように、パスの長さやタイミングを変えることでプレーを変調させることができるだろう。それはつまりあれほどの狭いスペースを実質的に拡張できるということにほかならない。超ロングパスや、フィールドの端から端までのキックパスも同じことで、詰まってしまったところに突如、物理的・地理的に隔絶したはずのスペースがつながってしまう点が素晴らしいわけである。ガンガン身体を当ててゆくのも悪くはないけれど、そればかりでは退屈してしまう。だから、

 ……フィジー不発。ガッカリです。

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2011年10月 1日 (土)

フランス 対 トンガ プール A /イングランド 対 スコットランド プール B

 フランス 対 トンガ 14-19(6-13) トライ数 1-1

 トンガが素晴らしいゲームをした。ブレークダウンへの素早い働きかけ、スクラムでの頑張り、ラインディフェンスの鋭い出足。実に感動的だった。プレーヤーのフィジカリティあってこそだとは思うが、特に奇を衒った攻撃を行なうわけではないものの、縦への突進と横への展開の組み合わせが効果的で、フランスにディフェンスの的を絞らせず、美しいラインブレークを何度も繰り返す。綺麗に突破したあとのコース取りがまずく、トライをふたつみっつ奪い損なったのが惜しまれるけれど、ともかく完勝である。

 グループ・ステージで初めて2敗を喫したフランスは依然本調子の出ぬままである。明日のスポーツ紙一面には「苦い教訓(ルソン・ザメール)」とか何とかいう大見出しが躍ることだろう(この見出し、以前に『レキップ』で実際に用いられたことがあります、シックス・ネーションズでスコットランドに負けたとき)。マルク・リエヴルモンの意図ははっきりしないままだが(あるいはむしろ意図を読ませぬようにしているのかもしれないけれど)、ひとつ確実にいえるのは、FW 戦で劣勢のときにどうするかという「プラン B」を用意しておかないと、前回の二の舞になるということだ。
 展開プレーが(日本やカナダ相手の試合はさて措き)さして効果的でないのは、どうもラインに並ぶプレーヤーが外に外に流れて、ウィングのスペースを潰してしまっているからではないかと思う。メダールやクレールは見たところ好調そうだが、やはりスペースがなければどうにもならないだろう。本日行われたイングランド対スコットランドのゲームでは、後半の後半、スコットランドのカウンターアタック局面で、FB パターソンが、自分の右側にいるプレーヤーを活かすためディフェンス二人を引き付けようとして、ぎりぎりまでパスせずにいたのだが、ランのコースとしては外に流れてしまい、スペースを消すことになったし、結果として一人しか引き付けられなかった。外のウィングはもう一人(たぶんアーミテージ)に捕まえられ、トライのチャンスは潰えたのだが、あの場面では、むしろ早めにパスしてサポートに回るという手もあったのではないだろうか。

 この対戦だとわたくしはニュートラルか、どちらかといえばトンガに肩入れするので、試合結果には満足している。今日のような戦いができるのなら、フランスの代わりにトンガが準々決勝に進むのもよかったかもしれない。ただ、トンガはたとえばスプリングボクスに勝つことはあるかもしれないけれど、オールブラックスには絶対に勝てないよね、構造的にいって。フィジーやサモアもそう。だから結局のところは、フランスが進出した方が大会の、ひいては世界の多様性という観点からして好ましいと思う。
 そして、わたくしの個人的好みとしては、イングランドには何とか勝って、しかるのちにウェールズないしアイルランド相手に華々しく散って欲しい。今回はシェーン・ウィリアムズやブライアン・オドリスコル最後のワールドカップなのだから、それに次回のウェールズやアイルランドが準決勝まで進める保証もないので、うん、まあそういうことです。

          *

 イングランド 対 スコットランド 16-12(3-9) トライ数 1-0

 この試合は、スコットランド・アルゼンチン戦のように「塩っぱい」ゲームとはならなかった。ロス・プーマスと同様にイングランドもロースコア戦略にとりあえず付き合ったわけだが、アルゼンチンが知らぬうちにスコットランドの術中に嵌ったといえるのに対し、イングランドの方はむしろ、トライへの欲望を敢えて抑えつつ勝機を窺うという戦い方だったろうからである。

 一時は 9 点差(8 点差以上で負けると敗退が決まる)をつけられたものの、後半に 3 点差まで追い上げたのち、残り 5 分となり、スコットランドがトライを狙わざるを得なくなってから――ということは試合の焦点が PG・DG からトライへと一挙に転換してから――逆転のトライを決める。この通りの未来予想図を描いていたわけでもないだろうが、こうした展開にはそもそも慣れているわけだし、実質的にイングランドがコントロールしたといえるゲームだった。あるいは、それほどの力の差があったということだ。

 ウィルキンソンからフラッドへの交代は(ウィルコが疲れたとか怪我したとかでなければ)、「これで(実質的に)勝った」という監督からのメッセージ以上の意味はないはずで、というのは、トライに結実したのは、フラッドのパスがよかったからではなく(最後の飛ばしパスは素晴らしかったが)、スコットランドがトライを奪うべく前がかりとなっていたことが大きいからである。

 さて、準々決勝のイングランド対フランスはどうなるのだろう。今日の両チームの状態なら、イングランドが余力を残しつつ勝利するだろう。まだ目の覚めていない――というか実はもう目覚めている?――フランスはイングランドからトライがとれるかどうかさえ不明である。ブレークダウンで優位に立てない場合はそれをなるべく避けるようゲーム・プランを変更しなければならないと思うが、試合の最中にそのようなことができるだろうか?

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2011年9月25日 (日)

アルゼンチン 対 スコットランド プール B /フィジー 対 サモア プール D

 フィジー 対 サモア 7-27(0-12) トライ数 1-2

 フィジー代表のラグビーはまったく「普通」になってしまった。モールやスクラムに難があるという点ではずっと同じなのだが、戦い方の点でも、今や他とほとんど変わりのないチームである。対南ア戦同様にピック&ゴー主体の攻撃。まあザウザウ、デラサウのような怪物にトライをとらせるというあり方も別段フィジー的とはいえないわけで、「フィジアン・マジック」はすでに神話的な――つまり、「武士道」がそうであるように、失われてしまったからこそ語ることのできる――ものにすぎないのだろう。

 サモアはフィジーよりパス・プレー主体で、それは対ウェールズ戦と同じだが、フィジーより組織プレーがよく整備されていたために、より多く得点することができた。このラグビーは南アフリカにはどの程度まで通用するのだろうか。

 それにしても今日は両チームともイージーなハンドリング・エラーが多く、興を殺がれた。

         *

 アルゼンチン 対 スコットランド 13-12(3-6) トライ数 1-0

 どちらも決め手を欠く、いわゆる「塩っぱい」ゲームだったが、残り 10 分ほどになったところで、交代したばかりのアモロジーノのトライで逆転したロス・プーマスが、辛くも逃げ切った。スコットランドは次の対イングランド戦に負けるとグループステージでの敗退が決まる。

 前回大会の対戦(準々決勝)ではスコットランドがどれくらい抵抗できるかが焦点だったが、今回はアルゼンチンから「大駒」(ロンゴ、コルレト、エルナンデスら)が引退や負傷のため抜けており、両チームの実力はほぼ同等と考えられた。イングランドにすでに負けているアルゼンチンは後がなかったが、ブレークダウンとスクラムにおいていくらか優位に立っていた以外は互角の戦いで、勝敗がどうなるか最後までわからなかった。
 スコットランドが三点を細かく重ねてゆく戦略を採ったのに対し、アルゼンチンの戦略は――似たようなものだったとは思うが――はっきりとしなかった。スコットランドのディフェンスがよく頑張り、自陣 22 メートル以内への侵入、ひいてはゴール近くからの PG や DG を簡単には許さなかったからだ(エルナンデスがいれば話はまったく別だったろうけれど)。

 ふつうに考えれば、グループ B の勝ち抜けはイングランドとアルゼンチンでほぼ決まりだろう。スコットランドの実に渋い渋い戦略に対しては、共感を覚えることはないままにしかし、公平な立場から「これもまたラグビーである」といわざるをえないけれど、何か人を瞠目させるような瞬間がこのチームに訪れるとはとても思えない。ここから先のステージでは戦力的にだいぶ苦しいとはいえ、アルゼンチンにはそれが感じられる。たとえば思わず出てしまう足技。「サッカーではないのだから」と軽く嫌味をいうことは可能だが、しかしルールはこうしたプレーを禁じてはいない。筋肉に覆われた身体をハードにぶつけて無理に突破を図るスコットランド(やイングランド)のゲームは見ていて息苦しさを感じてしまうことの方が多いけれども、それに比べれば、相対的なものだとしても、身のしなやかさによって相手を躱そうという姿勢の垣間見えるロス・プーマスの方がまだしも自由であると思う。
 この自由は、フランスのプレーにも通ずるものだが、ボールが例えばラックやスクラムから思いがけぬ仕方でこぼれ出たとき、それを両の手でしっかり握ってからダイビングパスというより、咄嗟に片手ではたく、あるいは足で蹴ることによって味方に送る方が、ずっと自然ではないだろうか。アルゼンチンのラグビーが、ある意味では先祖返りの様相を呈しながらも、まさにそのことによって一種の新しさを感じさせるゆえんだ。このまま行けば、クォーターファイナルで NZ に 40-10 くらいの大差で敗れるだろうが、それでもやはりわたくしはプーマスを応援したい。
(オールブラックスのラグビーもそういう点ではきわめて自由なものなのだが、プレーひとつひとつがあまりに精密で、サイボーグがやっているような印象を抱いてしまうことがある。彼らは苦境に陥ったときだけ、いわば人間的になるのである。)

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2011年9月24日 (土)

ニュージーランド 対 フランス グループ A

 ニッフォンをとりあえず見限ってしまうと、ワールドカップというのは純粋に祭り、祝祭となって、それはそれで結構なことだと思う。で、そうすると、ついこの間トライネーションズがあったばかりだから、決勝でニュージーランド対オーストラリア(もしくは南アフリカ)の試合など見たいとは思わない。実際、アイルランドがワラビーズに勝ったことで、そうした組合せの実現可能性は低くなった。わたくしは「北対南」という構図にはこだわらないが、それはそのような考え方ではアルゼンチンや日本の立場をうまく説明できないからであり、また実のところ、この構造こそエスタブリッシュメントにほかならないからである。シックス・ネーションズ対トライネーションズも「南北」の手合わせといえぬこともないが、トライネーションズだけの決勝よりはいい。

 今日はグループステージ最大の試合といってよいだろうオールブラックス対フランス戦。
 フランスの調子はパッとしないが、それはまあ過去の大会でも見られたことだ。それにグループ戦では NZ に手の内をすべて見せるつもりはないだろう。本番はノックアウトステージなのだから。
 また(アイルランド対オーストラリア戦の結果を承けた)組合せからいっても、グループ A 二位通過の方が決勝進出には有利な塩梅となってきたということもある。それはしかし、意図的に負けるということではない。

 レ・ブルーのメンバーは次の通り。

    プクス スザルゼウスキー デュカルコン
          ナレ パペ
       デュソトワール ボネール
          ピカモール

          ヤシュヴィリ
            パラ

   メダール メルモーズ ルージュリー クレール
           トライユ

    (控え セルヴァ(ット)、バルセラ、ピエール、アリノルドキ、トラン=デュック、エステバネーズ、エマンス)

 このメンバーにNZ のプレスは「二本目を出しやがって」と憤慨したりしているそうだが、そうですねえ、15 人ではなく、22 人で戦うと思えば、先発メンバーだけを云々しても仕方ないし、実のところ、今回のフランスで「鉄板」といえるのはデュソトワールとクレールくらいのものだろう(一列は現代では途中交代が前提だから、一本目か二本目かというのはあまり意味がないと思う)。自ら仕掛けることの多いトラン=デュックではなく、パラをもってきたことを「ダブル・ハーフ」戦術と解するなら、ラックをできるだけ避けて展開プレー中心にするか、ラックを中心にするかのいずれかということになるだろうけれど、フランスのスクラムハーフには、専任タイプ(ヤシュヴィリやミニョニ)ばかりでなく、スタンドオフ兼任タイプもいる点を忘れてはならない。ミシャラク、エリサルドがそうだった。
 ……とか何とか。

            *

 ニュージーランド 対 フランス 37-17(19-3) トライ数 5-2

 これもある意味ではひどいゲームといえるかもしれない。開始から10分ほどまではフランスが圧倒的に攻めた。トライなり DG なりを決める機会も数度あったはずだが、無得点のまま NZ の逆襲が始まってしまい、20 分くらいまでに 3 トライ。後半は、50 分過ぎにメルモーズのインターセプトからのトライはあったものの、残り 10 分くらいの時間帯に攻め込んだ(トライ)ほかは見せ場もなく、印象としては完敗だった。一時は 60 点取られるのではとさえ感じられたが、何とか落ち着かせたというところだろうか。

 モチベーションの上がらぬ試合ではこんなものなのだろうけど、ファーストタックルが甘く、敵一人に対して二人でも止められない、ラインディフェンスにすぐ穴ができてしまうなど、防禦はさんざんな出来だった。オールブラックスのメンバーはみな前がよく見えていて、ほんの少しのギャップも見逃すことはなかったし、また目立ったギャップや数的優位がなくとも、FW が並んだ辺りに積極的に仕掛けるなどして、割と簡単にブレークしていた。
 よく見えているという意味では、オールブラックスはフランスの展開プレーをほとんど見切ってもいた。事故のような形で突然に混乱が生じでもしないと、ラインブレークは難しかったと思う。
 スクラムは若干オールブラックスが優位に立っていた。マコウとトムソンが入れ替わっていることがあったけれども、あれはどういう意味があったのだろうか。

 ひどいゲームではあったが、フランスのこすさ、ちょっとした機転、ハーフバックスのキックが連続でチャージされたり(前半)、コンラッド・スミスに両足を抱えられたアリノルドキが倒れず立ったまま押し下げられたり、といった場面でわたくしは声を上げて笑ってしまった。まあ何というか、フランスは違うロジックで動いてるよねと、世界中が―― 99 年や 07 年の対戦を少しばかり思い出しながら――感じたことだろう。
 実際、攻守ともにここまで上手く運んでしまうと、わたくしがもし NZ 人だったら逆に不安を感じてしまうかもしれない。レ・ブルーは、控え選手は全員出場させたものの、必勝のスペシャル・プレーなどは見せずに済ませたともいえるわけで、次の対戦(があるとしての話だが
)は全く違った様相を呈すことになるだろう。

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